第22話 出会い②

問題はあるにせよ、今までのように悩みに答えていくといったものではなく、リコとは普通の会話ができた。


近所にオープンしたラーメンが美味しかった。

今日の夕食はお鍋にしよう。


そんな話の中で夫に対しての愚痴も出てくるので、ちょうどよい悪役となって会話は盛り上がった。


ある時、祐一の発言で『もう歳だからね』というやりとりがあって、リコは『怒ったぞ~』と冗談に乗ってくれた。

その結果、祐一に指令を与えてきた。


『許して欲しかったら罰ゲームを受けてもらいます。もし断ったりしたら絶交だからね』


『罰ゲームって何? 絶交されたくないから何でもしますよ』


『えっとね。ではユウくんが誰にも言ったことのない秘密を発表してもらいます。秘密はないも絶交だからね』


リコとは会ったこともないが、それでもいたずらを仕掛けた子供のような、嬉々とした表情をしていることだろう。嬉しさを見せないように無理矢理押さえ込んでいるはずだ。

秘密とは何があるだろう。これといったものが思い浮かばない。

妻に対してであればメル友がいるという秘密があるが。


リコは聡いところがある。

しばらく考えているうちに、これは不倫をしたことがあるかというカマをかけてきたものであると予想できた。

さすがにそこはなかったので、意図が分かったところで考えなくてよくなったわけではない。

それにリコは不倫をしたことがないことを期待しているはずだ。

ここで不倫があると告げた場合、疎遠になることはないだろうが、二人の間に何か一線引かれてしまうであろうと思えた。


『あまり秘密はないんだけど、過去にメールでお話していた方と恋人っぽい関係になったことがあるくらいかな。会ったことはないので、メールの中だけでのお話だけどね。これは奥さんが知らないことだから、リコさんも内緒にしていて下さいよ』


本当に秘密にしていることで、丸く収まる内容として丁度よいものがあった。


『えー。恋人っぽいってどういう感じのやりとりだったの? でもこれでユウくんの弱みを握れた。何かあったら奥様に言っちゃおっと』


リコはお姉さん気質なのであろうか。それとも年上だからであろうか。祐一をからかいたがるところがある。


『恋人っぽいというのは、普通に「おはよう」と挨拶から始まって、今何しているのみたいなやりとりをする感じかな。っていうか、僕ばかりが秘密を言ってずるい。リコさんの秘密も教えて下さい』


抵抗を開始した。しかしリコから来たメールでその試みは一瞬で潰された。


『私は秘密はないよ。だって良い子だもん』


『あー。リコさんに騙された。そっか、僕も秘密はないと言えば良かったのか』


踊らされている感はあるが嫌ではなかった。

お姉さんという感じで憧れの気持ちが出てくる。

カエデの時は同等の恋人。リコは憧れを抱く女性といった感じだ。また違ったタイプとして二人の間に絆が芽生えていった。

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