第2話 死後の世界でプロポーズ

「うけるー!マジうけるんですけど~。」


俺の死に方で、死後の世界で腹を抱えて転げながら笑っている。


どうやら俺の魂と同居させた女神様らしい。


そして、いじらしく死後の世界で三つ指を立てて待っていたのが、若かりし頃の妻だった。


「おまえ様気にしないでくださいませ。あの死に方は私の方で用意したものです。万が一に、男気あふれたお前様の死に方を見せて、女神イリヤのお眼鏡に叶うなどがあってわならぬとおもいまして、あえて、風呂場で石鹸ですっころんで頭をうち、気絶ついでに溺死していただきました。ある意味、作戦といっても過言でありません。体の方は落雷と火事によって火葬しときました。」


幼妻サキの仕業とはいえ、死後の世界を露出狂張りのスッポンポン状態で、なおかつ、15歳ぐらいの妻と出会った当時容姿の姿をさらすと、新たな扉を開きそうに俺がいた。


いかんいかん、目の前に妻が丁重に迎えてくれたではないか・・・でも、妻の上目づかいで例のものを見ているかもしれん。


取り合えず、堂々と、そしてエレガントに優しく妻をエスコートしなければ・・・などと考えてると、すかさず女神イリヤが絆創膏らしきものを出した。


「死んでも、絆創膏で、頭に貼ってくか。どれどれ、以外にもお主はその年齢でたいしたものだ。なかなかどうして、見かけにはよらんものだな。気に入ったぞ。和私がお前様にあった服を用意してやろうではないか。」


女神はそういうと、某ハードゲイのような皮の短パンに皮のランニングを一瞬で俺の纏わせた。


しかし、妻サキはいきなり女神イリヤの胸ぐらをつかみ、口を女神の耳元にもっていき何かをささやいた。


女神イリヤは顔が真っ青に変わった。一瞬サキの顔を見て、二・三歩下がり45度にお辞儀をして謝り始めた。


「調子に乗りすぎました。サキお嬢様。この格好はないですよね。すいませんでした。てっきり、ほかの女神が色気づかないように、私もこれないわー的な服を用意した次第です。」


「ですよね。女神イリヤ様。フフフ。でも、夜の甘い時間帯なら嫌いじゃないですわ。オホホ。」


俺はなんとなく、長年、サキの体に封印されてきた女神イリヤと、新たな主従関係が生まれていたことに気付いてしまった。この疑問を早く解決したくて、調子を合わせようと、言葉を選んだ。


「いいんだサキ、俺はお前に相応しくありさえすればいいんだ。もし、女神様からお恵みであれば、断る理由が俺にはないよ。でも、これがこの世界のトレンドなら、レザーカラーはブラックよりブラウンの方が俺には似合うと思うんだ。どうかなサキ。」


「もう、お前様ったら。ウフフ。私はなんなら、ホワイトも好きよ。でも、ブラウンならグラディエイターみたいにシューズと合わせたらクールかも。でもホワイトブーツとスカーフ、それにサングラスをあしらったらどこぞやの国のイケメンスターに間違われちゃうかもね。イヤーン。想像しただけで夜もねむれないわ。」


「今晩は眠らせないよサキ。」


女神イリヤは唾を吐き捨てながらも、うらやましそうにしていた。

サキはそんな姿を見て、俺に話しかけた。


「女神イリヤ様も私に封印していたせいで、お前様が大好きなんですよ。」


女神イリヤは慌てたように、両腕をバタバタさせながら口を鯉のようにあふあふした。

「ないわー、ないない。やぱっりーないわー。人の旦那だし。女神の不倫なんてないわー。」


「神話のどこぞの女神たちはこぞって不倫の一つや二つ、三つどころではないでしょ。いやいや、してない女神はいないんじゃないか。そうですわよね、女神イリヤ様。ましてや、わたしの体に封印している時でさえ、夜になると・・・・」


「あーあーあーあー。聞こえない。聞こえない。何のことだか。知らない。お願いだから、それ以上は言わないで~。許してーサキお嬢様。」


この会話で、俺は、妻との夫婦円満だったのは女神が妻サキの中にいて、たまにいれかわっていたおかげだったことに気付かされた。しかし、妻も俺も死後の世界というものには、ふなれだったので状況を女神イリヤに確認することにした。


「女神イリヤ様。取り合えず、今の状況を教えていただけませんか。」


「もう、ケイスケったら、女神や様をつけないでイリヤと呼んでいいわよ。あんたとは何十年つきあいあるんだから。」


イリヤは少しデレながらも答えた。すかさずサキがイリヤに釘そさした。

「お前様をあんた呼ばわりするなんてね、いい度胸ですわ。夜のイリヤ様は・・・」


「あーあーあーあー。ケイスケ様ですよね。私が間違ってました。今度からはケイスケ様って呼んでもよろしいですか。」


女神って土下座するものだとは、この時まで想像しなかった俺がいたが、サキはイリヤのある種の癖まで知り尽くしているようであった。


ニコニコしながら先に来ていたサキに、今の状況を説明してもらった。


どうやら、死神という者達が魂を死後の世界に連れてきてくれるらしく、今後の私たちの魂をどうなるか、選別中の段階とのことらしい。


イリヤはすかさず割り込んで説明を補足した。


「生きてるときに説明したと思うけど、本来、サキ様は輪廻転生の輪から外れ天界人になられるお方でしたが、そんな尊きお命と引き換えに、自らの寿命を削ってケイスケ様の寿命をお知りになられ、なおかつ、ケイスケ様と新たなる世界をお創りになられるなんて凄すぎます。」


「言い過ぎよ。イリヤ様ったら。私も寿命が近くなって、心配されたイリヤ様からのご神託があったからこそ、お前様の亡くなられる運命の日を知りえました。私の命は生きてる時もお前様の物であり、お前様が心残りがないようにするのは、妻の務めであります。」


俺はサキが命の炎を燃やして異世界にいった、弟と亡くなった息子にもう一度会わしてもらたことで、もし、次の人生でサキに廻り合うことがあればすべて捧げる決意をしていた。


だからこそ、サキだけが輪廻転生の輪から外れるという話を聞いたとき、天界人が来たくなるような異世界を創りたいと考えたのだ。ましてや、俺自身を輪廻転生の輪から外し、異世界を創れるような身分にするような特権を秘策として与えてくれたイリヤ様には感謝してもし尽くせないでいた。


「でも、いいのかい本当に天界人にならなくても・・・ていうかすでに天界人なんだけど天界で過ごさなくてもホントにいいのか?」


イリヤは不思議そうな顔をしながら俺とサキの顔を覗き込んだ。


逆に俺とサキはイリヤの肩に手を乗せた。

「だって天界ってつまらなくて、イリヤ様も地球に遊びに来たんですよね。」


イリヤは目を泳がせながらすっとぼけたのようにアハアハと笑っていた。


話題を変えるかのようにイリヤは真剣に話し始めた。


「現代の地球には刺激がなくなったのよ。だから、神たちは他の異世界にいってしまったのよ。」


「でも、それでも、日本には多くの神様たちが、今でもお住みになられていますわよ。」


「前にも話したけど、そのうちに、日本は、古代に消えた大陸のように消えてしまうわよ。そして、日本だけ異世界に移る可能性があるのよ。そのあと、地球の文明は亡くなってしまうのよ。神一人のいない世界なんて無意味だからね。」


俺は死後の世界を感じているせいかもう一度イリヤに詳しく説明をもとめた。


「神様は自らのお姿を真似て人類を創ったのは、神が人間に新たなる可能性を求めたからなんですよね。」


「人間同士の交流は、新たな感情や欲望、そして新たなる物語を作る。古代の神たちは、人間の営みを見て、感じながら神たちは一喜一憂していた。そして、時には手を貸したり、救世主を導いたものだ。しかし、現代の地球には、人間を爆弾や武器にするような悪い悪魔を崇拝すものまでいる。地球における人間の可能性が見えてしまったのじゃよ。」


「でも、日本はまだ神様たちを刺激を満たせる可能性があるんですよね。イリヤ様。」


「日本には大陸にはないサブカルチャーが存在して、ハイテクとリンクしながら、新たなる人間の可能性を導く可能性があるのだからな。例えばライノベやアニメの世界では、あるあるな人工知能を搭載したロボットやアンドロイドといった、新人類に導く、新たなる人間同士のコミュニティのあり方を彷彿させるからな。」


俺はイリヤの発言からたしかな確信を得ていた。


「イリヤ様やはり、私たちは神様が集うような異世界を創りましょう。」

サキも大きく頷きながらも俺を見つめながら微笑んだ。


「まずは、妻である私がときめくような世界を創りましょう。そして、イリヤ様がわたしたちに嫉妬してしまうような世界をね。」


イリヤもサキにほだされたように負けじと言葉を返した。


「サキ様もあまい考えを持たないでくださいね。おいおい話をしていきますが、地球でさえ、死神たちに運命と魂を管理されている状態ですからね。ちなみに、神たち戯れ一つで地球が消滅したり、たの異星人に侵略されることもできるんだぞ。もしくは、地球の戦略武器で自滅させることなんて、造作もないことなんです。だから多くの神が住まうところは、滅亡の危険がないどころか、さまざまな物語も生まれるんです。」


俺はイリヤとサキをなだめながらも、二人の手を握って語った。


「女神が恋に落ちる異世界。神様が恋したくなるよう町を創ろうよ。だから、まずは俺たちは異世界にハネムーンしないとね。異世界観光しようよ。泣いて笑ってけんかをして恋に落ちようよ。出会った当時のあのころのように。サキはもちろん。女神のイリヤ様が恋に落ちちゃうような、ハネムーン旅行をしましょう。」


イリヤは恥ずかしそうに、俺の顔を見ながら頬を赤らめ、そしてサキの顔を見た。

「サキ様、これからも私も同伴してもよろしいのですか。せっかくようやく二人でいられるのに。」


サキは頷きながらイリヤの母のような面影で見つめた。

「お前様に愛されたのは、イリヤ様と私たち二人で一人ですわよ。今更、逃がしませぬわ。オホホ。」


イリヤは大粒の涙が止まらなくなっていた。すかさず、俺はイリヤを胸に抱きしめた。そして、サキの頭を撫でて大きく頷いた。


「あまり女神を泣かせるなよ。サキ。」

「お前様こそ、妻の前で堂々と口説かないでおくんなまし。」


少し腫れぼったいような真っ赤な瞳でイリヤは、今いる死後の世界を案内するといった。


イリヤにしてもサキにしても、俺の知らないことを知っている。二人に俺はもどかしさをかんじていたので思わず片膝をたてながら、左手を胸に添え、右手を大きく広げながら言ってしまった。


「ありがとうございます。イリヤ様。そして、新たな世界に導いてくれたサキ様。何も知らないとはいえ、エスコートの一つもできない俺は情けないです。だからとは言いませんが。俺はサキ様とイリヤ様にとっての自慢できる男になることを誓います。そばにいるだけでお二人にとって、ステータスになるアクセサリーのような存在なれというのであれば努力いたします。いつ久しい関係であらんように。改めて二人にプロポーズをさせてください。」


「さすが愛したお前様ですは、ハネムーン始める瞬間にプロポーズをまたしていただけるなんて。ますます、恋に溺れそうですわ。イリヤ様にとっては、初めてのプロポーズかもしれませんが、あなたが愛する男はこんなものではないですわよ。」


「サキ様・・・すでに女神が、恋にときめくハネムーンが始まりましたわ。幸せを聞くのと感じるのは、これほど違うのか改めてわかりました。この恋に女神の命をかけてみたくなりましたわ。」


俺も初めて会話したギャルみたいな女神が淑女のような聖女に変わったように感じていた。


「女神イリヤ様が輝いてますよ。聖女サキ様もすでに女神様のように神々しいよ。二人とも愛しています。」


そして、俺は片膝のまま、二人の手の甲に交互に口づけをした。そして、二人の真ん中にはいり、腕組をしながら、死後の世界を進みはじめた。

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