#007 僕のステータス
寝る前に、罠を仕掛けるというので、おっさんについて採掘道の入口に行った。
鋼糸(のようなもの)を張り巡らせたり、鳴り物をつけたり、落とし穴を掘ったりした。
単純な罠ばかりだったけれど、そこに魔術的加工が加われば、ちょっとした魔物相手には十分らしい。
「見張りもいらんから寝るぞ」と言って、すぐに寝てしまう。
僕はたき火の跡(火はすでに消えている)を挟んでおっさんの反対側を寝床に選んだ。
特に不自然ではないと思う。というか、ぴったり隣に来られたら、普通に気味が悪いだろうし。
そして、メニューを開く
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
※※※(14)(Lv2)/無職
【ポイント残/総】
70/340
【ステータス】
HP:100
膂力:10
頑強:10
敏捷:10
精密:10
魔力:10
【称号】
《使徒(300)》
【能力】
・メニュー(0)
・ポイント再配分(0)
・欺瞞(50)
・契約魔術(100)
・攻撃知覚(50)
・動作最適化(50)
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
今更ながら、僕は自分の名前がわからないということを思い出した。
まぁいいや。
レベルが一つ上がったようだ。
ポイントの残りが20増えているのはそのせいだと思う。
スキルの《欺瞞》はうまく働いてくれているようで、特に違和感は無いと思う。
というか、欺瞞モードの時は、ほぼすべての情報が隠れている。
メニューは他人には見えないので、現状ではあまり役に立っていないが、今後、ギルドカード発行時なんかに役立ってくれるのだろう。
《契約魔術》の欄を見れば、やはり魔術とある。
契約は自然物でも顕現できるものでもないから、運用の枠に入るのだろう。おっさんに教わった通りだ。
これについては、どこまでのことができるかわからないが、かなり危険な印象を受ける。
免許が必要となっているではないか。
名前から察するに、奴隷契約なんかも締結できるだろうし、いざというとき以外は封じておこう。
正直、払い戻してしまいたいくらいだが、幼女神が選んだ魔術だし、きっと何か意味があるんだろうと思う。
使いどころさえ間違わなければ、かなり強力な切り札になるだろう。
《攻撃知覚》はゴブリンと戦った時に見えた赤い線のことで間違いなさそうだ。
ゴブリンには、動きが遅かったからあまり意味を感じなかったが、もっと素早い敵が現れたときには大いに役立ってくれるだろう。
《動作最適化》は採掘の時にすでに役に立っていた。
そうでなければ、つるはし初心者の僕が、あんなにスコンスコンと目的の場所に振り下ろせるとは思えない。
ゲームでいうところのセミオート操作みたいな感じだ。
ゴブリンとの戦闘の時の動きでもおそらく効果を発揮してくれたのだろう。
おかげで、危険はあまり感じなかった。
今後は《攻撃知覚》との合わせ技で、うまく立ち回るようにしよう。
次に、ポイントを支払えば取得できるスキルを見てみる。
《基礎魔法》は10ポイントで取得できるようだ。
今すぐに取るのは、記憶喪失によって能力を喪失している設定になっている以上気が進まないが、落ち着いたら必ず取得するようにしよう。
他にも、《蹴撃術》と《採掘》と《罠設置》が取得条件を満たしているようだ。
《蹴撃術》はゴブリンを蹴ったから。《採掘》と《罠設置》はおっさんを手伝ったからかな?
シンプルかつ明確だ。幼女神が言っていたように、この世界は生きやすいかもしれない。
いやいや、油断は禁物。油断せずに行こう。
おっさんは「記憶喪失で能力が下がる」と言った。
どうやらこの世界では、記憶を失うとポイントを失ったり、振り分けがリセットされたりするらしい。
そして、そのポイントの振り分けは、一般的には神殿で行うものだ。ともおっさんは言っていた。
僕の場合は自分でポイントの振り分けができるし、払い戻して再振り分けすることもできる。
今のところ、能力値にはポイントを振り分けていないので、僕の能力は概ね初期値であると言えるだろう。
いずれ、誰かに能力を確認されても、その異常なまでの能力値の低さの理由は記憶喪失にあると思ってもらえるはずだ。
ただし、ポイントの総数や残数にはしっかり《欺瞞》を使って、問題ない数字を示しておかなければならない。
実際に記憶は無くなっているし、その点に嘘は無い。
けれど、隠しておいた方がいいだろうことがあるのも事実。
だというのに、僕はこの世界の常識が欠如している。
この状況はうまく使って、この世界の常識を仕入れながら、ボロは見せずに、逸脱しないように能力を上げていこう。
最終的には魔王と戦う必要もあるかもしれない。
そうでなくとも魔物がいるのだ。
今回のゴブリンは、肩透かしを食らったような感じではあるが、相手は何の躊躇もなく命を取りに来ていた。
身を守る能力と術はなるべく早く手に入れたい。
武力も魔法も知識も、あって困るものではないのだ。
僕は眠るために目を閉じる。
異世界に来て初めての夜だ。
不安が無いといえば嘘になる。
けれど、僕はこの世界で生きていくのだ。
そして、それはそんなに悪いことでもない。そう思い始めている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます