第6話 ラブストリーオペラは突然に

「近親相姦!あんた兄弟姉妹で結婚してたの!」

「うらやましいでしょう。すでにみんなしてるわよ。でも以外と、あなたウブなのね。もとの旦那なんて、男同士で結婚してたのよ。」

「そうそう、私の妹も子供と結婚してたのよ。でも、そのうち、また、結婚自体もしなく毒女か寡女になりはてていくのかしらね。」

・・・・・

・・・・・

・・・・・


貴賓室の前のオープンテラスにテーブルとイスを増設した、ちょっとしたパーティー会場となっていた。


バーゲンセールにいって、まだ火がついているおばさまたちのような、女神たちは下世話なご近所話に花を咲かせていた。


そこで俺はメイド張りに動き女神ご機嫌を取り、俺と妻たちとともに閻魔コウキとシュレを紹介しまくっていた。何せ、神様を怒らせて、ご機嫌を損ねてもハネムーンに支障でかねないからだ。


ご機嫌よろしい女神たちは、半分うらやましいのと、刺激が欲しいのとで下世話な話を織り交ぜながら楽しんでいた。


天界では、できないような話まで聞こえてきた。


あの世と呼ばれる死後の世界は旅立ちの世界とも言う。それは、運命を全うして新たな世界へいける可能性も秘めている。


だからこそ、あらゆる者が運命を見定めて、出発できる地でもあるからである。


ある女神の話では、刺激を求め、下界に男として降り立ったとき結婚したのが、女として先におりたった兄神だった等々・・・


決められ定められた運命を前もって知ることのできる、この死後の世界は、下界の管理者であるといっても過言ではなかった。


しかし、だからと言って、むやみに神たちがそうそうと下界に降りることはなかったが、まれに、神が降りなくてはいけない場合があるときがある。


このときとばかりに、神々は刺激・・・・いや、救いを求めているために、下界に降りるのであった。


そのとき、たまたま、人間と降りたときに夫婦になったという話である。


運命を知って、それに乗じたというわけでは決してない。


たまたま、もとめられた神々が、人として降りる場所が、集中したからにほかならないからである。


女神たちに言わせれば、人間みたいに兄弟姉妹、親子でも、その美しい風貌と器量から、嫌悪感をわくかれることはなく、それ以上に神ゆえに愛が深く絆として結びついてしまう。


しかし、人間ではこのようにならない。


輪廻転生を繰り返した人間は二パターンにわかれる。


一つは、永遠の誓いを立てた、前世以前の伴侶を思い結婚できないケースと、もう一つは、前世以前に伴侶に裏切られたパターンである。


下界に輪廻転生者として戻る人間たちの多くは性別を変えないが、前世以前に伴侶に裏切られた者たちは、性別を変えて寿命を全うする中で、同性愛になってしまうこともあるのはいたしかたないのである。


天界の神たちであれば、男神同士でも女神同士でも新たな神をお創りになられるかもしれないが、下界に住まう人間同士では子をなすことさえできない。


下界に降りた神の魂を持った人間との結婚して宿したハーフゴットと呼ばれていた旧世界の英雄たちでさえ、同性でも子孫を残すのは難しかった。


そんな話で盛り上がっているところに、イリヤがイースに話を振った。


「イースさん。あのイケメンのハイエルフとはどうなったのかしら。」

「世界樹の守人ロイとは終わったわよ。」

「うまくいきそうって言ってたじゃない。」

「ハイエルフやドラゴンみたいな長生き種族は性欲が全くないのよね。」

「親切で優しだけじゃ・・・物足りないのよ。少し破天荒ぐらい刺激が欲しいのよ。」

「だったら、今度は下界に行って恋してきなさい。それも、みっともないぐらいの恋をね。」


イリヤがそういうとイースが少し残念そうな顔をした。


「今の下界は輪廻転生者ばかりで、半分、恋をあきらめた者が多いのよ。あなたの旦那みたいに、永遠の誓いで結ばれた男女のほとんどは、一生懸命生きて、人生を全うして、輪廻転生の輪を抜けちゃうでしょう。だからじゃないけど・・・今の下界は魅力がないのよね。」


それはそのはず、これから先の人々の運命が見れる死後の世界で、多くの恋愛マスターともいえる神々や女神たちがいるのは、余程、今の下界での恋愛事情が廃れているのかもしれない。


「次の恋は始まってるわよ。イース様。」


サキは悪い女ぶって、イリヤとイースの間に割り込んでケーキを渡した。


「うちの旦那様なんていかがですか。噛みつきたくなるような首筋にセクシーな目。そして、抱きしめられたくなるような腕・・・・・」


サキはおもむろに、イースの前にあったシャンパンを飲み干した。


その姿はほれぼれした飲みっぷりを見たイースは頬を染めた。


イリヤは俺の方を向き、腕を絡ませている、女神テラの悪女の色気ともいえるサキにないセクシーさに嫉妬しているようだ。


それはサキが妖艶な色気に対して、男の前だと、あざとい天然ともいえる色気を放つテラが少しうらやましいのであろう。


思わず俺は、話に加わってしまった。


「女神イース様もお力添えをいただけませんか。我らはこれから、神が集う世界を新たに作りたいを考えております。そのためにも、まず、視察すべく、さまざまな異世界を旅をする所存です。イース様のご加護を授けてはいただけませんか。」


テラは勝ち誇ったように娘神イースにいった。


「前回、アマミコが異世界に降りたときは、私の加護を得ていたのよ。そしたら、勇者どころが英雄として名を轟かしたのよ。それに、それ以前に、パパのもとで下界に降りたときは・・・。」


テラは自慢の息子のように俺に接していると思っていたが、まわりの女神たちの様子からも、テラはパトロンのような存在にうつっているようだ。


「ここにいる女神たちはもちろん、昨夜から、訪れた神々たちは、我らに何かしらのお力添えをいただけることをお約束していただけました。ありがたいことです。もし、恋にご不自由になっているなら、私に良い考えがあります。女神イースがもし、我らが創った世界が出来た時には、ふさわしい者をご紹介させてくださいませんか。」


「大丈夫よ、アマミコ。イースはあなたのことが好きになるから。ウフフ。」


なんというフラグをテラは立てやがる。そう思いながらイースを見るとまんざらでもないようだった。


それに、モテる旦那をもった、サキにイリヤも少し誇らしげになっている。さすが女神と聖女・・・余裕が違う。


などと、たわいもない会話をしていると、別の席で渋い紳士の閻魔コウキも婦神たちから逃げ出そうと大声で俺を呼んでいた。


「ちょっと来てくだされ、ケイスケ様。」


少し焦っているようであったので、テラにお辞儀をしながら、腕をほどきながら席をはずし、コウキのところに急いで向かった。


コウキは目の前にあった、グラスを握りしめた。コウキを囲んでいた婦神達は少し向きばつが悪そうに視線をそらしていた。


「どうしたおいうのです。コウキ殿。」

「やはり、地球は滅亡に向かいます。人間は次の一歩を踏み出さねばなりません。」


そのように、コウキが告げると信託と言わんばかりにサキが俺の横に立ち話を始めた。


神々にとっては、さまざまな異世界がある中で地球は一つの実験世界でもあった。


運命に縛られた人間たちへ、唯一、知恵と欲望を与え、神々が観察をしてきた。

それは神に似せ創られた人間が、それぞれ与えたの運命をどのように立ち向かい切り開くかを見極め、どのような環境で神に近づくかの実験のようなものだったとも言えた。



たった指先一つで世界を滅ぼせる兵器をもち、人間が神の名をかたり、破壊者・殺戮者になる世界。


魔法もなく、機械科学文明が発達したばかりに、世界が滅んでも人工知能が人の代りに歩き出す世界。


宇宙に人間がいかないと発展せず生き残れない世界。


悪魔さえ指をくわえていれば世界を手に入れられるつまらない世界。

・・・

地球での実験が終わった。もしくは、次の実験とも言わんばかりのつぶやきだった。


「小さいころケイスケ様のいた下界の村は、勇者の召喚地に選ばれていたんですね。他の異世界が地球に干渉していたことが婦神様からわかりました。・・・・本格的に、地球にいる優秀な人間達に限らず、異世界召喚や転生の実験に利用され始められているようです。」


俺は当然のようにコウキにいった。


「下界にいた、俺が思いつくぐらいだから、すでに、死後の世界のお偉いさんが絡んでいても不思議ではないだろう。だから、遠慮しないで始められるぞ。コウキ。それも、無粋なやり方で進めている管理者たちにな。」


「まずは、異世界から下界にいった勇者たちを、どんどん転移召喚しましょうか。」


「異世界の世界戦争が始めるぞ。コウキ。まずは、異世界にある別の死後の世界Bともいえる死後の世界との情報を得たほうが良いぞ。俺にしてもサキにしても、異世界にいたこともある。それに神々や女神たちは関係なく、他所の死後の世界にいくことができる。」


「しかし・・・本来なら、下界の人間の輪廻転生の輪の中でいける世界を選ぶのは、その世界の管轄権を持つ閻魔しかない。余程の適正や重々しいことがない限り、異世界に送ることはできぬはず・・・」


「その分野では異世界の方が発達しているんだよ。あの世も他の異世界や死後の世界から学ばないと、地球が滅ぶということなんだろう。」


「極論でいうと、ここの閻魔の中には、地球発展派と滅亡派がいるということですね。」


「深く考えるな、閻魔コウキ。すべて、今、地球に生きている人間次第なのだから。」


俺は諭すようにコウキの肩を抱えた。コウキは頭を抱えながら考え出した。


「獣っ娘が、人種差別なく地球に召喚出来て住めるようになれば、地球もこの死後の世界も滅びないかもな。まー獣っ娘は、地球人がDNA操作で作りそうだけどな。でも、死後の世界に獣っ娘が来るようになったら、刺激が増すぞ。なんせ、人間の運命の可能性という実験の幅が広くなるからな。神様たちも喜ぶかもな!」


「そうですね。異世界では獣っ娘は当たり前ですし・・・差別がなくなれば、獣っ娘に限らず、輪廻転生する世界の幅も広がり、死後の世界同士の結びつきも密になることでしょうな・・・転移転生や召喚に関する人間の可能性が広がることでしょう。」


そのとき女神テラはゆっくり席を立って、コウキと俺の間に割って入ってきた。


「地球が異世界と同様になったら、アンデッドと魔物、そして、廃墟に包まれた星になる可能もあるんだぞ。上手く、召喚や転生させる運命を見極める技術がなければな。でも、アマミコがいればそんなことにはならんがな。」


すべてを見透かしたように、テラはドスの聞いた低い声でコウキにささやいた。コウキは背筋に冷たい物を感じ取っていたが、紳士として対応するかの如く、軽く会釈をして立ち上がり、俺の横に椅子を用意して女神テラを座らせた。


その様子をみた婦神たちは、先ほどまでの少し暗くなった雰囲気から陽気な微笑みを浮かべた。それにともないコウキは大きく出た。


「女神さまよろしければ、私もケイスケのマネジャーのようにご一緒して旅に出てまいりたいと思います。その時のご様子を再現するようにオペラや演劇を企画しましょう。そのときには、女神さまたちも舞台に立てるようにご配慮させていただきます。ですから、旅の途中に花を添えるようにお力添えをいただけませんか。」


少し席の離れた女神達もコウキの大きな声に反応するように大きな拍手がおきた。


サキもコウキの声に反応して立ち上がった。

「今回のマリッジオペラも再演していただきたいですわ。新たに主演女神様たちでね。また、異世界にいった勇者が戻られる話を、女神達がヒロインを演じる英雄譚になるなんて聞いた男神はこぞって主演になりたがるでしょう。まさに勇者は女神のアクセサリーの如くに。」


女神たちは目をうっとりとしながら拍手した。


そして、ある女神が俺に近づいた。


「ケイスケ様って聖女サキと女神イリヤにとってのイメージプランナーでもあるんでしょう。女神イリヤとのオペラだけではなく。もし、私がかつてある勇者と恋に落ちた話を演劇にすることも可能ですか。よかったら、私のイメージプランナーになってくださいませんか。」


一人の女神をかわきりに次々と女神たちは駆け寄ってきた。俺は、立ち上がり、指をさした。


「そういう話でしたらコウキにしてください。コウキはマネージャーとして異世界の英雄譚を演劇やオペラの企画を立てるでしょう。私はそれにあった企画を、ご提案させていただきます。しかし、あくまでも、私は妻たちの喜ぶ為にやっていることにすぎません。ご要望を満たすかわかりませんが、ご協力させていただきます。」


拍手喝采とともに、一気にパーティー会場だったオープンテラスが、すべての女神たちラブストーリーオペラ発表会のようになってしまった。それにより、まさに、女神たちとのギブアンドテイクが出来上がった。

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