第20話 相談⑥
もし部活で他校と二週間くらいの合同合宿があったとしよう。
そこで仲良くなって話すようになった人とは、合宿後数か月たったとしても何かあれば連絡くらいは取るであろう。
だがメル友の場合は一年間毎日のようにやりとりをしていたとしても、一度疎遠になったら存在そのものが相手から消されてしまうのではなかろうか。
そう考えると、結局は体を交わらせることがゴールで、そこまで達成できるかどうかがメル友の存在理由なのではないかと考えたくなる。
ナナのように悩みを誰かに話して解決に向かう利点もあるが、そこで終わりには本当はしたくないものだから。
祐一の頭の中で、自分も雪子と肉体関係まで持ち込めないか考えないわけではない。このままメールを続けていけばいつかは。
しかし既婚者ということを考えないとしても、きっと無理であろう。
雪子が自分のことを好きになるとは思えない。
サトルのような男の真似をしたくないというプライドもあった。
結局そんな欲望は考えないようにして雪子と接していこうと決めた。学生の頃にあったような恋愛話を語り合う仲良しグループのようにと。
予想通り二日後にサトルから雪子にメールが来た。
内容も祐一の想像通りで、正解したことの誇らしさもあるが、あまりに安易なサトルの言動による失望がそれを圧倒的に凌駕していた。
サトルとは話したことはないが、どこかで期待を裏切ってくれて素敵な男性であることを期待していた面もある。
その思いは見事に打ち砕かれた。
それに対して雪子は罪悪感から一定の距離をとって、サトルと連絡をとらないように我慢している。
このままサトルとの関係が終われば元の生活が手に入れられる。決して愛し合っている夫婦ではないが、子供と一緒にごく一般的な生活を送ることができるのだ。
そんな対応をする雪子だが、それでも追いかけてきて欲しいと都合のいい状況を期待していることは感じ取れた。
雪子の悩みはサトルの気持ちが冷めたのではないかというものに変わった。
それも不倫をする前のサトルの行動と比較して、あの時はもっと追いかけてくれたのにという不満と不安が合わさった内容になっている。
祐一はフォローをして、サトルのことを考えなくてもいいような話し相手となった。
それから一ヶ月間、毎日同じようなやりとりが続いている。
もう一週間も彼へメールすることを我慢している。もう十日もと・・・
雪子の寂しさは増すばかりだ。
会わない方がいいと思うので拒否しようとしているが、やはり会えないのが辛い。
祐一と話すことで気はまぎれるが、気持ちは何も変わらない。逆にサトルについて話すことで、いつまでたっても忘れることができずにいた。
二か月がたったある日、祐一のもとに雪子からメールがきた。
『もう二か月会わずに我慢しました。彼からも連絡がこなくなりましたので、もう大丈夫です。ユウさんには色々相談にのってくれて感謝しています。でも話していると忘れることができず苦しくなります。ですのでもうメールを止めようと思います。今までありがとうございました。このメールのお返事は大丈夫です』
またこの日が来た。仕方がない。
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