第32話 不倫⑤
その後もヒナとは遊ぶ前と変わらずメールをする日々が続いた。
ただ内容に少しだけ変化がある。
相手の容姿などを聞くことがなくなったということと、会ってみたいという牽制にも似たやりとりがなくなったことだ。
それからヒナと遊ぶことが増えていった。
空き時間に食事を一緒したり、ボーリングやビリヤードで遊んだ。
手を繋ぐこともない健全な内容である。
その理由は結婚しているからというのが大きなものであるが、ヒナに対して女性としての魅力をそこまで感じないというものもあった。
家族で遊びに出かけると、どうしても子供中心となってしまう。
ヒナと遊ぶことは純粋に友達同士と遊ぶ楽しさがあった。学生時代に特に遊ぶ理由はなく、とりあえず集まってから、どこに行くか考えようとしていた懐かしい感覚を思い出させてくれる相手であった。
ある時、ヒナが以前付き合っていた彼氏の家に初めて遊びに行ったときの話になった。
一人暮らしの彼氏の家に行くということは、当然お互い求め合う関係になる。
照れながらもそこでのやりとりについての話に、祐一は十代前半の女性に興味を持ち始めた男同士が語り合っていた頃と同じ興奮を感じていた。
話はエスカレートしていき、より深い部分についての話も出た。もちろんこういう話が好きな祐一が聞いていったからではあるが。
「彼が運転中の車内で、ずっと奉仕していたことあるよ。30分くらい」
ヒナがお酒を一口飲んでから答えた。
「えー。運転中危ないじゃん」
「そうだね。でもお願いされたら断れなくて」
「それって信号待ちの時とか、他から見られていたんじゃない?」
「きっと見られていたと思う」
「そこが良かったとか」
祐一の発言に二人で笑いだした。
「他にも変わったところでしたことはあるの?」
祐一の質問にヒナは伏し目がちになって少し考えた。
「いっぱいあるよ。公園とか学校で講義の最中とか」
「それも彼氏にお願いされて?」
「そう」
軽く笑顔で返事をしたヒナには、若気のいたりでねといった感情が読み取れた。
「じゃあ、僕もお願いしたら、もちろん断らないんでしょうね?」
「うーん。考えておく」
「がーん。なんで僕だけ断られるのよ」
上手くオチがついた。残念な気持ちがないわけではないが、これで良かったのだと安堵もあった。
ヒナとの別れ際、いつも通り駅の改札口まで彼女を送っていく。
少し強引に誘えばついてきてくれるだろう。後ろ髪をひかれるような思いもあったが、あえてそんな高揚感を楽しんで、それぞれ別々の電車にのった。
ところで女性の性欲はどうなのだろうと疑問に思った。いつも誘えば、他に用事がない限りヒナは祐一と一緒に出掛けてくれた。
何度も一緒に遊んでくれるということは好印象であるはずだ。ずっとこのままの関係で彼女は大丈夫なのであろうか。
これが男性であったら、女性との仲を深めていきたいと願っていくはずであるが。
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