第十七回 和弓を描く時の注意点。(その二)

 先日「射法八節」を「弓道八節」と記述した上、更には射法八節の説明自体が間違っていた大馬鹿者の作者でございます。


 いやもう、それ以来反省すること頻りでありまして、いくら好きな分野の話であっても調べる手間を惜しんで安易に書いてしまうと、間違ったことを平気で言ってしまうものです。

 私が気がついた点は極力修正を入れておりますが、読んでいて気がついた点がありましたら容赦なくご指摘下さい。

 この作者はメンタルが強靭ですから、多少のことでは挫けません。  


 *


 さて、弓を引く絵を見ていると、引き方自体はさほどおかしくはないのですが、全体的に見て違和感を受けることがあります。

 そして、よくよく見ると大抵の場合は「弓の長さと弦の長さのバランスが崩れている」ために、あり得ない絵になっています。特に、

「弦の長さが長すぎる」

「矢が不自然に長い」

 ものをよく見かけます。


 それでは、適切な長さにするためにはどうすればよいのでしょうか。


 < 弦の長さ >


 今回も言葉だけで説明すると話が分かりにくいので、例のごとく少々無理をしました。

 以下、ABCを結ぶ線が弓、ADCを結ぶ線が弦だと考えてください。

 また、弓と弦は「ゴムのような伸縮する素材で作られているわけではない」こととします。


 「基本図形」


   A 

   ■〇

  ■ 〇

 B■ 〇D

  ■ 〇

   ■〇

   C


 この図の通り、弦の長さADCが弓の長さABCを超えることは決してありません。

 また、Bの部分を左手で握り、Dの弦を引いたとして、その引いた長さBDが、BAとADを足した長さを超えることはありません。


 具体的には、


 「図一」


   A          A 

   ■〇         ■〇

  ■ 〇        ■  〇

 B■ 〇D  →  B■    〇D

  ■ 〇        ■  〇

   ■〇         ■〇

   C          C


 となります。これが以下のような状態になっている場合が見られるのです


 「図二」


   A          A 

   ■〇         ■〇〇

  ■ 〇        ■   〇〇

 B■ 〇D  →  B■      〇D

  ■ 〇        ■   〇〇

   ■〇         ■〇〇

   C          C


 図二は弦自体が伸びてしまって、不自然な状態になっています。


 なお、実際には図一も■や〇を対角線上に配置したために、弓と弦が伸びてしまっていますが、他にやりようが思いつかなかったのでご容赦ください。


 さらに、長い弓の場合には、


 「図三」


   A           A

   ■〇          ■〇

  ■ 〇         ■  〇

  ■ 〇        ■    〇

 B■ 〇D  →  B■      〇D  

  ■ 〇        ■    〇

  ■ 〇         ■  〇

   ■〇          ■〇 

   C           C


 となります。要するに、弓を引く際の矢の長さBDは、長い弓であればあるほど長くなるのです。


 和弓は世界の中でも長いほうで有名な弓ですから、BDは長めになります。弦を引く右拳は右肩根の上ぐらいの位置に描くのが適切なのです。

 逆に、短い弓の場合は殆どが顔のところまでしか引きません。そのほうが後方から矢の向きを目で確認できますから、合理的ではあります。


 < 矢の長さ >


 弓道における矢の長さは、真っ直ぐ左手を伸ばした時の喉から左指先端までの長さに、親指を除く左手指四本の幅を足したものが標準です。引き方により幅は多少変動するので、自分で判断して加減します。

 つまり、BDの幅は腕の長さに左右されることになりますから、身長が高くて腕の長い人は出来るだけ長い弓を使用したほうが無理がないことになります。そのため和弓には長さの異なる弓が存在するのです。


 また、会で十分に引き込んだ時の矢は、やじりの部分が弓から僅かに前に顔を出しているぐらいが適正です。

 最低でも「左手人差し指を伸ばした姿で絵に書く際に、それよりも先に矢がはみ出ない」ように注意しましょう。

 たまに、豪勢に矢の先が弓の向こう側にはみ出している絵を見かけますが、それだけで「この射手は道具の手入れも知らない初心者なの?」と思われてしまいます。


 逆に、やじりが見えなくなるまで引き込んだ状態も、弓道では危険なものとして敬遠されています。

 例えば、弦と弓の間に完全に矢が挟まった状態で、弦を離してしまったとします。そうなると矢がどこに飛ぶか全く想像できませんし、運が悪いと折れた矢が顔に刺さってしまいます。

 従って、あまりに短すぎても「この射手は道具の選び方も知らない初心者なの?」と思われてしまいます。


( 第十七回 終り )

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