第7話 二度目の出逢い

土日は毎日教習所に通っていたから、

卒業した私には

長い夏の時間だけが

ぽっかりと空いてしまったんだ。


やっと卒業出来た私を

彼氏は嬉しそうに祝ってくれた。

彼氏はいつもこんなに優しいのに、

考えてしまうのは

毎日、毎日、

あの人のことなんだ。



あの人にやっぱり逢いたくって・・・




いつ限定解除を申込みに行こうかな、

あまりに早く申込みしたら

その分別れの日も早くなってしまうのかな、

何曜日に行けばあの人は出勤してるのかな、

考えても答えなんて無いことばかりだった。




そんなせっかちな私だったから、

夏期休暇を待たずして

あっという間に運転免許を手に入れた。


免許の写真も

免許取得日も

免許証番号も

なんの語呂合わせも

特別な意味もなかったけれど、

この免許証は特別で、

オートマ限定の免許だったから

あの人とまた逢うための限定チケットだった。




どんな場所よりも教習所が楽しくて、

長い夏期休暇なのに

今年は旅行の予定一つ入れていないから、

きっと空白のスケジュール帳は

教習予約で埋まるのだろう。


すでに休暇モードの私はフライングして、

夏期休暇前日の出勤日、

朝一番に教習所に寄って行った。


やっぱり教習所は夢の国で、

一歩足を踏み入れると

またあのドキドキが甦ってきた。




受付カウンターで限定解除の申し込みをしていると、

朝一番の教習真最中だったから、

無意識のうちに

背中越しに広がる教習コースに

あの人を探してしまう。


立ち上がった瞬間、

カウンターの奥に映るのは

私が恋していたあの人で、

何にも変わらないあの人のまま

そこに立っていた。


驚いたような

懐かしいような

そんなあの人の眼差しが、

空高く昇ったばかりの太陽が射し込んで

明るさの中に霞んでいた。


教習中だと思っていたあの人が

実はちょっと離れた場所に居たことが

なんだか恥ずかしくなって、

私はそそくさと背を向け

教習所を後にした。



明日から夏期休暇が始まるから、

私の心もふわふわしてて、

またあの人に逢える喜びで埋めつくされていた。


また来た私を忘れずにちゃんと覚えていてくれた人。

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