第53話 R-12 三匹の子豚 (保護者同伴で読みましょう)
三匹の子豚の作った家で、頑丈な
そのことで自信をつけた末っ子の子豚は、『子豚ハウス』という建設会社を立ち上げました。注文住宅専門で設計から施工まで引受けるのです。
人手(豚足?)が必要なので、ダメな兄二匹を雇うことにしました。
一番上の兄には営業に回って貰うことにしました。「よし! 俺が注文を取ってくるぞ」と勇ましく飛び出した兄は、森へ行ったきり帰ってきません。
数日後、森の中で血の付いた営業鞄が発見されたのです。どうやら、狼に喰われてしまったようです。
二番目の兄には、資材担当をやって貰うことに「煉瓦を作る粘土をとりに行ってくる」と山へ入ったきり、待てど暮らせど兄は粘土を持って帰ってこない。
山へ捜しにいった末っ子豚が見たものは……もはや、原型をとどめていない二番目の兄の惨殺死体だった。殺害現場には狼の足跡が残されていた。
どうやら、二匹の兄豚たちは狼に喰い殺されたようだ。
憎っくき狼め! 煙突で大やけどさせられたことを根にもって、三匹の子豚たちをストーカーしていたのか?
生き残った末っ子の子豚は、兄弟の墓標に仇打ちを誓ったのです。
利口な末っ子は考えた。
どうすれば、あの狼に復讐ができるかと……そこで、ここに至るまでの経緯について考え始めた。
なぜお母さんは、僕らに家を出て自分の家を建てろと言ったんだろう? 狼はお母さんの
数々の疑問が大きな
三匹の子豚のお母さんの家は森の中にあります。
留守なのか家の中は静まりかえっていました。まさか狼に襲われたのではと心配になって、
「お母さーん! お母さーん!」
何度も大声で叫びました。
「誰だい? うるさいよ!」
裏にある納屋からお母さんが現れました。手には血の付いた大きな包丁が握られて、どうやら料理の最中だったようだ。
「お母さん、大変だ! 兄さんたちが狼に食べられちゃった」
末っ子豚は泣きながら話した。
「おやまあ、バカな兄さんたちだね」
あまりに冷淡なお母さんの反応に、子豚は言葉を失った。
「……自分の子供が死んだのに悲しくないの?」
「別に。いずれハムになる運命のおまえたちじゃないか」
そういって薄ら笑いを浮かべたのです。
こんな酷いことを言うなんて……本当の母親だとは思えない。
「おまえは誰だ? 僕らのお母さんはそんな薄情じゃない!」
「子豚たちに家から出て行けって言った時点で、あたしゃ薄情な母親なんだよ」
なんかオカシイぞ。
三匹の子豚の作者は、母親の性格について何も書き記していない。――この話には裏が有りそうだと直感した。
「正体を現わせ!」
にんにくの首飾りをした末っ子豚は「アーメン」と十字を切って十字架を掲げた。
「なんだい?」
「十字架が怖いだろう」
「あたしゃ吸血鬼じゃない」
「えっ?」
「バーカ! そんなに正体が見たいなら見せてやるよ」
お母さん豚の姿が、醜い魔女に変わった。
「もう一つの顔がこれさ」
凶悪な牙を剥く狼に変身した。
「お母さんも狼も……みんな魔女の仕業だったのか!」
「おまえたち子豚は、ハムを作るために農場からさらってきたんだ」
「大きくなったから家から放り出して、狼に襲わせて、その肉でハムを作っていたのか」
「あたしゃ『ルチアおばさんの森のハム屋さん』というお店でハムを売ってるのさ。このロースハムは一番目のお兄さん。ボンレスハムは二番目の兄さんだよ。おまえは何がいい? 焼豚かい、豚の角煮も堪らん旨さだよ」
魔女は口からよだれを垂らしながら、包丁を持ってにじり寄ってきます。
そして子豚に切りつけた瞬間、ピカッと稲光が走り落雷が家に落ちた。黒い煙が立ち込めて中は暗闇になった。
「子豚め! どこへ逃げた?」
辺りを見回しても何も見えない。その時、魔女の首根っこを何者かが掴んで持ち上げた。
『邪悪な魔女よ! おまえの毒気でわしの封印が解けたぞ!』
「お、おまえは何者じゃ?」
そこに立っていたのは怖ろしい怪物だった。
『魔王ルシファーだ。聖者によって子豚に変身させられていたが、やっと本来の姿を取り戻すことができた!』
「ま、まさか末っ子豚が魔王さまだったとは……」
『わしは腹が減っているのだ。おまえを喰ってやる!』
魔女を摘まんで大きな口で一飲みすると、復活した魔王は地獄へと帰還していった。
三匹の子豚の登場者たち全員が消えたところで、この物語は目出度く
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