【い】苺
『いちご』は分類としてはバラ科 オランダイチゴ属になります。
名前の語源ははっきりしておらず、古くは『本草和名』(918年頃)や『倭名類聚抄』(934年頃)に「以知古」とあるそうです。
その花は小さくて可憐なものですね。白い花弁が五枚あり、可愛らしいです。
私たちが食べる部分は果実ではなく、花托(花床とも)と呼ばれる部分なのだそうです。
もっとも、私の普段の生活では、いちごの花を見ることはほとんどありません。スーパーに並んでいるのを見るか、いちご狩りに行くか、それくらいしか『いちご』とは関わりのない生活です。
しかし、以前、同じ職場で仲が良かった女性は、いちごの花を見る暮らしをしていたようです。
彼女は私より一回り年上ですが、とても若々しく、安定した職業の夫を持ち、二人の子宝にも恵まれ、家族仲よく新築の家に住み……という絵に描いたような幸せそうな方でした。
いつも朗らかで、さっぱりとした性分。そしてよく笑う人で、大好きでした。
ある日、彼女のお宅に招待されたとき、庭の一角に案内してくれました。
庭には薔薇や様々な植物が植えられていて、すぐ隣を一筋の小川が流れています。そして、小川の清流に面した斜面がすべていちご畑になっていて、真っ赤ないちごが鈴なりになっていました。
思わず感嘆していると、彼女は私にボウルを差し出し、「夫が『好きなだけいちご狩りを楽しんでもらって』と言っていたの」と無邪気に微笑みました。彼女のその笑みが眩しかったのをよく覚えています。私は彼女の幸せが羨ましかったのです。
もちろん彼女には彼女なりの悩みや苦労があるのも知っていました。けれど、それを感じさせない明るさが幸せと重なって見えて、心底羨ましく思えたものです。ボウルいっぱいに摘んだ甘くて赤いいちごが、幸せの象徴のように思えました。
数年後に『いちご』の花言葉には『幸福な家庭』『誘惑』という意味があると知り、なんだか彼女を妬ましく思ったことを見透かされたようで、どきりとしたものです。
ですが花言葉は他にも『尊敬と愛』というのもあります。彼女が家族へ惜しみなく捧げる尊敬と愛が花を咲かせるのでしょう。
ところで、スロバキアの民話に『十二の月の贈り物』というものがあるのをご存知でしょうか。
主人公の少女は雪の降る寒い中、継母親子に意地悪をされて、あるはずのない季節外れのスミレやいちごやリンゴを取りに行かされるのです。
途方に暮れて彷徨う主人公はやがて大きな焚き火を見つけます。それを囲むのは十二の月の精たちだったのです。いちごのときは六月の精が力をふるい季節を変えて助けてくれます。
彼女との思い出のほかに、そのお話を幼い頃に読んでいたせいもあって、いちごには『手を伸ばしても届かないもの』とか『羨望』というイメージがあります。
でもね、隣の芝生は青いとも言いますから、『あなたは私を喜ばせる』という花言葉も持ついちごですが、食べてみたら意外と酸っぱかったりしてね。それとも『先見』という花言葉のように、あの彼女には『先見の明』があったのかなぁ。
苺は3/20、3/29、3/31、4/13、5/4、5/7、5/11、12/27の誕生花です。
ちなみに苺の葉になると 5/7だそうですよ。
苺の花言葉一覧:『尊敬と愛』『尊重と愛情』『幸福な家庭』『あなたは私を喜ばせる』『誘惑』『甘い香り』『先見』『無邪気』『清浄』『甘い乙女心』『成果を上げる』
苺の葉の花言葉一覧:『尊敬と愛』『誘惑』
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