魔法処女マジカル☆ヴァージン! <外部企画にごたん投稿作品>

雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞

魔法処女マジカル☆ヴァージン!

今回のお題【勧善懲悪】 【砂糖菓子】 【必要な犠牲】

(時間制限内に書き終わりましたが、文字数制限に引っ掛かりましたので遅刻組になります)



◎◎




「そんなものか――そんなものか! マジカル☆ヴァージン!? 余はまだまだ満たされてはいないぞォォォォォォォ!!!」


 美しき魔人――大魔道士マスター・コン=ロウ・リーが高らかに吠える。


『なんてこと……まさか、私達の渾身の一撃に耐えきるなんて――本当に化け物ね!』


 ミギワ先輩が僕の腕の中で、ちょっとくぐもった感じの声をあげて驚愕する。

 ……うん、驚くのはよく解る。よく解るよ? でもね、多分この中で一番驚いているの僕だからね?


「マスター。ご命令を。いまこそワタクシの真の力を開放し、マスターの偉大なる御計画を完遂する時です。そうして――私の娘とマジカル☆ヴァージンを存分に辱めましょうぅ!!」


 冷たい声で(ただしハァハァと興奮を全く隠せていない荒い息を吐きながら)コン=ロウ・リーに進言するのは、ミギワ先輩の母親だ。胸がぺったんこな黒いゴスロリ的な格好をしている。


『やめて、かあさま!? その年でそんな格好しないで! 年甲斐ってものを考えて! それこそ娘としてこれ以上ない辱めよ!?』


 先輩はそんな事を叫んでいるけれど、もうなんか僕の頭の中には入ってこない。

 大魔導士が叫ぶ。


「さあ、どうした? 本気を出すのなら今のうちだぞ、マジカル☆ヴァージン! さもなくば我が偉大にして絶対の真理への探究を――世界の完全昇華を成し遂げる極大魔導を発動するだけだ!!」


 いや、知らないよ?

 もう好きにやってよ。

 僕は感知しないからさ、僕の知らない所で細々とやってくれないかな、そんなの。

 ちらりと、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した榕城ようじょう学園のグランドを見遣り、僕は盛大に溜息をついた。

 え? 呆れているのかって?

 はっはー、そんなわけないでしょう……


『カオルちゃん――いえ、魔法まほう処女しょじょマジカル☆ヴァージン! 全力で行くのよ、全力で行くしかないわ!』


 いまにも口から魂が飛んでいきそうな僕のことなど無視して、ミギワ先輩が切迫した調子で大真面目に訴えかけてくる。

大真面目に、そんな単語を叫ぶ。

 

 確かに今の僕の格好は、そう呼ぶしかない代物だった。

 ひらひらの、フリル的なものが沢山ついた、妙にスカート丈の際どい衣装。何故か肘まではハンドグローブで覆われていて、脇が剥き出しになっている。

 背中の方は、殆どお尻のラインまでスリットが入っていて、これ殆ど見えてますよね?的な状態だ。

 頭の上で揺れるネコ耳には、一抹の哀愁すら感じる。


「さあ、マジカル☆ヴァージン!」

『さあ、マジカル☆ヴァージン!』

「さあ、マジカル☆ヴァージン!」


 三者三様、異口同音の問いかけに、その最悪な状況に――僕は、絶叫で答えた。



























「僕は――だアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
























……なんでこんなことになっちゃたんだろう?

 以下、回想。


◎◎


 その日は、私立榕城学園の入学式だった。

 僕は新入生。

 心は浮かれていたように思う。

 僕はいわゆる女顔で、ガタイもなよっとしている。その所為か、中学校ではいい思い出がなかった。いじめられていたわけじゃないけれど、まあいい思い出はなかった。

 でも、心機一転、境遇一新の高校生活でなら、きっといいことがあると、そう前向きに考えていたんだ。

 実際、すぐにいいことがあった。

 在校生挨拶をしてくれた生徒会長さん――契合けいごうミギワさんが、すごい美人だったのである。

 綺麗だった。

 スピーチをする彼女は、光り輝いているみたいだった。

 ちらりと、一瞬だけ視線が合ったような気がして、その時は胸が高鳴り舞い上がってしまうぐらいだった。そのぐらい、綺麗だった。

 だから、割り当てられた教室に辿り着いても、僕はどこかぼうっとしていたように思う。

 ホームルームが終わって、クラスの皆が思い思いに行動を始めてもまだ、僕はぼうっとしたままだった。

 気が付いたら、学舎の中をさまよっていた。

 というか、迷子になっていた。

 僕は新入生だった。

 本格的に学舎の中を歩きまわるのは、もちろんその日が初めてだ。榕城学園は全寮制で新入生はさっさと寮に戻らなくちゃいけなかったのに、なのに僕は帰り道すらわからないという状況だった。

 何も解らない。

 だから、迷子になって僕は、スッゴク不安だったんだ。

 そんな僕に、優しく声をかけてくれたのが、他ならないミギワ生徒会長だった。

 狼狽も露わにあわあわとその場で混乱している僕を見つけたミギワ先輩は、柔らかに微笑みかけてくれた。


「どうしました? あ、ひょっとして迷子ですか? この時期は多いんです、この学園は、無駄に広いですから」


 ほんわかと微笑む彼女の笑みに、僕は心を奪われて、またぼうっと惚けてしまった。


「あらあら」


 彼女は慣れた様子で僕の手を取ると(!?ってなった)そこに何かを握らせてくれた。

 それは、百合の華の造形が施されたきれいな砂糖菓子だった。


「これ、内緒ですよ? 本当はお菓子、持ち込み禁止なんです」


 あ、有難う御座いますと、僕が狼狽えながらお礼を言うと、彼女はクスクスと笑って、


「はい、それじゃあすぐに――〝〟に案内しますね?」


 そう言った。


「――――」


 僕は、言葉を失った。

 あんまりだと思った。

 此処まで来て、新しい環境にまで移ってそれでも何も変わらないなんて酷いと思った。

 だから、呻くようにこう言ったんだ。


「先輩、僕は」


 僕は――男なんです。


 その言葉を聞いて、彼女は目を丸くして――


 次の瞬間、外――グラウンドの方向(だと思う)から耳を劈くようなすごい爆発音が聞こえたんだ。

 そして、高らかな笑い声も。


「ッ!」


 と、先輩が顔色を変える。キッとまなじりを決して、そして彼女は、僕の手を取ると(僕はどぎまぎした)まるで別人のような口調で、有無を言わせずこう言ったんだ。























「あなた素晴らしいわ。私と契約して、魔法処女になって頂戴」


◎◎


「意味わからんんんんん!!!」


 僕は思わず戦場と化したグランドで叫んだ。

 本当意味わからん。

 なんだ、契約って?

 なんだ、魔法処女って?


『魔法処女とは――〝魔〟導行使〝法〟違反者に対する審判及び〝処〟刑の執行を一任される非〝女〟性現世代行行使者の略よ』

「そんなことは訊いてないんですよ先輩!? 僕が聴きたいのはなんでそんなものに――」


 自分の、今現在のを示しながら、僕は叫ぶ。


「どうしてこんな格好に変身させられてあんな変態と戦わなくちゃいけないのかってことですっ!!」


 そう、僕は変身させられたのだ。

 グランドまで連行された僕が見たものは地獄だった。地獄としか言いようのない惨状だった。

 死屍累々。

 たくさんの学生たちが倒れていた。

 黒いローブを羽織った怪しい奴(明らかに不審者だった)を中心にして、男子も女子もぼろぼろになって倒れている。教師の姿もあった、年季の入ったおっさんだった。

 いや、そこまでは地獄なんかじゃない。そこからが本当の地獄だった。

 倒れている人間が〝変化〟した。

 身長が縮み、髪が伸び、顔の形、体格、瞳の色、何もかもが変わって――





――全員が〝幼女〟になっていた。




 目を疑うような光景だったけれど、それが事実だった。

 そうして、あらかた自分の周りの人間すべてが幼女に変化し終えると、ローブの不審者はその姿を白日の下に曝した。

 紫色の、ピッチリと体に張り付き、細いながらも確かな筋肉を強調する丈の長い衣装。

 まるでアラバスターのように白い肌に、黄金の髪、黄金の瞳、何もかもが美しすぎるその男性は、口を開くまではまるで天上の工夫が削り上げた美の頂点に座す彫刻像のようだった。


「今日こそ、今日こそ決着をつけに来たぞ魔導の王国よりの追手――ミギワ・フォン・ケイゴウ!」


 その美しき不審者の眼が、先輩を射抜くように見つめる。


「イエス、マスター。その通りです、今日こそ私の娘に、誰に仕えるべきか、何を信じるべきかを教えてあげましょう」


 そう言ったのは、いつの間にかその不審者に寄り添うように立っていた漆黒の幼女だった。

 長い黒髪、吸い込まれるように深い黒の瞳。全身を包む黒いゴシックロリータな衣裳。

 一瞬前まで存在しなかった彼女と、天上の美を宿す青年は同時に口を開き、こう宣言した。









「「さあ、いまこそ崇高なる計画を――〝〟を始めよう!!」」











「……は?」


 僕は真顔で首を傾げる。


「美少女君、あなたの名前は?」

「あ、カオルです。ひいらぎカオル。あと、美少女じゃないです先輩」

「カオルちゃん」

「君じゃ駄目なんですか、君じゃ?」

「私は実は、あの男と同じ魔導の王国――この世界の裏時空のような何かそんなぽいところから来た魔導具なの。魔導具というか死刑執行のための魔導杖まどうじょうの一族なの」

「……あ、デムパな方でしたか」


 そそくさとその場を後にしようとする僕の首根っこを摑まえ、先輩は高らかに宣言する。そう、宣言しやがったのです。




「あなたは。今日から私と契約して――魔法処女になるのよ!」





「いやじゃ、バーカ! 帰れ、そのデムパの王国に帰れバーカ! ふざけんな帰れよテメーら!」


 精一杯の罵声を吐くを僕を無視し、先輩が僕に迫る。


「あなたには稀有な才能があるわ! 男でありながらその可愛らしさ! 可愛いは正義なのよ? だから唯一、男でありながらあの大魔導士マスター・コン=ロウ・リーに立ち向かうことができるの! そう、私を使えばね!」


 知らないよそんな事! なんだそのどっかのロゴが林檎な企業の謳い文句みたいなのは! てか、使えばってなんだよ使えばって! あんた人間じゃないのかよ!?


「私を使って、カオルちゃん――壊れるぐらい、めちゃくちゃに!」

「僕の学生ライフがめちゃくちゃだよ!」

「いいから使いなさいよ、お菓子あげたでしょ、恩には報いるものよ! というか報いろ!」

「ぎゃー!? やめ、ヤメローっ!? な、なななな、なにをするんですかセンパ――!?」


 僕をどうにか押さえつけようとする先輩に必死で抗っていると、いきなり彼女の顔が眼前に迫って――




そして、僕の唇を塞いだ。





 キスだ。

 口づけだ。

 接吻だ。


「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!?」


 一瞬で何も考えられなくなる。頭の中は真っ白になって……その間隙に光が、光が流れ込んで――


 そうして。

 そうして気が付いた時、僕は既に〝それ〟を手にしていた。

 眼の前の得物――1分間に12万発の弾丸を吐きだす最恐の〝杖〟――ミギワ先輩が姿を変えた魔導杖――〝ガトリングガン〟を!


 ガトリングガンをサンライズパースで構えた瞬間、僕の身体が光に包まれる。


 光り輝く僕の身体、真っ直ぐにつき出された僕の両足を白色が彩る。

 きゅぴん☆という音がして、ニーハイな白いソックスが装着。


 更に天へと掲げた両手にも同じ白がまとわりつき、きゅぱわ~んという音ともに肘まである手袋を形成する。


 胸元ではファンシーなSEが響き、青いリボンが、さらに全身を包むふりふりが過剰なほどついたスカート丈の際どい薄ピンク色の衣裳が現界する。


 最後に頭部でピココ~ンと間抜けな音が鳴り響き、そこに猫耳が君臨した。


 光がはじけ飛ぶ。


「おお!」

「素晴らしい!」


 不審者一同が感嘆の声をあげる。

 自分の身長よりも巨大なガトリングを構え、媚びっ媚びなポーズでぱちっとウインクを決める美少女――否! 魔法処女がそこにいた。


 ……というか、それが僕だった。


 ボクハ、マホウショジョニナッテシマッタノダ!!


 ……猛烈に死にたかった。


『さあ、カオルちゃん――いえ、魔法処女マジカル☆ヴァージン! その恥ずかしい恰好から1秒でも早く解放されたのなら、あの変態を撃ち殺すのよ!』


 一切の情け容赦もなく、凄まじく不穏な事を宣言をするガトリングと化した先輩。

 しかし、僕もいろいろ限界だった。

 こんな格好、1秒でも早く脱ぎ捨てたかった。

 なので、言われるがままにトリガーを引く。

 はいまっとふるばーすと!



 ドラババババババババババババババババババババ――ッ!!!!



 凄まじい音をがなり立て、無数の弾丸――1秒間に12万発という明らかに光速を超え物理法則のヘッタクレモないなんかが、光芒を引きながら不審者たちに殺到する!

 周囲の幼女と化した生徒や教師たちが爆風の余波であっちこっちに吹き飛ばされる。

 ――吹き飛ばされる……?


「え、これ大丈夫な奴です? ひと死なない? 僕、殺人犯になったりしない?」

『大丈夫よ! 私が射出する弾丸は人畜無害! 魔導士と魔導杖にしかダメージを叩きださない素敵仕様よ!』

「その割になんかいっぱい人が吹き飛んでるんですけどー!?」

『モーマンタイ!』


 何が無問題なのか知らないけれど、とにかくありったけの弾丸を撃ちつくした時、辺りはとんでもない有様だった。

 死屍累々が本当に死屍累々となっていた。

 まさに地獄絵図である。

 だが、しかし――




「そんなものか――そんなものか! マジカル☆ヴァージン!? 余はまだまだ満たされてはいないぞォォォォォォォ!!!」



 もうもうと立ちこめる土煙を突き破り、美丈夫がゴスロリを従えて姿を現す。

 そう、なんと彼は無傷だったのだ!


『なんてこと……まさか、私達の渾身の一撃に耐えきるなんて――本当に化け物ね!』


 先輩のその言葉は虚しく響いた。

 化け物。

 そう、僕が相手にしていたのは、本当に化け物だったのである――


◎◎


「と、回想はそんな感じですが……ど、どうしたらいいのですか、先輩!?」


 僕は手の中の魔導杖――ガトリング先輩ことミギワ先輩に問い掛けた。

 騒ぎを聞きつけてだろう、周囲には野次馬が群れを成している。

 大半が生徒だけれど、教師の陣の姿もあった。

 そして、その視線が痛い。

 僕は顔を真っ赤にしながら、裾の短いスカート(パンツが見えそう……)を引っ張る。


「僕、さっさと着替えたいんですけど!?」

『M・O・Eが足りないのよ……』


 ……なに?

 モエ……?


マジカルMオーヴァーキルドOエネルギーE……つまり、この世の物理法則を超越した魔導士を屠り去るにたる空前絶後の超エネルギーが不足しているの』

「そ、それはどうすれば手に入るんですか?」

『それは』

「それは?」

『それは』


 僕は、ゴクリと唾を飲みこむ。

 先輩は、厳かに言った。


『周囲の人間が萌えさせることが出来れば手に入るわ!』


 ――んー?


『何のためにあなたの衣裳が無駄に扇情的に出来ていると思っているの? 何のためにあなたみたいな可愛い男の娘を選んだと思っているの? それはすべて、この世界の人類を萌えさせてM・O・Eを抽出する為よ!』


 おい、いまさらっと男の娘とか言いましたよね?


『本来ならダメージを受ける事で衣裳〝だけ〟が破け、観衆を煽り徐々に力を手に入れるはずだったのだけれど、もはやそんな時間はないわ――見なさい!』


 先輩に言われるまま見ると、金色の魔人と目が合った。


「あ」

「あ」


 彼は、内輪もめしているこちらを無視して、そこいらの人々を次々に幼女に変えている真っ最中だった。いつの間にかその手には黒い普通の魔法使いっぽい杖が握られている。たぶん、あのゴスロリおばさんが姿を変えたのだろうと考えて、自分の適応力に嫌気がさした。


「な、なにをやっているんですか!」

「いや。話が長いので、余の目的を完遂しようかと。余、これでも忙しいし」

『イエス、マスター。マスターは忙しいのです。ですからミギワ。おまえ、さっさとワタクシたちに負けて軍門に下りなさい。その……うへへへ、そこの少年君と一緒に調教して差し上げますから!』


 あ、このおばさんも変態だったのか。つくづく変態しかいねーなここ。


「ふん、まあいい。話が付いたのなら、こちらから行くぞ、マジカル☆ヴァージン!」


 仕切り直すように彼は言い放つと、高らかに杖を掲げた。

 瞬間、凄まじい光――黒いイナヅマという常軌を逸した代物が一帯を蹂躙する!


「うあわああああああああああああああああああああ!? ――って、あれ? 痛くない? 痛くないけど……うあわあああああああああああああああああああああああああああ!?」


 衝撃に僕は悲鳴を上げてその場にへたり込む。

 服が、服がはじけ飛んでいた!

 なんか虫食いみたいにびりびりとやぶれ、際どいところが見えそうで見えなくなっている!


『言ったでしょ、ダメージは服の破れに還元されるわ!』


 知らないよそんな事!


『でも、力が漲ってきたはずよ! M・O・Eがたまってきている――見なさい周囲の反応を!』

「……?」


 涙目で顔をあげると、学園のみんなが腕を振り上げ声を張り上げていた。


「がんばれー!」

「もっとだ、もっとみせろ!」

「ぬげ!」

「ええぞ!ええぞ!!」


 ……変態どもが盛り上がっていた。

 本当につくづく変態どもしか(ry

 しかし、それによって力が漲ってきているのは本当で――


『マジカル☆ヴァージン。確かにエネルギーはチャージされている。でも、次の一撃を喰らったらおしまいよ! だから、その前に切り札を斬るしかないわ!』


 き、切り札って?


『いいから、こう叫ぶのよ! キャスト――』

「さあ、マジカル☆ヴァージン! 忌まわしき魔導の王国からの追手よ! 余の全人類幼女化計画を遂行するために、ここで礎と為り果てよ!!」

「!?」


 僕たちの会話を遮る形で、マスター・コン=ロウ・リーとその魔導杖に凄まじい力が蓄積される!

 直撃すれば大変なことになることが、僕には容易く理解できた。

 僕は、僕は!


「しねぇえええええええ!!!」

「しんでたまるかぼけえええええええええええええええええええ!!」


 殺意全開の変態へと向かって、叫んだ!




――!!!」





 瞬間、僕の全身を再び光がつつむ!


「おおお!!」


 やじうまたちが歓喜の声を上げ、

 そして僕は、

 僕は――




「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」





 絹を裂くような悲鳴を上げた。

 全身の衣裳がはじけ飛んでいたのだ!

 つまり、全裸だ!


 ナンダコレー!!?



『悪に打ち勝つためには必要な犠牲よ! あなたの全裸に大衆が興奮して、最大規模のM・O・Eがチャージされたわ! さあ、死にたくなかったいまこそ打ち込むの――マジカルー!!』







「『マジカル☆デストロイ!!!』」







 僕たちの呪文に合わせ、光がすべてを蹂躙する。

 何もかもを、桃色の光が包み込んで――


◎◎


「見事だったぞマジカル☆ヴァージン! また会い見えよう!」


 変態は、そんな捨て台詞と共に去って行った。

 何もかも終わったグランドで、元の服装に戻った僕へ、先輩はこう言った。


「よくやったわね、カオルちゃん。これが勧善懲悪の物語。悪は必ず滅ぶのよ。でも、まあ……まだあいつ死んでいなから」


 これからも、よろしくね?


 彼女は、これ以上もなくチャーミングな笑顔でそう言った。


 僕は。


「い――いやだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」



 天高く響く絶叫を上げたのだった。

 僕の虚しい叫びは、蒼穹に吸い込まれて消えていった。


 かくして僕の、受難の学生ライフが幕を開けたのであった。







 魔法処女マジカル☆ヴァージン  未完!

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