死んだモラル



「かぁーごめーかぁーごめー……煩い。」


「かぁーごのなかぁーのとぉーりーはー……ほら叫んでないで素直に脚上げようねぇ?」


「いーついーつ出ぇやーるー……嗚呼、たくさん出てきたよ。そうそうその調子、」


「よーあーけのばーんにー……はいはい、泣かない泣かない。」


「つーるとかーめーがす―――……泣くのはやめなって……ほら、気持ちよさそうな音出てるの自分でもわかってるだろう?」


……、


 自室の椅子に少女を座らせ腰と手を縛り、無理やり足を上げさせ、まだ産毛しか生えてない秘部にゴム手袋をした指を挿入する十二月は、嗚咽を漏らし泣く少女に冷たい言葉を浴びせ、羞恥心を煽るようにわざと音を立てる。


 卑猥な水音とこれまで誰にも見せたことのないだろう場所を明るいライトに照らされた少女は猿轡を嵌められた口から絶えず唾液を滴り落としていた。


「どうです?輪廻様。」


 卑猥な音が響く部屋の中、椅子に座る輪廻の側に立つ少女、巳影≪ミカゲ≫は大きく開脚された少女の秘部と十二月の顔を交互に見比べる。

 そんな巳影の言葉に少女の目にまた涙が溜まったがそんなことは十二月も巳影も気にもしていない。


「……十分濡れてるんだけどなぁ。なんでご主人様だと濡れないのかなぁ。」

「左様ですか。」

「左様ですよ。ほら、見てよ、これ。」


 少女の中から指を引き抜いた十二月は指に纏りついた体液を巳影の顔の前に翳す。それにはさすがに巳影もその頬を赤く染めた。


「……なに照れてるんだい?……今更すぎるだろう。君だって毎夜小生の指を濡らしてるじゃない。」


 よりにもよってそんな侮辱的な言葉で巳影に追い打ちをかける十二月のモラルは疾うの昔に死んでいた。でもそれも仕方ない。十二月の生涯を振り返れば、彼の生きざまを省みれば、彼の置かれた環境を考えればそれはしょうがないことだった。


 “誰しもが理想通りには生きれない”そんな尤もな台詞を吐いたのは十二月の馴染である男だ。


「……それにしても臭うな。」

「はい?」


 指先にべったりと纏わりついた少女の体液をネチャネチャと捏ねながら、鼻先に近づけた十二月は眉を潜めてそう誰にともなく呟く。


「不快だ。」


 言葉通りの表情を浮かべながら。眉を寄せて。目を細め、


「これだから男の味を占めたお人形≪ドール≫に小生はそそられないのだよ。実に、……穢らわしい。」


 不快そうに歪めた口元から不愉快だと言わんばかりの音色を響かせ、そう吐き捨てた。




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