第40話 『海にいこう』
憧れの先輩から、突然。
『海にいこう』て、誘われた。
えっ! ええー? 二人っきり、マジで!?
私こと、
入学したばかり頃、理科室が分からなくて校内で迷っていたら、二年生の男子が親切に案内してくれたんだ。
それが
スマートでかっこいい! ひと目惚れっいうのかなぁー、もう胸キュンでドキドキが止まらない。
彼のことを調べていたら、成績優秀でスポーツ万能、女生徒にも人気があるらしい。ああ、とても私の手の届かない人だと諦めていたが……校内で見かける度に、先輩への想いは
そんな時、生徒会長に五十嵐先輩が立候補するという噂を耳にした。少しでも近づきたい私は思い切って生徒会役員に立候補することに――。
結果、五十嵐先輩は生徒会長、私は書記になったよ。
生徒会で顔を合わせるようになって、書記としてお話ができる。
先輩は人気あるけど、特定の女子とつき合っていないみたい。もしかしたら私にもチャンスが……なぁーんて甘い夢をみたりして、ああ~片想いってツライわ。
日曜日なのに、生徒会の集まりがあるというので、学校にきてみたら誰もいない。メールを確認したら、日程が変更になったというお知らせが届いていた。
やれやれ……せっかく来たのに
生徒会室に誰もいないのに驚いて「岡田だけか? 他のみんなは?」と聞かれたので、日程が変更になったようですと説明したら、スマホを確認して「俺のLINEにもメッセージ入ってた」と照れ笑いした。
生徒会の人は先輩とLINEやってるんだ。横から羨ましくみてたら「岡田もLINEやってる?」って先輩が訊くから、「やってまーす!」と返事したら、即、登録してくれた。
やったー! どんどん先輩に近づいてきたよ。
ふいに「岡田、もう帰る?」と訊かれたので、素直に「ハイ、帰るつもりです」と答えたら、「もし暇だったら、つき合わないか?」突然の先輩からのお誘いが!
帰っても録画したアニメを観るしか予定のない私は、「行きます。行きます」二つ返事で答えた。
「じゃあ、今から海にいこう」
「えっ、海ですか? ここから遠いでしょう」
「そうでもないよ。自転車で二時間半くらい」
二時間半!? マジですか。
憧れの先輩からのお誘いを断わるなんて有りえない。海でも、山でも行きますとも!
そして、二人は海を目指して自転車で走りだした。
だけど先輩の自転車はマウンテンバイクの18段変速付き、それに比べて、私のはママチャリだし性能が違い過ぎる。
先輩が速すぎて追い付けないよ!
けど、時々、止まって私が追いつくのを待っててくれる優しい先輩。
国道を走る二台の自転車、トラックの排気ガスに
途中、コンビニで飲み物を買って休憩する。
必死の形相でチャリンコを漕ぐ私に、「大丈夫? 疲れたら引き返してもいいよ」と声をかけてくれるが、その度に「ヘーキ、ヘーキ」と
マウンテンバイクなら二時間半だけど、私のせいで三時間半かかって、やっと海に到着した。
「海だ―――!!」
二人は大声で叫んで、砂浜を駆け降りて海へ突進した。
裸足になって、子どもみたいに波うち際でじゃれ合った。昨日まで、ただの憧れの人だったのに……こんなに身近に感じちゃってる。
「俺さ、今まで、いいなーって思った女の子には海にいこうって誘うんだ」
「そうなんですか」
「遠いからいつも断られた。たまに行くって子もいるけど……半分も行かない内に疲れたって帰ってしまう。岡田が初めてだよ。最後まで付いてきてくれた女の子は……俺、ものすごく感動した! おまえの頑張りと俺を信じてくれたことに感謝してる」
「私は先輩と一緒に海が見れて嬉しいです」
「俺、岡田に惚れちゃった。つき合ってくれないか?」
もしかして、先輩から
リア充なんて夢だと思ってたのに……信じていいの? ヤバイ! 涙がでてきたよ。もち、私の返事は決まってる「オッケー!」ですとも。
真っ赤な夕日が二人を包む時……そっと触れた唇の感触、世界中に先輩と私しか居なかった。
帰り道は私のママチャリがパンクしちゃったので、バス停を探して、そこからバスで帰ることになった。
バスの車内でいろんな話をしたよ。先輩がゲーム好きなこと、観てるアニメが一緒だったこと、案外フツーの男の子だったりして。でも大好き!
LINEのグループ設定で、二人だけのグループを作った。
「俺と佳奈のホットラインなっ!」
ついに憧れの先輩と急接近して、リアルカップルになっちゃった。
『海にいこう』は、先輩の彼女になるためのミッションだったんだ!
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