【ぬ】ヌルデ

 『ヌルデ(白膠木)』というウルシ科の植物があります。

 一体、何故『ヌルデ』なんて不思議な名前にしたのかと思いますが、かつて幹を傷つけて汁を採取し、塗料として使ったことが由来とされているそうです。


 その別名を『カチノキ(勝の木)』というのは、聖徳太子が蘇我馬子と物部守屋の戦いで、ヌルデの木で仏像を作り、馬子の戦勝を祈願したとの伝承からだそうです。


 その伝承のせいか、花言葉には『信仰』というのがあります。

 他には『知的な』『華やか』『壮麗』なんてのもありますけれど、正直その花言葉よりは奥ゆかしい見た目をしていると思うのですが……。

 日本全域で見られるそうですが、目の前にあっても気づかないかもしれないなぁ。もしかして、とっくに出会っているのに、見過ごしているだけかもしれませんね。美しく紅葉する植物らしいので、目にはついているのかも。それでも、北海道にもあるとのことですが、まったく見覚えがないのです。


 このエッセイを書くにあたって調べたことで初めてこの植物の名前を知りましたが、きっかけがなんであれ、名前を知るということはその存在の輪郭をはっきりさせる作用があると思います。

 『木々』『樹木』『野の花』『雑草』そんな曖昧な言葉でくくられていたものが、名前を認識するだけで確固たる存在に変わるから不思議なものです。


 名前に縛られるといいますか、形作られるといいますか……。

 たとえば単に『雨』という名前の現象でも、『五月雨』や『時雨』『驟雨』『霧雨』など細かい名前がつくことで雨の様子も違って伝わりますものね。単なる『植物』で一緒くたにしていたものも、名前を持つことでイメージがくっきりと伝わり、それぞれが浮き彫りになるんですねぇ。いつかどこかでヌルデの姿を見出すことができるかもしれません。

 そういえば夢枕獏著『陰陽師』の中で、安倍晴明が「名は呪だ」と親友の源博雅に説いていました。言葉って不思議ですね。


 ヌルデは11/27の誕生花だそうです。



 ヌルデの花言葉一覧:『信仰』『知的な』『華やか』『壮麗』

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