【お】鬼百合

 『鬼百合』は、目の覚めるような鮮やかな橙色に黒い斑点がある、なんとも印象的な百合です。

 グアム東部、中国、朝鮮半島、日本に自生しています。日本では北海道から九州の平地から低山で普通に見られ、一説には中国からの渡来種と言われているそうです。

 別名を『天蓋百合てんがいゆり』といいます。聖書に出てくる白い百合とはまた違い、毒々しいまでの色合いですね。


 山形県にあった祖父母の自宅の庭には数々の植物が植えられていましたが、そこにも鬼百合はありました。庭木の手前にすっと立ちはだかるように咲いていたものです。

 キノコも虫もけばけばしい色のものほど毒性が強いというイメージを持っていたせいでしょうか、なんだか触れたら恐ろしいことが起こるのではないかとびくびくしたものです。

 鬼百合がまるで鬼の形相で「この庭の草花を手折ることは許さん」と守っているようでした。

 でもその鬼百合はたった一輪でした。なのに、今でも強烈にあの色を覚えています。


 それに、鬼百合は葉の付け根にはむかごと呼ばれる小さな球根のようなものをつけるのですが、これがまた怖かったのです。

 黒みを帯びた濃い紫っぽくて、妖しい丸薬か何かのようでした。なんだかそれを触ると皮膚がただれそうな毒々しい色に思えて、とても怖かったのを思い出します。

 もっとも、実際はそんなことはなく、むかごは地面に落ちると根を伸ばして新たな株となります。

 

 鬼百合の花言葉には『嫌悪』『荘厳』といったものがあります。

 その鮮烈な色合いゆえに何故か触れてはいけない存在ではないかと思った私には納得の花言葉です。

 けれど、その一方で『愉快』『華麗』『陽気』という花言葉もあるんですね。確かにあの橙色は南国を思わせる華やかさで、そんな明るい花言葉も似合いますね。


 幼い頃は恐ろしかった鬼百合ですが、触れるのが怖いということは、裏を返せば心のどこかで触れてみたかったという気持ちがあったということ。知らず知らずに魅せられていたけれど、気圧されたのですね。

 『純潔』という花言葉も持つ鬼百合は、その色で威嚇して触れようとする者から自分を守っているのかもしれませんね。ということは、あの一輪だけ咲いていた鬼百合は幼い頃の私から完全に勝利していたわけですなぁ。

 あの家は手放してしまいましたが、他の方がそのまま住んでいるはずです。今でも咲いているのでしょうか。もしも叶うなら、ちょっと庭を覗いてみたくなります。


 鬼百合は7/22、8/30、9/1、9/15、10/4の誕生花だそうです。



 鬼百合の花言葉一覧:『愉快』『純潔』『富と誇り』『嫌悪』『荘厳』『華麗』『賢者』『陽気』


 濃橙の鬼百合の花言葉一覧:『賢者』

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