花言葉あいうえお

【え】エリカ

　『エリカ』はバラ科 サクラ属の植物で、その別名を『ヒース』といいます。

　どうも私には『ヒース』という呼び名のほうが馴染み深く感じるようです。

　というのも、その名前を聞くとバーネットの小説『秘密の花園』を思い出すからなんです。

　『秘密の花園』の主人公は我がままで気難しい少女メアリー・レノックスでした。

　両親がコレラで急逝し、使用人も逃げた無人の屋敷に取り残されたところを発見されます。

　そのとき、メアリーは「呼んだのにどうして誰も来ないの」とかんしゃくを起こすのです。この少女は自分が孤独だということすら知らなかったのです。それは無人の屋敷に一人忘れ去られたからではありません。たとえ使用人に囲まれていても彼女は孤独だったのです。そのことが一番哀れでした。初めてこれを読んだときはまだ小学生でしたが、冒頭にして本当の孤独とはどんなものか突きつけられ、衝撃を受けたものでした。

　その後、メアリーはイギリスのヨークシャーに住む伯父クレーブンに引き取られる事になります。そこはムーアと呼ばれる湿地に囲まれた地でした。

　やがてメアリーはコマドリとお友達になったり、ディコンという少年と庭を蘇らせようと奮闘したりして健康を取り戻し、そしてついに従兄弟のコリンと出会うのです。

　彼らが住むムーアにはヒースが沢山生い茂っています。

　春になってヒースが目立ち始めた頃、クレーブンの屋敷では素敵な変化が起こっていくのです。

　荒涼とした大地に茂るヒースの花言葉は『孤独』や『謙遜』『休息』というひっそりしたもの。ですが、その一方で『博愛』『幸福な愛』『心地よい言葉』など希望に満ちたものもあります。

　つむじ曲がりのメアリーはひねくれて口も悪い少女でしたが、ヨークシャーでの生活で健康さと素直さを取り戻すうちに口から飛び出る言葉もだんだん可愛らしいものになっていきます。

　ヒースの花言葉のように『心地よい言葉』が彼女に幸せを連れて戻ってくるようでした。

　人間に必要なものって何でしょう。幸福って何でしょう。孤独とは、博愛とは？

　厳しい自然の中でも悠然と広がるヒースがそう問いかけているようです。

　エリカは1/5、1/6、1/25、2/6、3/1、3/12、8/5、8/8、9/17、11/25、12/5、12/23の誕生花だそうです。

　エリカの花言葉一覧：『孤独』『謙遜』『休息』『心地よい言葉』『博愛』『幸運』『裏切り』『良い言葉』『幸福な愛』

　白いエリカの花言葉一覧：『幸せな愛を』『幸福な愛』『孤独』『寂寞』『裏切り』『良い言葉』

　紫のエリカの花言葉一覧：『閑静』

　アワユキエリカの花言葉一覧：『協力』『無欲さ』『告白』

　ジャノメエリカの花言葉一覧：『愛らしい姫』『博愛』『幸運』『孤独』『裏切り』『優美』『希望』『寂しさ』

　スズランエリカの花言葉一覧：『幸せな愛を』『愛らしい妖精』

　クリスマスパレードの花言葉一覧：『博愛』『幸運』『孤独』『心地よい謙遜』

追補

　このエッセイを読んでくださった方からコメントをいただき、『エリカを「ヒース」と呼ばないことはないのですが、本来の意味からの拡大解釈なのです』と教えていただきました。

　イギリス人のご友人も「ヒースは地形で、植物はへザー(heather)だよ」と仰っていたとのことです。

　またひとつ学ぶことができました。情報をお寄せくださった方にお礼申し上げます。ありがとうございました。