第1章 出会い(4)

 俺は少女が指さした馬小屋へと向かう。

 小屋に近づくに連れ、バサバサ、と何かが羽ばたく音が聞こえてきた。

 馬小屋ではなく鶏小屋なのだろうか……

 そう思い小屋の中を覗き込むと、そこには驚くべき光景が広がっていた。

 「な、なんだこれは!?」

 俺は思わず声を上げてしまった。

 小屋の中にはもの凄く大きな鶏、らしきものがいた。

 人一人くらい軽く背負えるほどの大きさだ。

 ちょっと育ちがいいとかそういうレベルの大きさじゃない。

 こんな生き物、見たことも聞いたこともない。

 本当にここはどこなのだろうか……

 ふと、今までの出来事を振り返った。

 謎の光……短時間で見知らぬ土地に移動していたこと……どの国の言語も通じない人……そしてこの謎の生物……

 ここは俺の知っている世界じゃないのかも知れない。

 いわゆる異世界なのかもしれない。

 自分で考えておきながら、非現実的で馬鹿馬鹿しいと思うが、そもそも普通に考えたら理解できないことの連続だった。

 このくらい馬鹿げた考えもしたくなる。

 異世界だとしたらどうやって帰ればいいのだろうか……

 ここが異世界ならば、俺の言葉が分かるやつは一人もいないだろう……

 書物だって読めるわけがない……

 帰る方法を探すのはとても困難だろう……

 そこまで考えた時に背後から声が聞こえた。

 「هو الأرز」

 あの少女の声だ。

 振り返ってみるとお椀とスプーンらしきものを二つずつ持っていた。

 お椀の中から香ばしい匂いが漂ってくる。

 そういえば昼から何も食べていなかった。

 今まで全然気にならなかった空腹が途端に押し寄せてくる。

 少女がお椀を渡そうとした瞬間、俺はお椀をひったくり、口の中に流し込んだ。

 食べたことのない料理だったが、美味しかった。

 座りもせずに黙々と食べ続ける俺の横で、少女は地面に座り、嬉しそうに料理を食べ始めた。

 

 

 

  

 

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