第21話 出会い①

これがメル友というものだと気丈に振る舞っているが、メールをしてきたことで確実に祐一の心はすり減っていた。

惹かれ合った女性には突然別れを告げられ、心の共有ができていた女性には置いていかれ、守ろうとした女性は自ら守られることを放棄された。


他にも長続きしないが、数回のやりとりで疎遠になったりと自分の何がいけないのか考えることも多い。

ありがた迷惑なお説教もあったり、討論っぽくなって一方的に嫌われたりもした。


もちろん楽しいこともあるが、メールは本心を話しやすく一気に距離が縮まる分、別れも早く、喪失感も連続で押し寄せてくる。

自暴自棄とかにならないのは、メル友に期待はしていない部分がどこかにあるということと、現実的な性格から感情をコントロールすることができるからだ。

もちろん家族がいてくれることの安心感は大いにそのことを助けてきた。


あまり良いことではないと思ったが、祐一は一度に何人もメールのやりとりをすることにした。

そうすれば急な別れが訪れてもそれほど寂しさは感じないし、固執しがちにならず、ゆとりを持って話していける。

メル友として話してくれる人が見つかっても、さらに募集している女性にメールを送っていった。

この結果入れ替わりを繰り返しながらも10人弱のメル友がほぼ同時期にできてしまった。


一流企業から独立し、社長を務めるキャリアウーマンのアリサ。

平凡な主婦だがフィーリングがあう麻衣子。

明るくて楽しい会話ができる独身の夏姫。

控え目な感じで会話の盛り上がりにはかけるが、すぐ返信をしてくれてメール数が一番多いヒナ。

そしてレストラン経営をしている社長夫人のリコがいた。

他にも数名いるが、長続きさせることは難しかく入れ替わりを繰り返した。


さすがに多すぎる数ではあるが、人気者と錯覚できるので嬉しい悲鳴といったところであろうか。

たまに同じタイミングできてしまい、メールを打っている最中に他の人から着信があって、その返事を打っているとまたメールが来るといったこともあった。

休みの日などは一日中メールを打っているような状態のときもある。

誰とどういう話をしたのか分からなくなっていく。

携帯電話のメモ機能にそれぞれのプロフィールなどをまとめていった。


たまにテレビのインタビュー等で、四股、五股かけて付き合っているという話を聞くことがある。

名前を呼び間違えないように全員に同じあだ名をつけたりとか笑い話として語られる。

祐一はそういったことに縁はなかったが、少しだけそういう人の気持ちが分かった。



リコは2歳年上で夫はレストラン経営をしている社長であった。

実家は箱根で旅館を経営しているが、箱入り娘という印象はなく、素朴な面とお金持ちの面を併せ持つ話しやすい女性であった。

幼稚園に通う娘がおり、ブランドの洋服で身を固めているが、自転車で送り迎えをするアンバランスさが面白く感じる。

ただ夫婦仲はあまり上手くいっていないようで仮面夫婦と言っている。

それでもたまに夫に時間があると、半ば強引にベッドまで運ばれ夜の営みは行われるそうだ。

心の中で早く終われと思っているらしいが、断れないのは離婚となったら生活が大変になるというお金の力と娘を思ってのことであろう。

メールでのことなのでどこまで本当かは分からないが、世の中には色々な人がいるということを思い知らされる。

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