第4話 死後の世界でマリッジオペラ

「おーい!ブルーのシュレさん?これはどういうこと!それにイエローのシュレさんは口の周りに生クリームがついてるよ‼ピンクのシュレは・・・もーなんなのよ。」



イリヤはマリッジブルーなのかイライラが止まらないみたいだ。原因はさほど難しくなかった。異世界特有の便利な魔法バックからハイブリッド進化した、しゃべって魔法も使える、便利な人型魔法バック式神のシュレにある。


俺はシュレに閻魔コウキ殿が用意していた晩餐会を急遽変更して、結婚式を開催すると伝えた為、シュレは能力を活用してパンフレットを差し替えていたが、いろいろと間違った方向に行っていた。


そんなイリヤとシュレを面白そうに見物するように眺てるサキがいる。


イライラしているイリヤの気持ちを和らげる為にも俺は的確に指示をすることにした。


「シュレ、現状報告の前に、今、お前は何人に分身・・・分裂してるんだ。」


ピンクシュレは敬礼した。

「はい!隊長!4名?5名?6名ぐらいですかね?」

「わからんなら答えるな!ピンク!しょうがない。レッド答えろ!」


レッドのシュレはお辞儀をして

「ご主人様、只今、シュレは7人にわかれ作業を行っております。まだ、環境が整いきらないうちに作業を行った為不具合が発生しました。反省しております。これ以上ご迷惑なら1個体に戻りますが。」


サキが俺の前に立ち、レッドに指示をした。

「戻らなくてもよい。早急に、各個体に連絡指示系統を整えなさい。それに、今ここにいるシュレ達の個性を把握できたしね。とりあえず、現状確認を行いたいので残り3体をすぐにこちらに向かわせておくれ。」


さすがサキである。現世にいたころはよくサキに手玉にとられたように動かされたことを思い出した。


それにシュレたちの個性は、俺にもなんとなくわかった。分裂前のシュレは完璧なメイドで演技力抜群な妹を演じていた。



しかし、分裂したレッド以外のシュレはすこしだけ、痛い子の集まりにみたいな感じがした。


レッドは優等生な委員長タイプのまとめ役。


ピンクはドジっこの天然ちゃん。思わずかまってしまわずにはいられない。


イエローは猪突猛進で甘いものには目がなさそう。花より団子タイプ。


ブルーは典型的な女友達タイプでなーなーでなんでも話せる、おしゃべりなやつ。


そんなことを考えていると残りの3人も戻ってきた。おいおいブラックにホワイトそしてグリーンかよ。パープルはいないのかよなんてつぶやきそうになったが、シュレ達は体が光って、元のメイド服のシュレひとりに戻ってしまった。


そしてシュレは現状報告を話しはじめた。だが、俺はブラックとホワイト、グリーンの性格が気になってしまったのは、ここだけの話である。


「サキ様、お見苦しい対応で申し訳ございませんでした。ご主人様ご報告させていただきます。会場の件からお話しいたします。・・・」




5分後・・・・報告が終わった。



「やってしまったなシュレ。」

「申し訳ございません。ご主人様。分裂を100体いや、1000体にわかれ、対応します。」


「余計トラブルが大きくなる予感しかせん。後は任せろ。お前は、最後に余興で歌でも歌ってくれ。後は何もしないで、受付のお手伝いな!」

「いつでもおやさしいです。おやさしいご主人様・・・でも、何かアイデアがあるのですか。」


「ここは魔法が使えるだろ。なんとかなるさ。俺はサキとイリヤの笑顔が見たいだけだからな。それにシュレの笑顔もな!」


まず、仕切り直しに俺は変更するプランをサキとイリヤそれにシュレに話す。


会場は、変更前のこの屋敷とホワイトシュレが押さえてきた死後の世界にある、唯一のオペラハウスの2会場でやる。移動用の転移魔法陣や転移魔法扉を使えば問題ない。それに晩餐会を当初予定していたので、舞踏会もこの洋館には、ある別会場の準備も整っているのでこれも問題ない。


俺はとんでもないプランを話すのだった。


「聖女サキ様、舞踊や舞は得意ですよね。それに、巫女を娘のモエが継がせた後、ダンスをやっていましたよね。俺も社交ダンスつきあいましたしね。それに女神イリヤ様というぐらいですから歌はもちろん演技もできますよね。」


俺はとびっきりの笑顔で、オペラハウスで俺たちの出会いから魔王を倒し、そして転生して死んで、死後の世界で結婚をするというオペラをすると話した。


すると意外や意外、サキとイリヤはノリノリになってしまった。


「いいね。さすが旦那様。そうだオペラ会場でまず前座として舞を披露しましょう。」


「私も、オペラの戯曲のうち数曲をアカペラでオリジナル歌詞を披露しますわ。」


「サキ様、アカペラと言わずオーケストラは用意しております。何ならジャズ経験者もいますから、2次会の舞踏会でオリジナルセッション披露することも可能でございます。」


「マリッジオペラの後は社交ダンス。ウフフ。久しぶりに旦那様と情熱のタンゴが踊れますわね。」


「もちろん、あらゆるダンスが踊れるように、ミキシングはもちろん用意されております。それに、立食パーティーようにと、我の一部のイエローがケーキバイキングも用意しておきましたからね。また、仮面舞踏会ならではのチークタイムにフィーバーハッスルまで用意できます。このDJシュレにまかせてください。」


「シュレ、VIPルームは7つ用意しているのよね。いつなんどき、神様や女神さまもお忍びで見えるようなら、急遽、レストルームやロイヤルスイートの用意も忘れないでよ。粗相がないようにしないと。」


サキとイリヤは目を光らしながら

「今夜は眠らせないわよ。眠れない夜にして見せるわ。」


俺は二人を抱きしめて耳元で囁いた。

「忘れない夜にしてやるよ。」


ストーリーは決まった。裏で閻魔コウキに、これから行うすべてを話して、裏で暗躍するように頼んだ。


そして、死後の世界で俺たちは目くるめくる夜を迎えた。


あっという間に、3次会まで終えて、あわただしくも爽快な時間を過ごし、踊りつかれて部屋に雪崩こんだ4人だった。


驚いたことは、シュレが2次会の会場で新人アイドルばりのコスチュームで7人で踊って歌った余興が大いに盛り上がた。そして、熱狂的な男神様たちからの指示でファンクラブまでその夜のうちにできてしまって、追っかけから逃げるように俺たちの部屋に逃げこんだことだ。


翌朝というかオールで過ごしたあと、貴賓室の前にある庭先でブランチをとらせていただいた時に、閻魔コウキ殿が手を振って合流した。


コウキは開口一番抱きついてきた。


「ミコト様~やりましたな。死後の世界もかわりますぞ~。」

「コウキ殿。お酒臭いぞ。それにタバコのにおいが服に染みつきます。まずは顔を洗ってきてください。それにケイスケと呼んでください。俺はこの名前が気に入ってるんですから。」


「何をこの一大事に、コウキは寝ている間も惜しかったんですぞ。ケイスケ様の指示通りに動いたら、この死後の世界の未来が見えたんですからね。」


コウキは涙ながらに切々と俺たちが座っているテーブルの横に土下座の状態で泣きながら話した。


俺には思惑通りことが運んだと確信した。


俺の思惑とはズバリ、死後の世界自体をまた別に作るというアイデアだった。

簡単に言えば、死後の世界の別のモデルケースをつくるということだ。


悪魔からみれば人間はおろかな生き物と言われるかもしれない。


かつて人間は、神から神の分身としてあらゆる可能性を見出され誕生した。

しかし、神はあらゆる可能性をもとめた結果、人間は無知過ぎたのである。


悪魔もしくは神か、それとも精霊なのか人間に知恵を与えた。

男はたくましさを、女は恥じらいを・・・


そして、さまざまな知恵と欲望が生まれた。


その結果、厄災も招く。神の付け入るスキを見つけた道化師ともいえる悪魔や邪神たちは、欲望の限りを人間に教えた。神落としの所業ともいえる背徳の限りを・・・人間に・・・


厄災は起こるべく起きる。人々は死に絶えた。一部の選ばれた人間だけを残して・・・それでも神々は、人間やすべての生き物の可能性を信じた。


そして、人々はより繁栄するために新たな大地に散らばねばならなかった。

しかし、その土地から離れたくない者達が、王にささやいた。

新な技術や知恵を用いて天まで届く塔をつくり、人間が各地に散るのを免れようと考えたのだ。


そして、ある者は、神様のいる天界まで届く塔だといった。


その言葉を信じた王は、人間の慢心を神に見せつける結果となり、厄災をもたらした。


人々は、神が降臨してこの塔を見て「人間は言葉が同じなため、このようなことを始めた。人々の言語を乱し、通じない違う言葉を話させるようにしよう」と言った。


このため、人間たちは混乱し、塔の建設をやめ、世界各地へ散らばっていった。


そして、その人々を見守るように神々も各地に降臨しはじめた。当初は悪魔達は身を潜めていたが、時代とともに現れて、神の逆鱗に触れ厄災をもたらした。そのたびに、神々は救世主たる者をもたらした。


そして、地上ではインターネットや電子端末を用いて、リアルタイムに人々はある種の共通の意思疎通ができるようになった。そして、またある者が、最悪の厄災をもたらす可能性がでてきた。


時代は移り、神の名をかたる悪魔か人間かそれとも落ちぶれた神なのか・・・地球は戦略級の兵器を持ち破滅への道を歩いている。いつの時代も厄災を招く者がいる。


しかし、反対に厄災から生き残る、選ばれた人間がいる。中には悪魔が混じっているかもしれない。だから、またも厄災を招くかもしれない。でも、神は、弱気の人間の中に、新たなる可能性と神自身を見出しているのかもしれない。



閻魔コウキは俺にもう一度訪ねた。

「ケイスケ様。死後の世界に来た人間は、その人間の生きざまによって、記憶を搾取され、運命に見合った世界に向かいます。ある者は、地獄。ある者は天界など・・・そして同じ世界へ輪廻転生する者。そして、神になられる方もいるんです・・・」


俺はコウキをたたせ、対面の椅子に座らせた。


「わかってるよ。それ以上言うな。俺たちは下界に降りればある程度、縛られた運命というストーリーの中で生きなければならんからな。そして、死神が迎えに来てくれるんだ。」


「閻魔としての使命は、死んだ人間を評価して、新たな世界へ送る者ることにより、できるだけ人間の可能性を引き出したいと願っております。」


「だけど笑えるだろう。俺の場合。本当は雷が落ちて家が火事になり焼死する予定が、落雷より前に、風呂場でこけて水没して溺れて死んで。家が落雷で燃えて俺の体まで消し炭になるんだから。みっともないだろ。」


閻魔は少し笑みを浮かべた。


「死後の世界の仕組みをしっているから、死の運命を変えたおかげで、転生する機会を得たのでしょう。でなければ、神々が集まるあらたな別世界を創るなんて、おもいつかないでしょうが。でもまずは、死後の世界の別のモデルケースをつくるさんだんを神々が望まれました。」


俺たちは顔を見合わせて微笑んだ。


「下界と死後の世界の記憶をもって、あらたに下界に降りれる者を増えれば、さらに人間の可能性も増えるはずだからね。俺たちのように明るく死後の世界を楽しむ者も出てくるかもしれないな。」


「旦那様、輪廻転生で下界に戻った人でも、生前の記憶がなくても、頭がいい者もいます。それは、前世での経験を得ているからなのですよ。頭が悪い人間は、ささやく者の力による者達の力ですからね。だから、あえてそのささやく者達をも、味方にするような采配に導くモデルケースを作るべきなんですからね。」


「サキ様の言う通りですわ。もし、悪魔が神のしもべになる異世界を創り、そこへ旅立つネオ死後の世界からの人々・・・ドラマティックですわ。神々も興味深々になりますよ絶対に。ああなんて・・・刺激的。」


そんな話で盛り上がっていると、一人の仮面をした女神が現れた。


「初めまして、今は名前を言えませんが・・・あることを司る女神なんですが、この世界で数時間前に行われたマリッジオペラの方々ではないでしょうか?」


イリヤは仮面の女神を見るとイヤイヤそうにしかめっ面をした。


「イース何しにきたのよ。こんなところに。私を見捨てたくせに、よくも現れたわね。」


「私はあの高名な女神イース様とはちがいますわ。そうだ、みんなさん。来て頂戴。ここよ。おりましてよ。」


焦ったように、話題をそらすかのように一人でしゃべったかのように見えたが、数十人の女神が急に現れた。そして、口火を切ったように、サキとイリヤを取り囲んだ。


「ファンになりました。サキ様、イリヤ様・・・昨日のドレスはどこで作られました。・・・二次会の時つけていた、アクセサリーてオリジナルなんですか・・・」


黄色い声が響きわたる。そして、プレゼントの花束や手紙などなど・・・まるで、宝○歌劇団のスターのような感じだった。


閻魔コウキは警備員のように仲裁に入っていた。


「すいません。ここは私の屋敷です。プライベート空間ですからアポイントを取ってください。女神さま。ご協力お願いします。・・・」


思わず俺は横の貴賓室に二人をエスコートした。そして女神たちに手を差しのべた。


「コウキ殿。よろしければ、昨夜お借りした、舞踏会場をお借りできますか。そうだ、シュレ、まだ、この世界でお出ししていない洋菓子を出しておいてくれ。女神さまにも味わっていただこう。それに、俺が作っていた何点かの洋服にドレスとアクセサリー用意しておいてくれよ。」


女神たちは互いに飛び上がり喜んでいた。

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