私のメルトワルツ

昼休みになっても一人で弁当を開いて、一人で食べる。

放課後になっても一人で本を開いて、一人で読む。

それが私の日常。

それが皆が知っている静かな私。

外では野球部かサッカー部か。

へーい! とか、 もういっぽーん!とか。

大きく張り上げた声を聴きながら本を読む。


教室には誰もいなくなり、静かな教室と、静かな私。

本を読んでいたけれど、区切りが良いところだったので

目を本から窓の方へ移した。

夕陽が眩しく思わず目を細める。

窓から教室の方へ目線を変えた。

誰のかわからないギターが壁に立てかけてあった。

ケースは床に置いてあり、ギターは裸のままだった。

きっと軽音部の誰かのなのだろうか。

しょうがないなーとギターを取った。

ケースに入れてやろうと思ったのだ。


多分、丁度読んでいた本が私好みの内容で、気持ちが高まっていたんだと思う。

私は徐にギターを抱えてストラップを肩にかけていた。

私は弾けないけれど、

私は弾けるんだ。

そう思って構えた。


——わんっ……つー…

——わんっ…つー…すりー


—ジャーンッ!


  ■


いつになく、煩い私!

誰も見つけられなかった私!

赤い赤い!

夕焼けで教室が赤くて燃えてて、美しくて綺麗で、

きっと私も燃えるんだ。

真っ赤に!

—ジャーンっ!


軽いステップを踏みながら私は弾いた。

—ジャーンっ!


黒板を鏡にしながら私は弾いた。

—ジャーンっ!


終いには誰かの机の上に上履きのまま乗って、

私は思い切ってギターを鳴らした。

—ジャッジャーンっ!


—ダダンッ!!


誰かが廊下から私を覗いてる。

私は私を覗いてる。

時計じかけの私が、初めて壊れた日

私が知らなかった私。


これが『私のメルトワルツ』


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