第24話 全米連邦 チリ州 サンティアゴ市内 市街

けたたましいサイレンが、未だ市街中に響く

早朝からチリ州の戒厳令が敷かれ、外に出歩く者は皆無


素早く行動しては路地裏に隠れる一同

花彩、興奮隠せず

「おー見れば見るほどシャーマン戦車ですよ、初期型より更に丸いなんてキャラクター作ってますね、それに市街戦に対応してか砲塔もかなり短いです、しかもぐるんぐるん回っては死角も無し、今度カーネギー・インディペンデントのカタログ読み込みませんと」

島上、唾棄しては

「正確にはM4AT、自立型警邏戦車、金持ちの道楽に販路拡大してるオモチャだ 社長のダフも呆れたものをチリのラインに作らせやがる」

堂上、呆れ顔で

「何で、そんなものがここにあるんですか」

島上、ただ見据える

「知るか 戒厳令放送の通り、ここは反米レジスタンスのいつもの十八番なんだろう ふっつ、奴らのどこにそんな金あるんだよ」

阿南、思案顔で

「やはり、第三帝国の自作自演ですか」

渕上、呆れて果てては

「一昨日からの今日ですよって、少々鈍いのと違います、やっと誘いに乗りましたな」

阿南、強ばっては

「渕上さん、あなたの張りは強引だ」

島上、憮然と

「気にするな阿南、渕上は煽りの天才だよ」

渕上、毅然と

「やっと、始まったばかりですよって、気張りましょうか」


次々市街を流れるM4AT 規律よく市街に合流してくる戦車小隊群 プラザコーストで擱座した4台を除く26台の一個大隊が万遍なく展開 


路地から隠れ見ては窺う一同

阿南、じりりと

「この角張った運転、中身はセキュリティーマシーンだ、やはり揚陸隊呼ぶぞ」

北浜、目を見張る

「まさか本当に、太平洋保守艦隊待機させてるのかよ」

阿南、周りを見渡しながら

「万が一の為だったが、仕方あるまい、公衆電話どこだ」

島上、阿南を制しながら

「やめとけ、いや今は警邏しているだけだ ここで揚陸隊展開したら、大惨事になるだろうよ」

M4AT、漏らさじと音声認知 隠れ窺う一同に砲塔を向け認識センサーが点滅する


刮目する一同


花彩、凛と

「警邏でこれはないですよね」皆の背中を押し後退へ


M4AT戦車小隊連携しては、認識センサーが真っ赤になり、透かさず電磁主砲からセミオート発砲、勢いそのままビルの1階が吹き飛び横倒れになる


阿南、吠える

「冗談じゃない、きっちり認識してます、どんな性能なんだ」

島上、事も無げに

「吠えるな、こちらへの進撃が止まらん、兎に角隠れるんだよ」

北浜、通りを伺いながら

「途切れた隙に逃げよう、ここは立て直そうぜ」

花彩、只伺う

「いいえ、すでに連携組まれてますから、囲まれてすでに逃げ場は無いかもしれませんね」

美久里、凛と

「それでは、行く手を阻まれる前に、直接連隊をハッキングして、指令系統奪いましょう 堂上さん、M4AT1台の砲塔だけ斬り落として下さい」

堂上、さめざめと

「いや、実際見たらもろ戦車だし、装甲だってFRPじゃないんでしょう、流石に鉄の戦車相手はね、電磁主砲バンバン出てるし 本当、無理、駄目、危険」

米上、堂上を蹴りとばす

「いいから、行って来なさいよ どうせ、このキャタピラの道路を軋む音が集まって来てるの聞こえるんでしょう、格好付けて殿務めようなんて冗談じゃないわよ」

堂上、通りに放り出されては

「先々考えるとそれか、やれ、行くか、」


飛び出る堂上に、M4ATの認識センサーの点滅間隔が短くなる、ついに認識センサーが真っ赤、ロックオン

M4ATの回頭した電磁主砲が、堂上を寸でに翳め飛んで行き、立て看板が大炸裂

堂上、肝を座らせ

「ok、」

M4AT車体左90度回転、正面に向き直り続く電磁機関銃が迸る中 堂上、虎徹抜刀からの払い一閃、擦り抜ける 

M4AT回路寸断、暴走し無理に車体を回転してはゴトリと後方に電磁主砲を落とすと、電磁主砲部大爆裂

電柱にぎりぎり隠れ爆片を凌ぐ、堂上

「あぶねえ、」


島上、只目見張る

「おいおい、どんだけ蓄電池積んでるんだよ」

花彩、不意に溜息

「M4AT、お高いんですよね」

渕上、溜息

「お、はいりませんよって」

美久里、身を屈め進み出ては

「行きましょう」

阿南、目を見張る

「行きましょうって、美久里さん」

花彩、阿南の手を引き、前に進み出る

「ほら、阿南さん、人気同行コーディネーターさんの出番ですよ」


尚も暴走するM4AT、闇雲に電磁機関銃を発砲、電磁弾切れる事無く街並に穴が開き、惨憺たる状況

電磁弾を避け、M4ATの背面から飛び乗る美久里花彩阿南

堂上がスッパリ斬り落とした電磁主砲接合部から覗く内部構造、あちらこちらの電気系統がショートしては弾ける

阿南、只目を見張り

「くそ、人が入る隙間も無いのかよ、どこだよ本体」

花彩、高速視認、内部構造を頭に入れては再構築

「さすがに設計図は出回ってませんから、私も勘です ですが恐らくこれですかね、モニターとモジュールが一体なので、やはりこれです、阿南さん引き抜いて下さい」

阿南、花彩の指差すまま

「これか、おお、」重いモジュールを引き上げると配線そのままで、更に電気系統ショート、スパーク

阿南、咆哮、

「おお、おっし、」モジュールを装甲の上に叩き置く

花彩、目を見張るも

「ああでも起動キーが分からないですよ、どのケーブル接続し直そう、困りましたね」困り顔

美久里、凛と

「問題無いわ、」モジュールの音声プラグにiParentのマルチケーブルを差し込み、命令「ヘイソフィア、M4ATメンテナンスモード強制起動、カテゴリー1から5までのサブ認証コード入力(解除しました)」

M4AT、ピタリ止まるも、突如の自立回転が始まる

花彩、振り落とされまじと

「もう、最後のあがきですか」

阿南、必死にモジュールを抱える

「いつまで回転するんだ」

花彩、不意に

「阿南さん三半規管弱いんですか、絶対落とさないで下さいね」

阿南、吠える

「分かってる、」

美久里、M4ATのハンガーにしがみつきiParentの画面に食い入る

「花彩さん再起動させました、解除は任せたわ こちらは必死に自動防壁作ろうと応戦しているみたい ヘイソフィア、ボットから受信されるネットワークのポートを一通り閉めて(ポート1から100万まで閉じました、後は任意で切ります)」

花彩、得心しては

「それでは急ぎましょう、さて、プログラム音声入力、旧ネットワーク上の戦闘ログを全て美久里さんのiParentに回収した上で、M4ATのネットワークを新ネットワークへ移行、新ネットワーク名:サンティアゴの青い空、サンティアゴ市に展開する全てのM4ATのアクセス権限改正、128桁のパスワード自動設定、設定完了後、全てのM4ATの起動停止」

美久里、iParentのマルチ画面を見ては

「ログ来てるわ、パスワード設定もokよ」

阿南、目を見張る

「花彩さん、纏めてネットワーク切るつもりですか」

花彩、破顔

「それは、物騒ですからね」

美久里、まなじりが上がる

「いいえ、もっと凄い展開しましょう」

不意にピタリ止まるM4AT

阿南、唾棄しては

「ええ、自爆もです、放っておけるか」

花彩、プログラム音声入力へ

「そうですね、それではプログラム音声入力、全てのM4ATの起動停止命令、自爆設定開始、バッテリー臨界最大、外部スピーカーによる退避案内付きでカウントダウン10秒から開始、」

阿南、モジュールを電磁主砲接合部から内部にどんと放り込み

「ふん、10秒で逃げ切れるますか」

美久里、声を荒げ

「阿南さん、いいから」iParentのケーブルを自動巻き取りしては、皆の背を押す


ついにM4ATの攻撃ボットからパスワード突破、新ネットワークに侵入され、モニターの画面が【restart 60second】と表示されるも 時既に遅しカウントは、1秒、0秒


サンティアゴを巡回するM4AT大隊全機、突如大爆発


直上に迸る爆煙が、市街のあちらこちら辻から

集う一同

美久里、iParentに送られた戦闘ログをスクロールし終え、憮然と

「この、反米レジスタンスに見立てた偽装テロ、やはり第三帝国です 発砲除外者が鍵十字のマークになっています」

渕上、呆れ顔で

「やれやれ、魂胆見えましたな、ワトソン州知事 反米レジスタンスが大騒動起こしたと見るや、全米連邦から非常事態宣言を勝ち取って、チリ州を済し崩しに乗っ取るつもりですか」

美久里、じりりと

「私、焦りましたか、」

島上、促しては

「いや、ここまでの軍備、何れはだ」

堂上、不服気味に

「シオン福音国の一派もさ、当然、義体工場以外に倉庫とかも押さえてないのかよ、未だ乱雑な工業地帯を立ち入り検査してないなんて、まだまだだな」

米上、髪の毛をつい手で巻いては

「それ、大方内偵途中なんでしょう、これ広瀬さんに渡りつけて置くべきだったかな」

島上、吐き捨てては

「いや、広瀬は手広く仕事受けては腰が重いだけだ、この後に及んで何考えてやがる」

米上、思い描いては

「でもね、この偽装テロの真相知ってるの私達だけよ、ここからどう反撃するのよ ボタン掛け違えば、州知事相手に私達がテロリストよ」

島上、慇懃に

「そうだな、何か俺らいらなくないか、ここまで来たらさすがに国連調停案件だぞ」

渕上、窘める様に

「いいえ、まだまだ働きますよ島上さん、こことぞばかり発奮しては溝端出て来ますで、他の人に任せると死体の山ですよって」


市街には尚も自爆したM4AT大隊の爆煙が立ち込め、間断無く戒厳令を告げるサイレンが鳴り響く

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