→頭の中

 諸事情によりしばらくお休みしていたので、この第三回でにごたんの存在を知り、また、初めて参加しました。

 気軽に参加したいですと声を上げた自分の粗忽さに頭痛を覚えた記憶があります。


 反省会という体で書こうとしましたが、むしろタイトル通り、単にお話を考えているときの作者の頭の中を追い掛けただけになりました。

 書き物の参考にはなりません。ただの解説だと思って下さいませ。




 お題は【ピタゴラスの定理】【勧善懲悪】【砂糖菓子】【必要な犠牲】

 勧善懲悪と必要な犠牲から、方向性は即座に決定……というか、作者にとってみれば通常運転です。

 頭のおかしな人の恋物語、大好きなので。



 砂糖菓子=金平糖。

 単に作者が金平糖好きなので、悩む間もなく金平糖でした。


 金平糖を真面目な顔をして食べる女の子。

 そして、その女の子に恋をしている男の子。ただ、頭の中に浮かんだ絵は、遠くから見つめているだけの姿。


 同時に浮かんだのは、薄暗い建物の中で鋭く睨み付ける女性と、その視線に歓喜する男性の姿です。

 二人の末路であるそれに、うまく運ばなければいけません。


 何故あなたは真面目な顔をしているのかという問い掛けから、お話作りは始まりました。


「金平糖が好きです」

 ↓だからといって、

 ↓真面目な顔で食べるほど?

「つるつるにしているんです」

 ↓どうしてつるつるにするの?

「とげとげしているのが金平糖の良さだけれど、私はつるつるにしたい。とげとげしているのは、何というか、許せない」


 脳内でのそんな問答で、女の子は勧善懲悪を成す側だと確定しました。

 全てを平らに、はみ出すことを許せない。

 その真っ直ぐさが彼女の美徳であり、欠点です。


 見ているだけの男の子は、彼女にとっては金平糖以下。

 それでも変わらずに見つめているのは、彼女が好きで、一種崇拝にも似た気持ちを持っているから。

 どうしても彼女の目に映りたい。むしろ、映るだけで幸せだ――彼は卑屈です。そして、卑屈なあまりこじらせた恋は、崇拝の域に達しています。


 彼女が勧善懲悪を掲げるような人物であることを明確に示すためにも、彼女が善で、彼は悪でなければなりませんでした。

 そして、彼が彼女の目に映るためにも、彼女が善で彼は悪でなければなりませんでした。

 そして何より、彼女の心に自らという綻びを生み出すには、彼が完全な悪であることは許されないのです。

 彼女の目に映りたい。愚直に愛を伝えても、彼女の興味は勧善懲悪と金平糖にしかありませんから、それは無駄だと彼は知っています。

 それならば、彼女が悪で彼が善という矛盾を生むことによって、彼は彼女の記憶に止まるほかありませんでした。

 そして、もう一つの興味――金平糖と結び付けることで、彼女の中での自分の存在を確立させようと彼は思ったのです。


 ピタゴラスの定理はつまり、三平方の定理です。

 直角三角形の辺の長さについての定理なので、三角形を作るには彼と彼女と、もう一つの点があるはずです。

 それは何かといえば、必要な犠牲であるのだろうと思いました。


 最初に浮かんだ末路は、ここなのだと判断。

 そして、ピタゴラスの定理(直角三角形)を作るのはここが最適でした。

 彼女と彼の距離は一番遠く。

 動けない彼女という点と、動けない必要な犠牲という点、動かない彼という点で直角三角形を作りました。

 最初は必要な犠牲が犠牲になったとき彼女にも矢が飛んでいく光景を想像しましたが、彼の目的は彼女の目に映ることであり、必要な犠牲からの矢印を作りたくなかったのでなしに。

 彼にあるとするなら、それは未必の故意です。


 ピタゴラスの定理を明確にするために、簡単な式を用いました。

 何が一番時間がかかったと言えば、銃と、殺傷能力がある一般人でも手に入れられ、ピタゴラスの定理を用いたときに遅れすぎない飛び道具を探すことでした。

 初速を調べたり……多分30分はこの調べ物に費やしています。

 知識は増やしておくべきだと、心底思いました。


 彼女が善で彼が悪、彼女が悪で彼が善。そんな矛盾の為には、その必要な犠牲は完全な悪でなければならない。

 善を思わせる行動により、悪を成すこと。

 この点は二人とも共通しています。

 完全な悪を誅し、必要な犠牲に仕立て上げること。

 悪を討つことにより、罰を逃れた悪を再び世に放つこと。

 彼女にとっては忘れられない事柄になるはずです。


 事件は終わりました。

 足りないとすれば、愛の告白です。


 彼が何故彼女に執着したのか、何故卑屈になり、卑劣な手を使うに至ったか。

 理由を突き詰めて生まれた彼の過去と気持ちを語って貰いました。

 熱烈な愛の告白だと、作者は思っております。


 決め台詞(?)は、最後の傷を付けるため。

 タイトルは、彼の気持ちを一番よく表しているので迷わずそれにしました。




 反省点を挙げるとするなら、恐らく皆さまに、彼が彼女のストーカーであることに気付いて頂けなかった点。もう少し、それを思わせる表現を入れるべきでした。

 概ね良い反応を頂けたので、それなりに上手くまとめられたのではないかなと、ちょっぴり自画自賛しております。

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