Step ―私の選択―

—頭ん中は空っぽでいい

—欲しいものなどなに一つない

—息を吸うように 声を出すように

—流れていこう


  『Step —私の選択―』


うまく生きていくために踏みとどまるすべを身につけた。

何も考えず。何も欲さず。

心を篭らせるのは意外と簡単だった。

だって堕落するのは人の得意分野でしょ。


私は人を好きになってはいけない人間なのだ。


理由は私が性的行為恐怖症だから。

簡単に説明すれば保健体育で学ぶような事は生理的に受け付けられない。

身体が拒絶する。下ネタもダメ。

男の子同士のアレな会話を耳にするのは苦手だけど、

女の子同士のアレな会話は余計に苦手。

気持ち悪くなって身体が勝手に震えてくる。

だから男の子の近くには基本近づかないし、

気のしれた女の子としか話さない。


私も女だから好きな男の人ぐらい出来る。


好きな人に「好きです」って言われた時は心臓が破裂するかと思った。

けど、きちんと冷静になって断った。

万が一付き合うことになったとして、手は繋ぎたいけど身体には触れられたくない。

キスしたいけどきっと身体が拒絶する。

その先は何も考えたくない。

そんなのと付き合う相手が可哀想でしょ。


思考も制御できるもの。

右に進み過ぎたら左に戻り、前に傾いてれば後ろに押してやれば良い。

そうやって心のドキドキを無理矢理鎮めてきた。


私は人を好きになってはいけない人間なのだ。


そうやって踏みとどまる事が、

生きるために必要だと思い込んだ。

これが私の生き方。人生の歩み方。

ステップの踏み方なのだから。


だからもう誰も近づかないで。


  ■


—揺れる日々の 微々たるもの

—これは僕の あらゆる心

—右向け右 左向け左

—言っちまえよもう 全部 黙れ

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