2087年 旅立ち

第32話 2087年9月27日 全米連邦 チリ州 サンティアゴ市 プラザコースト バンケット

プラザコーストの廊下を着の身着のまま、駆け抜けるロングカーリーの女性


バンケットに飛び込む、ロングカーリーの乱れた米上

「はあ、はあ、ちょっと、旦那見かけなかった、」只鬼の形相で

花彩、不意にエスプレッソカップを降ろしては

「いえいえ、見てませんよ、」

米上、直立不動のまま号泣

「あーーん、出てった、、、」

尚も淡々とエスプレッソカップを口に運ぶ、渕上と島上

花彩、得心しては

「ああ、朝食前にコンビニですかね、堂上さんファミリーマートcoのジェラート好きですもんね、ライム風味飽きないですもんね」

渕上、表情も変えず

「ここはちょいと、様子が違いますな」

米上、尚も号泣

「これ、お暇届けと、離縁状、うううー、せめてお手紙位書きなさいよー」

島上、従容と

「お前等の話は長いよ、堂上がそんな面倒な事書けるか いいか、こう言うのはいい女出来たから出て行ったが相場だ、もう諦めな栄子」

米上、目を丸くし

「ふえ?」

花彩、頷いては

「そうですね心変わりするなら、離縁するしかないですもんね、潔いです堂上さん、でも米上さんならまだまだ良縁有りますよ」

渕上、くすっと

「やっとこさ結婚1周年で、堂上さんからつげ櫛貰って良かったですな そうですな栄子ちゃん、験が悪いなら櫛まつりに納めましょうか」

バンケット中の客が見守る中、所構わずのたうち回る米上

米上、止めどなく涙が溢れる

「もう言いたい放題、同情してよ、ねえーーー、もう、これ本当に離縁状なの、涙で読めないわよ、うう」離縁状を只管扇いでは

花彩、席から立ち上がり、米上から離縁状を取り上げる

「それでは、拝見します 成る程、日本の裁判所の参考文献で読みましたがこれは本物の離縁状です、文中に出て来る方々のサインを頂いた上で、この離縁状を半年以内に日本の簡易裁判所に提出しないと最低禁固3年です これはあくまで相場ですので、委託提出者への無理解と判断されますと禁固刑増えますよ」

米上、目を見張り

「ちょっと待ってよ、何で半年以内、そしてその禁固3年って、しかも増えるの、それもそうだけど、何で離縁なの、あーーーん」尚も号泣

花彩、諭す様に

「米上さん 日本政府発行の白紙証明証には、ありとあらゆる個人の尊厳が守られます これも裁判が絶えませんので簡易臨時立法が自然と定着してしまいましたね 米上さん、京都の学校出ているなら社会で学んでいますよね」

米上、泣き喚く

「あーーーん、そんなの私に関係ないでしょう」

花彩、ふわりと

「ええ、そんな方々が引きもしない為個人の尊厳無視は禁固刑です しかも、これは内容によっては禁固刑の年数がどんどん増えますので、くれぐれも個人の都合を押し付けないで下さいね そうですよ、網走軽犯罪刑務所の施設、巨大過ぎてかなり寒いそうですよ、それは避けましょう米上さん」

島上、不意に

「そう言えば、日本に弁護士ってまだいるのか」

渕上、事も無げに 

「安っい離婚訴訟に精出す弁護士なんて、あらしまへんで 花彩さんよろしいですか、こんな感情的な異議申し立ての弁護代理人になったら、長くなって日本から帰って来れませんよって、私が絶対許しません」

花彩、こまっては

「渕上さん、ご慧眼です」

米上、身悶えては

「もーーー、それなら旦那見つけて、取り下げさせるわよ」脱兎の如く駆け抜けようとするも

渕上、米上の腕を掴む

「栄子ちゃん、ボンクラが何も言わんと出て行ったなら、ここらにはいないですよ」諭す様に

米上、渕上の手を振りほどき

「もーーそれでも行くの」バンケット内を駆けては後にする


花彩、エスプレッソカップを持ち上げ

「ああ、行っちゃいましたよ米上さん 美味しい朝のエスプレッソを抜くんなんて勿体ないですね」

島上、呆れ果てては

「花彩、付き合ってやれ 泣きながら探してたら、何しでかす分からないぞ」

渕上、嘆息

「裸足のままパンプスも履かんと、外に出れますか 今頃、お部屋で泣き暮れてますよって 花彩さん、エスプレッソお替わりしてからでもよろしいです」

花彩、エスプレッソカップを下ろしては

「ああ、でも、美久里さんの送り迎えどうしましょう」

渕上、思いも深く

「さっきまで存分に話し込みましたがな、これ以上はブットがトラウマになりますさかい、もうええん違います」

花彩、思いを巡らし

「確かに、それもそうですね それでは島上さん渕上さん、エスプレッソのお替わりお持ちしましますね」席を立ち、皆のエスプレッソカップをトレーに集め回る


二人きりになる島上と渕上

島上、朴訥に

「栄子、ネーデルラント戦でやっと進展しては、丈流捕まえたのに報われんな 恋しすぎるってそんなものか、ぱっと散るものなのか」

渕上、嘆息

「夜明け間近の廊下の声聞こえましたで、私の部屋の前で最後の挨拶なんて、くどいですな」

島上、感慨ひとしおに

「最後な、あいつの験が悪いなら、察してくれるだろ」

渕上、只溜息

「突き詰めると験ですな バンケット入口での保科さんのお話曰く、街中の防犯カメラから漏れて二人の武士さんそこそこの噂ですとか 何せ堂上さん宮武さん二人掛かりで特大戦車が紙切れの様にボンとかですよって 礼節の戒めたる尾長鶏も無く暴れたとなると、これでは手負いの熊とばかりと堂上さんに恐れて近付かれもしませんな」

島上、憮然と

「堂上の禊終える迄、この件手伝わせなきゃ良かったな 米上も武士の妻なら感情に走るなよ」

渕上、従容と

「まあ、その言い分が通らないのが、栄子ちゃんですよって」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る