第45話 脅迫⑧

三日がたちレイジのことが分かってきた。

ハンドルネームも本名から名付けたものであった。

ネットで検索をかけるとコミュニケーションサイトに登録していることが分かり、そこから出身地や大手食品メーカーで働いているという勤務先まで分かっていった。

自分が探偵になった気分になって緊張感と共に独特な高揚感も出てくる。


祐一は今回のことをある程度信頼できるメル友にも告げた。麻衣子の名前は出さず、メル友という部分は友達に置き換えてはいたが。


同い年のメル友の夏姫は自分のことのように怒り、私も調べるのを手伝うと協力してくれた。


アリサに至ってはレイジが働いている会社の社長と面識があると教えてくれた。さすが社長繋がりと感心する。


他のメル友にも伝えた。そんな中でふと戦慄を感じる瞬間があった。

そのメル友から他のメル友に。さらにそこから別の人にと瞬く間に拡散していく。

三浦零司という名前がネットの世界で一人歩きをしだしたようであった。

それは食パンに付いた一つの黒カビが、日増しに増殖を繰り返し、真っ黒な姿に変えてしまうように。


そうして人伝へと渡り歩いた結果、大量の情報が集約されてきた。

どこまでが本当なのか分からないが両親の住所や名前も控えられることとなった。

出会ったことのない者同士が協力して動けることの凄さがある反面、ネットが併せ持つ怖さがどんどん集まる情報に比例して増していく。

これがもし自分だったらどこまで調べ上げられてしまうのであろうかと背筋が寒くなる思いがした。


その後麻衣子にはレイジからメールが来ないという。

しばらくおとなしくしていてくれればいいのだが、多分次の脅迫手段に向けて着々と準備を進めているのであろう。

ある程度調べがついたところで、レイジとどう対峙するかを祐一は考え始めた。

自分が直接交渉するか、それとも麻衣子にやらせるか。

本来ならば当人同士でやるのが最善であろうが、彼女がそこまでやれるであろうか。

色々なシミュレーションをしてみるが、やはり麻衣子自身に任せるのが一番であるという結論にたどり着いた。

ここまでして駄目であれば部外者はどうすることもできない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る