悲しみを拾い集める人 —化物の少女—
私は人の悲しみを食べることで生きている。食べなくては生きていけない。
私は『悲しみの主』という【化物】として産まれた。他にも運を食べる主や幸せを食べる主、怒りを食べる主など、世の中には私以外にも何人かいる。
その主達の使命は皆同じく『食べて吊り合いを保つ事』。
例えば、私が悲しみを食べないでいると、世界中の悲しみが他の感情よりも増え、結論を簡潔に言えば、人は悲しみに支配されて自殺したり、殺人を犯すようになる。大事になると宗教が増え、戦争に発展する事もよくある。
そうならないためには、他の感情との『大体数量』が同じである必要がある。感情の量の吊り合いが合わなくなった時、私達の業界用語で言えば『人類の天秤』から振り落とされたら、人は絶滅の一途を辿る。
この吊り合いを合わせる役目を持つのが『——の主』と呼ばれる人達になり、産まれ持った言わば特殊体質である。
つまり、世の中の事件や事故の根本的原因は、私達【化物】にある。
主は、夜に食べたいという欲が増加すると同時に、急激な睡魔に襲われる。食す行為は寝ている夢の中で行われる。どのように感情を捉えて食すかは、グロテスクなので詳細は割愛するけれど、人の形をした感情という物体を、イソギンチャクのように捉え、ヒルのように吸う。
たまに、我が身が化物という恐怖に負けたり食す行為が生理的に受け付けず、薬などを使って欲を抑える主がいる。その人は次第に震えが日常的に止まらなくなり、最終的には耐えきれず、自分自身を食べ死んでしまうらしい。そういう主がいると一気に天秤が崩れ、紛争や大きな自然災害が起きてしまう。
だから私は、生きるために今日も悲しみを拾い集めて食べる。結果的に世界を救っている事になっている。
もちろん朝ごはんとか普通の食事も取る。というか寝ている時以外、普通の生活をしてる。
私、まだ女子高生だし。
あ、よく見ると君の悲しみ、溜まってるね。
「その悲しみ、今日、私が食べにいくね」
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