第78話 非モテ系男子4人が聖夜に誓ったこと!?

クリスマスなんか大嫌い! 毎年、この季節になると憂鬱な気分になる。

貧困アニメーターの俺に彼女なんかできるわけない。聖夜はひとりでゲームでもしようとプレステを起動させたら、スマホが鳴った。

「サトシ家にいる?」

大学のアニメ研究会のメンバーだったツトムからだ。

「なんだよ、クリスマスなのにおまえボッチか?」

つい口走った言葉に、気まずい沈黙が流れた。どうやらツトムを傷つけてしまったようだ。

「……そうか、俺もひとりなんだ」

自分からカミングアウト。

「そっか! じゃあ、今からチキン買っていくからゲームやろうぜ!」

「おう、ピザ注文しとくから~」

ツトムはウェブデザイナーでゲーマーなのだ。しょせん俺らは女の子には縁のないタイプなんだ。


クリスマスだというのに、野郎二人でゲームで盛り上がっていたら、チャイムが鳴った。ピザ屋だろうと出てみたら、意外な人物が立っていた。

「彼女のいないサトシなら、クリスマスでも家にいると思ってきてみた」

同じくアニメ研究会のメンバーだったシュン。

にこにこしながら、手に持ったクリスマスケーキを高く掲げた。

シュンの家はケーキ屋で、大学を卒業してから家業の店を手伝っている。こいつの趣味ときたら世界の遺跡を見て歩くこと、一年の内三ヶ月は海外で放浪している。そのせいで、きちんとした会社には就職できないのだ。こいつも聖夜のボッチ組だった。

「おまえも彼女いないくせによく言うよ」

「僕は自由が好きなんだ。いつでも世界へ旅立てるようにさ」

「ツトムもきてるんだ。一緒にゲームやろうぜ!」

そして非リア充の三人は、ケーキやチキンを食べながら、楽しくゲームを始めた。うん、男同士のクリスマスっていうのも悪くないや。

「おまえら、一生彼女つくらない気なのか?」俺が訊いたら、

「俺はゲームで世界と繋がってるし、自分の好きなことに没頭したい。彼女なんか要らないし、結婚したいとか思わない」

ゲーマーのツトムがそういうと、シュンも自分の意見をいった。

「正直、女の子と付き合うのが怖い、バカにされないか、カモられないか、最後にフラられて撃沈するのも惨めだし、やっぱしリスク高いよなぁ~」

俺は彼女が欲しいけど……お金も時間もないから、リア充なんて到底無理だな。夢は世界一のアニメ監督になること!


「メリークリスマス!」

突然、窓が開いてサンタクロースが部屋に侵入してきた。

「うわっ! だれだ!?」

「驚かせてスマン! 俺だよ」

サンタ帽と白髭を外したら、アニ研仲間のユウスケだった。

こいつは、アニメキャラクターグッズのお店で副店長をやっている。

「お店のイベントでサンタの格好してたんだ。ほいっ、クリスマスプレゼントよ~ん」

お店の売れ残り商品だという、アニメキャラのタオルやフィギュア、ゲームなどを配ってくれた。

「クリスマスに一緒に遊べる友達がいて嬉しいよ」

ついに男4人で聖夜を迎えることになった。

「たぶん、来年もこのメンツだろうな」

「女なんか要らない! 俺の嫁は二次元にいる」

ユウスケは二次元キャラが大好きなのだ。

「実際、うちの兄貴みてたら、結婚して幸せになったとは思えない。給料はすべて取り上げられて、わずかなお小遣いでやりくりして、休日もイクメンとか、育児と家事をやらされてる。その間、嫁さんは息抜きに女子会とかでホテルでランチ食べてるんだぜ」

「どこの家でも女の方が強いからなぁ~」

うんうん、4人の男が深々と頷く。

「家族のために働いてきたって、年取って定年になったら、家では生ごみ扱いなんだぜ! 結婚とは奴隷契約! 結婚なんか真っ平だ! 」

そう言い切ったユウスケに、俺たちも内心同意していた。


「結婚できなくても、自由がいい!」

「そうだ! そうだ!」


「結婚できなくても、夢を追いかけたい!」

「そうだ! そうだ!」


「結婚しなきゃあ、ゲームがやり放題だ!」

「そうだ! そうだ!」


「結婚できなくても、俺には二次元があるぞ!」

ユウスケが気炎きえん吐くと、

「いやぁ~はちょっと……」

「俺はやっぱりがいいかなぁ~」

さすがに、だれも同意しない。


「結婚できなくても、自分たちの人生を楽しもうぜ!」

「そうだ! そうだ!」

「この四人で年をとってからも、支えあって孤独死しないように助けあおう」

「おうっ! 孤独死友の会の結成だぁー!!」

「よっしゃ! よっしゃ!」

そして、非モテ系男子4人が聖夜に『孤独死友の会』の結成を誓ったのである。



その頃、クリスマスの街では――。

「ぜんぜん男が歩いていないよぉー」

短いスカートに生足のギャルが公園のベンチに座っていた。

「こんな可愛い女の子が二人、ナンパ待ちしてるっていうのに……」

「ボッチの男さがしてまーす!」

「寒いし、ラーメンでも食べて帰ろう」

「せっかくオシャレして街に出てきたのに、ねぇ、みんなカップルなの?」


「リア充爆発しろ!!」


どうやら需要と供給のバランスが上手くいっていない、寂しいクリスマスの夜でした。

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