第18話 相談④
結局雪子はサトルと会う約束をした。直接お互いのことを話さないと分からないという理由で。
場所は雪子の家から電車で三十分程ある、家から離れた繁華街に立地するホテルのバーが予約された。
約束の日までは一週間あった。
雪子は夜はサトルと連絡を取り合い、日中はその報告と、サトルが自分のことを好いている度合いを確認するために祐一にメールを送った。
祐一も営業で外を回ることが多く、移動の合間や休憩時間に返信を送っていった。
雪子とサトルが合う日が来た。
夕方に駅前で待ち合わせをして、ホテルのバーで飲む。
夫には同級生と遊ぶと言ってあり、子供は親に見てもらう手筈を整えていた。
その日は昼間でも祐一にはメールが来ない。
夜の早い時間にメールが来れば、本当にお酒を飲んで帰ることになったのであろう。それがないときは・・・
自分にはまったく関係ないことなのに、なぜか胸が締め付けられる感じがした。
それが嫉妬であることは理解できるのだが、普通の好きな相手にする嫉妬とは少し違った。
凶悪犯罪のニュースを聞いてその被害者の心中を察した、えもいわれぬもやもや感と似ている。
夕方の待ち合わせ時刻に携帯電話を見たが、もちろん雪子からメールは来ていない。どこかで、やっぱり中止にしたという内容を期待していたのだが。
夜になった。
祐一は夕食を済ませた後に家族と会話を少しすると、今日はちょっと疲れたと言い、寝室に向かった。
雪子からのメールは入っていない。今頃は飲んでいる最中なのであろう。
飲みつつも雪子とサトルの間にはすごい駆け引きが行われているはずだ。
サトルはこれからいかにしてベッドまで持ち込むかの誘導を行い、雪子は気持ちを抑えるためにそういう雰囲気にならないようにしようという。
その後も祐一の元にメールが届くことはなく夜も更けていった。あまり良い予感はしないまま眠りについた。
翌日、仕事は休みであったが、いつもの起床時間よりも早く目が覚めてしまった。
やはり心労があると熟睡できないようだ。
今日見た夢は雪子からメールが着たというものであった。
ふと、以前テレビで見た総理大臣が心労がたたって体調を崩したとことがあったのを思い出した。今の自分の考え事とは比べものにならない重要な問題を抱えていたことであろう。
それでは倒れるのも仕方ないかなと少し理解できた気になってみたのであった。
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