在宅ホームレス

 会社をリストラされた。収入がなくなった俺は当然のごとく離婚された。

「このままでは行くところがない」

 俺が泣き言を言うと、元妻は、

「ベランダにテント張って住みな」

と言ってくれた。使っていいのはベランダだけ。トイレも、風呂も、炊事場も使用禁止だ。俺は一日の大半を公園で過ごし、アルミ缶を収集して生計を立てた。食事はコンビニの廃棄弁当である。夜だけ、家に入れてもらい、ベランダのテントで寝ていた。

 ある日、ベランダに侵入者があった。泥棒だ。俺はそいつと戦って撃退した。そいつは連続強盗犯だった。警察から感謝状と金一封をもらった。

「あんた、番犬の役には立つのね」

 元女房はペットフードをくれるようになった。

 警察にもらった金一封で宝くじを買った。逆転一発ホームランを狙ってのことだ。狙いは的中せず。無駄金を使ってしまった。

 ある時、俺は猛烈に腹が痛くなった。死にそうな痛みだ。

「救急車を呼んでくれ」

 俺は元妻に頼んだ。元妻は自分で車を運転して病院に俺を連れて行った。『動物病院』と看板には書かれていた。

 結局、俺は死んだ。生まれ変わって、可愛いねこになって家の中で元妻に飼われている。

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