ササイナコト
私にも出来る事ってあるのかな。
私だってやりたい事はいっぱいある。
友達と映画館で映画見たり、家族とファミリーレストランでご飯食べたり、洋服を自分で選んで一人で買い物したり。
挙げるとキリがない。
でも今一番やりたい事はミュウを連れてお散歩する事。あ、ミュウって私のうちで飼っている犬の名前ね。公園に行って一緒に走り回って見たいな。
……なんてね。
最近はこんな些細なことについてモヤモヤさせてるわけなのだけど、でも、これらの願いは今のところ叶いそうに無い。
残念だけど仕方ない。無理な事は自分が一番わかってる。昔からわかってるから。
それなのに夢を求める事は、
無意味な事?
■
母親も父親も治療費のために働いていて、家ではいつも一人。淋しさのあまり、体調はそこまで悪くない時でも酷く落ち込んでいた日も少なくなかった。
心の中では、
「なんで、私だけこんなに辛い思いをしなくてはいけないのだろう」
と、口癖のように思っていた。その皮肉な言葉は一般の人と比べている自分への哀れみだと重々承知していた。
そんな汚らしい考えをする自分が嫌いだった。けれどその思考からどうしても離れることができなかった。自分が嫌いになればなるほど汚れた考えは脳裏を過る。苛立つ程に纏わりつくこの想いは、
何もかも考える事を放棄させた。
最終的には、
「私はこれから何か出来るのか」
を妄想する事ほど無意味なことは無いと、思い立つ程に。
それなのに最近はどうだろう。その妄想がむしろ楽しいと思えるようになっている。身体の状況は昔とさほど変わっていない。彼女は今、高校に進学して高校生になっている。入学して半年が経ったのだけれど、半分程は出席出来ている。
だからさほどとは、学校に行ける程度。そして学校の環境に少し触れた程度である。病気に対する免疫力が以前よりついたのだろう。まあ、教室にいるよりも保健室にいる方が長いのだが……。
美春の心はあるきっかけから変わっていった。
■
一時は、生きていても楽しいことなんて何も出来ない。なんて思っていた私だったけど、今まで頑張って生きてこれたのも多くの人の助けがあったから。
今なら皮肉でもない気持ちではっきり言える。
小さい頃から迷惑をかけてきた両親。
お医者さんに看護婦さん。
そしてあの人。
安い同情なんて要らない。そんな事を思って口も聞かなかった日もあった。
けれど彼らはずっと声をかけてくれた。今は皆の声を聞いてると、なんていうか、生きる気力が湧いてくる。
……みたいな。
で、せっかく二日に一回登校できるぐらいまで元気になったし、生きている間はやっぱりやりたい事がしたい。
そう言えば昔、何ができるかって考えるのって辛いだけで無駄だと思ってた。この体じゃあ考えつくほとんどの事が出来ないのだから。
それなのに最近は一生懸命に出来ることを探してる。その行為自体が楽しかったりもする。
まあ無理な事が多いのだけれど。
何か一つやりたい事を見つけたいなー。
……なーんてね。
思春期、超えたかな。
こんな私にも出来る事ってあるかな。
あったらいいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます