第92話 なかよしにゃんこ兄弟
ある町に住んでいる。
なかよしのにゃんこ兄弟のお話です。
お兄ちゃんのリッキーくんはマンチカン、弟のナッツくんはアメショー
もちろん血のつながった兄弟ではありません。
のんびりマイペースな兄と利口者の弟でした。
だけど二匹はとってもなかよしなのです(ω゚∀^ω)ニャンニャーン♪
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とても月の明るい夜のこと。
飼い主、
眠っていたはずの二匹でしたが、
「お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
真夜中に弟のナッツくんの声がします。
「ん?」
その声に、兄のリッキーくんが寝むそうな目をやっと開きました。
「……ナッツ、どうかしたのか?」
「お兄ちゃん、ボク考えてたら寝られへんようになってん」
ナッツくんは神戸のブリーダーの家で生まれなので、
関西風の猫言葉を話します。
「寝れないなら、お兄ちゃんがペロペロしてやろう」
そういうとリッキーくんは弟の顔をペロペロ舐めはじめました。
「ちゃうねん、ちゃうねん!」
お兄ちゃんの趣味は弟の毛つくろいで、ペロペロが始まると
なかなか止まりません。
ペロペロペロ……
「もう、ええって!」
お兄ちゃんの顔に思わず“猫パンチ”しちゃったナッツくん。
「イテッ」
「あっ! お兄ちゃんゴメン」
「ヘーキだよ。あははっ」
やさしいリッキーくんは弟に怒ったりなんかしません。
「ボク、お兄ちゃんに聞いてほしいことがあるんや」
「へ? なに? なんでも言ってみろ」
「あのなぁーボクら、いつもママにお世話になってるやろ?」
「ん? ママってだぁれ?」
「そこで寝ている人のことや」
「ああ、
「下僕って……お兄ちゃん、下僕の意味しってんの?」
「下僕って、こいつの名前だろう」
そう言って、寝ている美弥さんのほっぺを肉球でツンツンしました。
利口なナッツくんは下僕の意味をテレビを観てしっていましたが、
本当の意味をお兄ちゃんに説明するのはやめました。
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「ボクらを可愛がってくれるママに恩返しがしたいんや」
「それって、下僕の仕事だっていつも言ってるぜ」
弟には優しいリッキーくんだけど、飼い主さんには“塩対応”みたい。
「だけど、ボクらに美味しい猫缶食べさせるために
ママは毎日仕事っていうところへ行ってるんやで……」
「オイラたちが家でゴロゴロしている間も下僕は仕事しているのか」
猫のリッキーくんには“仕事”いうものが、どんなモノかよく分かりませんが、
疲れて帰ってくる下僕を見て、大変そうだなぁーとは感じていました。
「うん。ボクらでママにしてあげられることないやろか」
「――たとえば、どんなこと?」
「ママが喜んでくれそうな」
「だったら、オイラのいちごの毛布を貸してやってもいいぞ」
いちごの毛布とは、リッキーくんの超お気に入りの毛布のことで、
それを肉球でフミフミすると気持ちイイみたいなのです。
いちごの毛布をフミフミしているときが、
リッキーくんにとって至福の時間なのだ。
「そんなのママはいらないよ!」
「そ、そっか~?」
キッパリ言われて、リッキーくんは“解せぬ”という顔になりました。
「ママの役に立って喜ばせたいんや」
「オイラたちにできることって……?」
じっと肉球を見ながら二匹は考えてみました。
「ママの猫友、美香ちゃん
黒い稲妻・ゴキブリを狩るらしい」
「すごいなぁー」
「しかも百発百中でゴキがバラバラにされるんや!」
「オイラには無理だ……」
情けない声でリッキーくんが呟いた。
そしてナッツくんはバラバラになったゴキを想像して……
エグイなぁーと思ったのでした。
「うん。虫は気持ちワルイし……」
小心者の家猫にはハードルが高い。
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「ママを喜ばせることができないなら、
悲しませないことなら、できるかもしれへん」
「下僕を悲しませないことって……?」
「ママが一番悲しんだことは、リッキー兄ちゃんの上に
もう一匹のお兄ちゃんがいたんやけど……
その猫が病気になって虹の橋を渡ったときや」
「うん。下僕はものすごく悲しんだ」
「大好きなママに、そんな悲しい思いをさせたくない!」
泣きそうな声でナッツくんが叫んだ。
その声にリッキーくんもすごく悲しくなった。
「ずっとママと一緒に暮らしたいんや」
「ナツと下僕とオイラと仲良し家族」
「そのためにはボクらもママも健康でないとアカン!」
「からだをきたえるか?」
「お兄ちゃんはダイエットした方がええんちゃうか」
ナッツくんはモフモフすぎるリッキーくんのお腹をみてそういった。
「エへへ、やっぱりそっかぁー」
「けど。無理せんでも、いつもどおりでええねん」
「だったら、オイラはよく遊んで、よく食べて、よく寝るのだ」
「なるほど、そのとおりや! さすがボクのお兄ちゃんやでぇー」
ナッツにほめられて、自慢そうにリッキーくんは“どや顔”になった。どや!
「よく遊び、よく食べて、よく寝るぞぉ~♪」
嬉しそうにリッキーくんは節をつけて歌いはじめた。
『よく遊び~♪ よく食べて~♪ よく寝るぞぉ~~♪』
なかよしにゃんこ兄弟は声をそろえて歌いだしました。
にゃんこ兄弟の鳴き声にも目を覚まさず
美弥さんはスヤスヤと眠っています。
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朝がきて、美弥さんが目を覚ますと、
二匹のにゃんこは、布団の上でピッタリと
寄りそうように眠っていました。
起こさないように、そーっとベッドから抜けだすと、
リッキーくんとナッツくんの朝の猫缶を用意します。
― いつもの朝となにもかわらないけど
リッキーくん、ナッツくん、にゃんこ兄弟が、
きのうよりも、ずーっと“下僕”のことが
スキになっていたことを ―。
ゆうべのお月さまはちゃんとしっていました。
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