ミカヅキ=ノイエ

 イスト自治領郊外に向けて駆けるマサト達の背後に、巨大な光の柱が立った。

 その巨大さもそうだが、駆ける三人は別の何かを感じ取って足を止めた。

 マサトは意志の様な物を、ノイエは優しさのような物を、アイシュは想いのような物を。

 それぞれが感じ取った物に共通している事は、送った者の正体だった。


「父さん…!」「お母さん!」「おじさん…おばさん…」


 マサトが聴いた父ユウジの声は、ノイエとアイシュの事を守る様に言っている気がした。

 ノイエが聴いた母イリスの声は、マサトとアイシュ、三人協力して仲良くする様に言っている気がした。

 そしてアイシュには二人から声がかけられた気がした。マサトとノイエを宜しくと微笑んで言っている様に感じた。

 マサトは絶句したまま立ち尽くし、ノイエは肩を震わせ自分を抱くようにして俯いている。アイシュは涙をこらえるので必死だった。

 三人とも理解していた。あの光はユウジとイリスが起こしたもので、二人とももうこの世にいない事を。

 光の柱が立ち昇ったのは十五秒程。しかしマサト達は一分間程動けずにいた。

 マサトはふらりと歩を進めようとした。元来た道を戻ろうとしたのだ。

 それを背後から、マサトの服を摘まんで止めたのはアイシュだった。


「ダメよ…マー君…ダメ…」


 鳴き声を必死でこらえて呟くアイシュ。今マサトが元来た道を戻れば、ユウジとイリスの行動が無駄になる。

 アイシュの声に我を取り戻し、歯噛みして堪えるマサト。今は逃げる事が先決なのだ。

 そして周囲の異変に、真っ先に気付いたのはノイエだった。


「お兄ちゃん。アイシュお姉ちゃん」


 短く素早く二人に声を掛けるノイエ。マサトより少し早く我を取り戻していた彼女がすぐに行ったのは周囲の警戒だった。

「索敵」を使用して周囲の状況を把握する。

 一分と言う短い時間歩みを止めていただけだったが、追撃部隊の接近を許すには十分だった。

 その緊張感を孕んだ物言いに、マサトもアイシュも事態の状況を把握する。

 すでに周囲を取り囲まれていた。人数は二十人程度。人数も問題なのだが、一人高い魔法力を有する敵がいた。恐らくこの部隊の指揮官だろう。


「囲まれてる…か」


 三人は意図せず身を寄せる。その動きに合わせる様に、建物の陰や暗がり、屋根の上からゾロゾロと敵兵士が現れだした。

 三人を中心に、周囲を取り囲むように布陣している。

 その円陣の外側から、苛立ちを露わにした男が通信兵らしき男を引き連れてマサト達に姿を見せる。


「ロギンズの部隊とはまだ連絡が着かないのか!?」


「ハッ!未だ不通であります!」


「まさか!先ほどの火柱に呑まれたと言うのか!?」


 マサト達から十分距離を取って立ち止まり、返事の返らない疑問を口にする。


「奴の部隊には後詰めも含めて五十人もの魔法士が付いていた筈だが…。信じられん」


 ロギンズと言う者の部隊がミカヅキ家を襲撃していたのならば、もう二度と戻る事は無いだろう。

 マサト達はそれについて疑いを持っていない。ユウジとイリスが命を賭して仕掛けた攻撃が、敵に逃げる隙を与えるとは到底思えなかったからだ。

 そして敵は未だ実戦と言う物を解っていない。油断しているのかもしれない。ターゲットを前に、何を仕掛ける事も無く、部下から情報を得ている等有り得ない事だろう。そうした隙や油断は、相手に策を巡らせる時間を与える事となる。


「お兄ちゃん。アイシュお姉ちゃん。ここは私に任せて先に逃げて」


 小さく囁く様な、それでいてマサトとアイシュにはしっかりと聞き取れる声音で話しかけるノイエ。


「バカな!お前だけ置いていける訳ないだろ!」


 即座にノイエの提案を否定したマサト。しかしアイシュはそれに答えなかった。


「もう。お兄ちゃん。状況をよく見て。アイシュお姉ちゃんは解ってるよ?」


 決意を込めた瞳でノイエを見つめるアイシュ。彼女はノイエの言葉に込められた真意も把握している。ノイエはすでに仕込みを済ませていたのだ。


「でも…!」


 それでも簡単に引き下がりたくないマサト。それも仕方のない事だ。先程の事がある。

 これ以上、自分の近しい者に何かある等と言う事は到底許容できない。しかしノイエは譲らなかった。


「お兄ちゃん聞いて?私ね、昨日『解放の儀』を済ませたんだ~。本当はお兄ちゃんに真名を呼んでもらいたかったんだけど。お父さんもお母さんもこの事態をある程度知ってたみたいで急を要するからって。だからね、今の私はアイシュお姉ちゃんより強いんだ。ね?解るでしょ?だから大丈夫なの。後で必ず追いつくから」


 満面の笑みでマサトに話すノイエ。その笑顔は今までのどんな時よりも可愛かった。

 それでも頷く事が出来ないマサト。ノイエの実力も才能も良く解っている。しかしその事と、この場にノイエだけ置いていく事は別なのだ。

 それを見て取ったノイエは、諦めたようにアイシュを見た。彼女の瞳は頷いていた。


「おい!お前達!大人しくしろ!」


 かなりイライラした神経質な声が彼等に投げ掛けられる。

 その声を遮る様に、ノイエを中心に彼女の足元から一瞬で展開した魔法陣が、取り囲む全ての敵兵を捕える。

 同時に発生した雷で形作られた鎖が敵兵を一人残らず絡め取り、一時的に行動不能とする。

 敵の魔法士が防御壁を具現化する隙も与えない程早く強力な魔法を、詠唱も無しにやってのけたノイエの実力に間違いはなかった。


「行こう、マー君。ノイエちゃんなら大丈夫だよ」


 マサトの手を取り、引く様に歩を進めるアイシュ。マサトは引き摺られるようにその場を後にする。

 マサトもノイエも、互いが見えなくなるまで見つめ合っていた。

 マサトとアイシュが見えなくなるのを見計らった様に、ノイエの拘束魔法が効力を失う。


「貴様ー…舐めた真似をしてくれたな!」


 敵の指揮官は怒り心頭の様だ。

 その敵指揮官に背を向けたまま、ノイエは再び肩を小刻みに震わせ、自分で自分を抱く。


「なんだ。怯えているのか。二人を逃す為に自らが残るとは…。美しい自己犠牲だ」


 口角を上げてノイエに話し出す指揮官の男、オータルはノイエの仕草を見て幾分気持ちを落ち着けていた。

 先程まで子供三人に出し抜かれた気分だったが、何の事は無い。誰かが犠牲になって残りを助ける手段に出ただけだったのだ。

 だが目標人物であるミカヅキ=マサトを目の前で逃した怒りが収まる訳では無い。


「しかし!我らを出し抜いた事を後悔する事になるぞ!私は例え少女とて容赦するつもりは無いからな!」


 己の中にある怒りを思い切り言霊に乗せてノイエにぶつける。

 ビクリッとノイエの肩が弾む。オータルにとっては怯えた仕草に見えただろう。


「…がうの」


 ノイエが絞り出すように呟く。それは余りにも小さく、恐怖ですくんだ少女の命乞いに聞こえなくもない。


「なんだ?命乞いか?」


「…違うの」


 漸く聞き取る事が出来た言葉は、何かを否定するものだった。


「…違う?」


 ノイエが何を言っているのか、オータルには理解出来なかった。

 ゆっくりとオータルの方へ向き直るノイエ。俯き加減で表情が読み取れないが、その口元には笑みが浮かんでいる様に見える。


「うん、違うの」


 ボンッ!屋根の上に陣取った敵兵が一人、突然弾け飛んだ。


「この姿を…」


 ゴウッ!オータルの後方に居た兵士が燃え上がる。


「お兄ちゃんに見られなくて…良かった」


 ビキキッ!今度は違う兵士が一瞬で氷の柱となり、直後に砕け散る。

 ここに至り、オータルはノイエが魔法で攻撃している事に気付く。

 魔法は詠唱してこそ本来の威力を発揮する。しかしノイエは一度も詠唱をしていないのだ。


「魔法で攻撃しているぞ!各員、防御壁を展開して備えよ!」


 その指示を聞いて、味方が次々と死んでいく怪異を目の当たりにし、茫然としていた兵達が防御壁を築く。詠唱も無しの魔法ならば、余程の事がない限りこれで防ぐ事が可能だろう。


「だって…」


 しかしノイエの言葉は止まらない。

 ザンッ!防御壁ごと真っ二つに切り裂かれる敵兵。


「私のこんな姿を見たら…」


 ドンドンドンッ!水の散弾が防御壁の後ろに居る敵兵ごと蜂の巣にする。


「総員、引け…!」


 彼女の魔法に一般兵の防御壁が無意味な事に漸く気付いたオータルは撤退の指示を出そうとした。しかし全てが遅かった。


「お兄ちゃん、きっと悲しむでしょ~!?」


 顔を上げて叫ぶノイエの顔は、嬉々とした表情と化していた。

 彼女の叫びと同時に、彼女の足元からまたしても魔法陣が展開される。

 その速さに逃れる事が出来た兵士はおらず、取り囲んでいた敵兵全員、魔法陣が作り出したドーム型の結界に取り込まれた。

 敵兵は瞬時に全方位の防御壁を自分の周りに展開する。その行為に間違いは無かった。敵の結界に捕われた以上、前後左右上下どこから攻撃を受けるかわからない。

 しかし誤算だったのはその威力だった。

 敵兵士が防御壁を具現化するかしないかと言う刹那、結界内は稲妻の嵐に見舞われた。

 巻き起こった稲妻の嵐を防げた敵兵は殆どいなかった。いや、一人を除いて全員、黒こげの消し炭と化し倒れている。

 生きている者はオータルだけだった。オータルもわずかに手傷を負っていた。

 彼は魔法士ランク五の高位魔法士である。

 彼の魔法で防げたという事は、ノイエの使用した魔法はレベル五相当だったのだろう。

 ランク三で構成された彼の部下に防ぎようも無かった。


「貴様―!」


 ノイエに怒声を浴びせかけようとした瞬間、それを遮る強い言霊を含むノイエの言葉がかぶさって来た。


「私ね~。怒ってるんだよ~」


 オータルの声量に比べれば、遥かに小さく聞こえるノイエの声。しかし実際には、オータルの言葉は遮られ、声を発する事も出来なくなってしまった。

 言霊に込められている魔力の桁が違い過ぎた。


「な、何…!?」


 最初、オータルはノイエが何を言わんとしているのか解らなかった。

 ノイエは首をわずかに傾け、オータルに視線を向けている。しかし彼を見ているのかどうか判別は付かなかった。


「だってそうでしょ~?わたしはおにいちゃんといっしょならなにもいらなかったおにいちゃんのがーどにはなれなかったけどあいしゅおねえちゃんならいいかとおもったしこれからもさんにんいっしょにたのしくくらせるとおもったのにそれをだいなしにするなんてゆるせないゆるせないよねゆるさない、ってゆーか死ね!」


 一息もつかずスラスラと呪文の様に、いや呪詛の様に呟いたノイエが言い切った途端、ノイエの頭上で具現化された雷の槍がオータルに向かい飛ぶ。

 しかし先程までの事が幸いしたのか、オータルも既に防御壁を展開する準備は終えていた。高速で後退しながら斜め上方に逃げる。

 魔法による移動魔法「高速移動魔法」と「飛行魔法」だ。

 剣魔法や盾魔法は同時に複数具現化する事は出来ない。しかし肉体強化の魔法に属する物はその限りではない。

 上空に逃げる彼に対して、雷の槍は軌道修正しながら一気に間合いを詰め着弾した。

 その攻撃を前面に展開した防御壁で防ぐオータル。


「こいつ、気でも触れたか!?何を言っている!死ぬのはお前だ!」


 動きが緩慢で隙だらけのノイエに対して、オータルは可能な限り強力な魔法を使用して一気に戦闘を終わらせようと考えた。


「這い登れ!焔纏ほむらまといし炎の蛇よ!渦炎蛇!」


 魔法を詠唱し、右手をノイエに向ける。

 即座にノイエの足元から炎の蛇が数匹這いずり上がり、それはそのまま炎の渦を形成し、小さい炎の竜巻を作り出しノイエを呑み込んだ。

 高速で回転する炎は周囲の空気を巻き込んで超高温の竜巻となり全てを焼き尽くす。

 具現化した時間は十秒そこそこだったが、一人の少女を焼き尽くすには十分な時間だった。

 オータルはこの魔法に自信を持っていた。

 同じランク同士の模擬魔法戦で、この魔法が完全に防がれた事は無い。少なからずダメージを与える事が出来ると確信していた。

 彼の具現化した魔法が霧散し、煙の中に立つノイエは…。

 無傷だった。

 いや、正確には全くダメージがなかった訳ではない。着ている道着は所々焦げている。さっきまで純白だった道着が、やや煤汚れた様になってしまった。

 ポニーテールにまとめ上げているが、長く美しい髪先にも少し焦げたような跡がある。

 頬と、手の甲が赤くなっている。軽い火傷…と言う程ではないが、炎のダメージはここにも出ているようだ。

 それを見て、当初驚きを隠せなかったオータルはホッとした。

 自分の魔法が全く効かなかった訳じゃない。極少であってもノイエに届いている。

 彼女にこちらの攻撃が届きにくくても、こちらが彼女の攻撃を防ぎ続ければ千日手となりお互い行き詰る。

 増援が来てくれればこちらの勝利。来なくても時間までここに足止めすれば嫌でも


「あついなぁほんといやになっちゃうとっととやられてくれればおにいちゃんのところにいけたのになんであがくかなぁでもこれはおとうさんとおかあさんのかたきうちでもあるからすんなりやられちゃったらわたしのきがはれないわねでもさっさところしておにいちゃんをおいかけなきゃほのおをけしかけられたんだからこっちもほのおでおかえししないとねかえさないとかえさなきゃ、ってゆーか死ね!舞い来たれ炎の龍!龍炎武」


 再びうつむき加減で呪詛を撒き散らした後、バッと顔を上げてノイエは呪文を詠唱した。

 空中で静止するオータル、その真下十メートルの地面に現れた魔法円。そこから驚くべき速さで具現化された炎の竜巻が彼を襲う。

 瞬間的に魔法を具現化させ、周囲三百六十度を取り囲む防御壁で身を守るオータル。


「ぐ…ううっ!」


 炎の中からオータルが耐える様なうめき声が聞こえる。それ程彼にとって強力な魔法だったのだろう。

 炎の龍が去り、残されたのは所々をひどく焼かれ煙を上げるオータルだった。

 浮いているだけでやっとのオータルはすでにぐったりしていた。しかしそれを見たノイエは嬉々とした声を上げた。


「あはっ!あはははっ!あれに耐えたんだ!うん。そうよね!そうこなくっちゃ!」


 その声を聴いたオータルは、なんとか顔だけを上げて彼女を見る。


「き…貴様は…、ランク六の魔法士…だったのか…」


 絞り出すように呟くオータル。彼は互いにランク五だと思い込んでいたのだ。


「あん?ランク六?あ~…レベル六の魔法を見たから…」


 喜んだような笑い声で語っていた声とは打って変わって、冷たく醒めた声で呟くノイエ。先程とは全くの別人の様だ。

 声だけではない。彼を見るその眼も冷たく凍てついた物だった。


「うん。でもま~、もういいや。それじゃ~特別よ。取って置きを見せてあげるね」


 再び口調が変わる。

 オータルには彼女の中に何人もの人物が存在している様に感じた。

 人格がではない。人物がである。口調だけでなく見た目も、雰囲気も違って見えたのだ。

 もはや答える気力も無いオータルは、彼女の進める話を聞くしか出来なかった。


「ねぇ、あなた達は私達の事、随分調べてたみたいだけど、どこまで調べたのかな~?」


 スッと右腕を上げ、掌を天に向けるノイエ。その掌に、渦を巻いて魔力が凝縮していくのが解る。


「私達ミカヅキ家の得意としているのは魔力のマテリアライズ化。そしてその持続時間なの」


 彼女が掲げた掌の上で、魔力がどんどんとある物に形作られていく。

 マテリアライズ化とは、魔力による武器の具現化である。

 マテリアライズ化された武器や防具は、魔力の続く限り実体化し続ける。そこに存在し続ける限り無限に魔力を必要とするマテリアライズ化だがメリットもある。

 マテリアライズ化した武器防具には、その魔法士が得意とする魔法特性を付与する事が出来る。炎の剣、氷の盾、風を纏う鎧、その他にも色々な特性を付与する事が出来る。

 マテリアライズ化した時の魔法レベルが持続するので、詠唱の必要なくその魔法レベルと同等の攻撃を連続で振るう事が出来るのもメリットの一つだ。

 しかしとにかく魔力の燃費が悪い。

 普通の魔法士はまず使わない。接近戦を強要される上に、魔力がすぐに枯渇してしまう。

 通常の魔法戦闘を考えるならば、遠距離から行使できる剣魔法を使う方が現実的だ。

 しかし、深淵の一族が有する人並み外れた魔力保有量がマテリアライズ化した武具の使用を現実的とし、その持続時間を驚異的な物にしていた。

 そうしている間に、ノイエの掌には紅く輝くランスが形作られ浮いていた。

 その柄を握り、構えるノイエ。彼女に握られた瞬間、その紅いランスは黒い電流を発し帯電した。

 禍々しくも美しいそのランスを構え、空中に居るオータルに眼をやるノイエ。


「聞きなさい」


 またしても冷たく響く声。その瞳も凍てつく様だ。

 彼女の声には抗えない程の言霊が込められている。命令されるままに顔を上げ彼女の言葉を聞くオータル。


「これから私は真っ直ぐあなたに向かい、この槍で突きます。それをあなたは持てる力の全てを使って防ぎなさい」


 頷くでもなくオータルは防御壁を具現化する準備に入る。

 彼女の言葉に気圧されたからだけではない。あの槍は防がなければならないと思わせる力を発していたのだ。

 ノイエがグッと構えたのを見計らって、オータルは残る全ての魔力を注ぎ込み防御壁を具現化した。

 分厚く重厚な防御壁は、彼の魔法力が高い事を意味している。センスもある。

 次の瞬間、ノイエは消えた。

 いや、消えたのではなく、そう思う程の速さで跳躍したのだ。


 サクッ。


 ノイエの持つ深紅の槍は、彼の全てを込めた防御壁すら何の障害にもならないと思わせない様に貫通した。それだけには留まらず、そのままオータルの体を上下二つに分断した。


「深紅の…天使…」


 オータルの意識が最後に留めた物は、深紅の槍を構え、彼の返り血で全身真っ赤に染めたノイエの姿だった。白かった道着は勿論、彼女の白い肌も真っ赤に染まっていた。





「やだも~。私血まみれじゃない~」


 魔法により落下速度を調整し、ゆっくりと地面に近づくノイエは、自分自身の姿に嘆いた。


「お兄ちゃんと合流する前にシャワーを…って、家も無くなっちゃってるよね~…」


 ガックリと肩を落とすノイエ。


「あの爆発だとお父さんとお母さんも…」


 その事を考えると、更に肩を落とすノイエ。

 ひょっとしたらと言う思いもない事は無いが、現実的に考えれば助かっているとは思えない。

 近づいてきた地面に右脚を付けたその時、その地面から眩い光が迸り彼女を包み込もうとした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る