第25話 全米連邦 チリ州 サンティアゴ市 大通り 決闘

昨日までの観光客の喧騒とは裏腹に人の途絶えた、サンティアゴ市大通り

戒厳令のサイレンが未だ響き、市街はただM4AT大隊が爆発して尚も炎上中 只管旧大統領府州知事公舎に向う一行


チリ州警察のパトカーが漸く離れる

北浜、憮然と

「全く、長いな、全米連邦入植準備局とはツーカーじゃないのかよ」

美久里、満面の笑みで

「さすが北浜さんですね、仲間になってくれて助かりました」

北浜、頭をもたげ

「そう言えば、何してるんだ俺」

阿南、北浜の肩を抱き

「ここで考えたら負けだ、北浜、お前出世したくないのか」

渕上、胸を張り

「北浜さんの名前は、覚えましたで、もっと早くにお会いしとうございましたな」

北浜、必死に手を振り

「いやいや、渕上さんのお噂はかねがねでしたが、ここまで老獪に追い込むとは想像を絶します」

渕上、上機嫌にも

「老獪にもは余計ですが、良い方に受け取りましょうか」

米上、剥れては

「ちょっと、現在の全米担当は私達夫妻よ、飛ばしてどうするのよ」

北浜、困り果てては

「いや、ですから、お付き合いはこれからでしょう、それです、何れはワシントンの…」

堂上、遮るかの様に

「いる、」

爆煙から現れる武士、立ちはだかる宮武

「ちょっとお邪魔しますね 皆さんここでケリを付けません、さすがに頃合いですよね」指笛を吹くと、街の各所から集まり始まるコヨーテセキュリティーマシーン100体

阿南、じりりと

「ここに来て詰んだか」

宮武、事も無げに

「そう、間接部に新たにガード付けたから、人工筋肉の切断は難しいね、ねえ帰りなよ、今日中にチリ州から引き上げれば拿捕しないからさ」

美久里、切に

「宮武さん、その、ここを通して下さい」急に胸の鼓動が高鳴り、胸に手を当てる

渕上、微笑

「美久里さん、笑顔ですよ 殿方は困り顔にドン引きですよって」

宮武、不思議顔で

「どうしたの、急に運動したから、脇腹痛いとか、」宮武の顔面スレスレにレンガが一個が飛ぶ

米上、怒りも露わに

「何もいいたくないわ、宮武、次に美久里さんいじったら顔面よ 旦那言って上げて」

堂上、呆れ顔で

「宮武、兎に角第三帝国から抜けろ、寄合所がそんな所紹介する訳ないだろう」

渕上、悠然と

「ええですか宮武さん、第三帝国の困り事など、所詮は戯言、今直ぐ抜けなさい 師匠筋の加賀さんを立てんと結構ですよって」

堂上、被せる様に

「俺が寄合所に言ってやる、今回の仕事を降りろ、賞罰は無しだ」

宮武、不敵にも

「いや、寄合所の依頼は絶対ですよ、上家衆は全く別の動きだから、温くなりましたか」

堂上、歯噛みしては

「畿内の兼ね合いか、難しい事を言う」

渕上、制する様に

「堂上さん、呑まれたらあかんどすよ、それはそれですよって」

宮武、柄に手をかけ

「抜刀なら、この刃で分かりますよね、いい線行きますよ今日の村正は」

堂上、身構えては

「ああ、遠くからでも分かった、本気だな、でも抜けろ」

宮武、苦笑

「全く心に響かないな そうは言っても、とてつもないボーナス有りますからね、第三帝国と上家衆を天秤に掛けたら、間違いなく第三帝国を取りますよ」

花彩、首を傾げ

「第三帝国のとてつもないボーナス、ふむ、例えば日本人全ての生命の安全とかですか」

宮武、まなじりが下がる

「やや正解、自分が倒れて、堂上さん側に転んでも日本は救われますよ、だからどうしても堂上さんと手合せしないといけない 白黒付けましょう さあ堂上さん、手を抜いて頂いて自分を生かすか、堂上さんあなたがここから鬼となり斬りまくって第三帝国を跪かせるか、どちらかです」

美久里、嗚咽

「駄目、、」

阿南、ふらつく美久里を必死に押さえ抱きかかえる

「美久里さん、あなたと言う人は 堂上!」咆哮

堂上、吠える

「分かってる!だけど、大義の前では個人の思いも霞む」

渕上、呆れ顔で

「ここにも、ストライクえらいど阿呆ですか」

米上、不意に涙目

「私がもらい泣きそうよ、」

宮武、音階の付いた指笛を吹くと、コヨーテセキュリティーマシーンが一斉に散開

「どうせ、堂上さんで終りでは無いんでしょう、敢えて道を開けましょう こちらも八反さん、あと菜穂子さんは絶対来ないとして、溝端さんはいかれてるからどうしようもないけど、まだまだ先は有りますからね」

堂上、深く息を吸い、柄に手を掛ける 

「宮武その意気結構だ 決まったな、答えは一択だ」

宮武、凛と

「その答え待ってました」

美久里、只声を張る

「宮武さん、堂上さん、その、私は信じています、その刀できっと分かり合えます、より深くです、だから殺し合わないで、ご無事に戻って来て下さい、えーと、あ、あ、、もう、」ただ拳を握る

渕上、愛おしく美久里を抱きしめる

「美久里さん、大丈夫どす、そのとっておきは先に取っておきましょう」

堂上、尚も構える

「美久里さん、今は私事は無しです」

宮武、不敵にも

「大丈夫、俺は死なないよ」

阿南、怒号省みず

「お前等は、本当に阿呆だな、いい加減にしろよ、二人とも生きるんだよ、いいか絶対無事に帰って来い、」

米上、只堂上宮武見つめる

「えーと、美久里さんの事もあるし、どう応援してよいやら」


堂上宮武、同時に抜刀

「参る」

「行く」

堂上宮武互いに一閃、波紋が乗り、弾け飛んだ擦痕が街を刻んで行く


“ドーーン”いきなり鈍い音と爆煙爆風が市街に立ちこめる

爆煙に紛れ消える堂上宮武、聞こえるは刀の鎬の擦れ合う音


島上、周りを見渡し

「何だ一体、」

米上、目を凝らすも

「ちょっと、何処に行ったのよ」


中央広場の特設サーカーステントより、ピエロのジェスターズキャップを被った男が進み出る

その男、溝端、一人万雷の拍手の如く

「いやー、いいものを見せて頂いた、そこのお姉さんのメロドロマ、私も涙腺が脆くなったので、まるで子供のようなおねだりでも泣きそうでしたよ、この安っぽさが実に身沁みる」

美久里、劣化の如く怒り、

「言わせません、」素早く鞄からS&WM49エレクトロ取り出しては乱れ打つ

溝端、微動だにせず

「やれやれ、ピエロにお怒りとは、子供にも嫌われもたのだ、ならばもっと盛り上げましょう、どこまでも」指をパチンと鳴らすと、鈴なりに“ドーン”見る見る吹き飛ぶ市街の1階テナント


爆煙煙硝が中央広場に立ち込める


島上、皆の安否確認しては

「皆大丈夫か、これは威嚇だ、まだ仕掛けがあるかもしれん、先を急ぐぞ」

美久里、怒りも露わに

「同意します、ここは旧大統領府州知事公舎に一刻も早く向いましょう」

溝端、嬉々と

「どうしましたか、これでは興が乗りませんか この帽子姿では本気にもなりませんかね」ジェスターズキャップを脱ぎ捨てる「また、お会いしましょう」不意に瞬間転移、消え失せる

美久里、漸くS&WM49エレクトロを降ろす

「本当に消えた、」

渕上、淡々と

「溝端、ピエロのマジックと違って、本当に瞬間転移出来ますさかいな、まあ気張りましょうか」

米上、はっと

「でもこのデスマッチ、放っておけないでしょう、旦那置いて行けないわ、そうよこの先に、溝端と八反さんもいるんでしょう、絶対連れて行かないと」

花彩、不意に

「そんなに不安ですか、堂上さんの事、米上さんらしくないですよ」

米上、肩を落とす

「でも…気掛かりなのよ」

島上、米上の手を引き

「来い、宮武と溝端と八反が合流したら、勝てないぞ、」

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