【ろ】ロウバイ

 『ロウバイ』は私が住む群馬県では一月下旬あたりにあちらこちらで目にする花です。中国原産で、その名の通り蝋細工のような艶を持つ梅に似た姿ですね。北海道では見たことがありませんでした。

 別名は『唐梅からうめ』といいます。

 『ソシンロウバイ(素心蝋梅)』『マンゲツロウバイ(満月蝋梅)』『トウロウバイ(唐蝋梅)』などの栽培品種があるそうです。


 初めてこの花を見かけたのは、群馬県に引っ越して初めての年明けだったと思います。

 道端の垣根に不思議な艶を持つ黄色い花をみつけ、最初はボケの花かと思っていたのです。でも、色が特殊で面白い。

 そこで、夫と連れだって歩いているときにロウバイを指差して「こんな色のボケもあるのかな?」と、夫にたずねたところ、彼は「あれはロウバイだよ」と呆れていました。

 群馬県で生まれ育った彼にとっては、珍しくもなんともない花であり、『そんなことも知らないのか』とさぞ驚いたのでしょう。けれど、私にとっては初めて耳にする名前でしたから、『蝋の梅と書いてロウバイと読む』という漢字変換も脳内で出来ませんでしたよ。


 本州に引っ越してきた年は、北海道では見慣れない植物ばかり目にして驚きの連続でした。この花もそうですし、庭になる柑橘類も、カラスウリもわかりませんでした。一青窈の歌で有名なハナミズキの花だって、ろくに見たことがなかったです。


 北海道で見かけなかった理由は、寒さでそもそも生息しないというだけではなく、街中に住んでいたために目にする機会がなかったこと、園芸に縁がなかったこともあると思います。

 そんな無知な私が群馬県の片田舎に引っ越すことになり、日々の景色が別世界になりました。

 家々の垣根の向こうには見たことのない果実が見え、初めて知る花の姿があり、庭先だけではなく道端の野の花にも不思議な光景がいっぱいありました。

 そのせいで、まるで子どものように、よく夫に「あの実は何だ?」「この花はなんだ?」と訊ねていましたから、きっとよほど花を知らない人だと思われたでしょうね。


 そんな私ですが、ロウバイを見たとき、一目で気に入りました。

 なんだか、その花の丸みを帯びた形からでしょうか、不思議なことに静かに笑って通る人を見守る可愛らしいおばあさんのようだったんです。温もりに満ちて、見つめているだけでほっとしました。

 花言葉も優しいものが多く、『優しい心』『愛情』『慈しみ』『ゆかしさ』『慈愛』『先導』などいかにもです。

 群馬県に来て、雪がない冬を生まれて初めて経験しておりますが、それでも冷えるものは冷える。寒さが辛いのは変わりはない。そんな中、路傍に咲く花に「あぁ、春までもう少し頑張ろう」と励まされた気になります。


 それに色艶がいいんですよね。蝋というだけあってちょっとマットなんですが、淡い黄色が眩しすぎるわけでもなく、薄すぎるわけでもなく、第一、なんだか美味しそうに見えるんですよね……。


 なんでも香りもいいそうですね。今度目の前を通り過ぎることがあったら、失敬して鼻をくんかくんかさせてきたいと思います。


 ロウバイは1/2、1/5、1/8、1/11、1/19、1/21、1/27、12/30の誕生花だそうです。



 ロウバイの花言葉一覧:『先導』『先見』『優しい心』『慈しみ』『ゆかしさ』『愛情』『慈愛』『慈愛に満ちている人』


 シロバナロウバイの花言葉一覧:『同情』

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