第1章 出会い(3)

 歩き出して1時間たった。

 少女は言葉が通じないと分かったためもう話しかけては来なかった。

 ただ、時折ちゃんとついてきているか振り返るだけだ。

 あれからいろいろ分かったことがある。

 まず、光の壁に飲み込まれてから対して時間が経っていないということ。

 少女と歩き始めた直後に時計を見たところ23時40分となっていた。

 図書館を出たのが大体22時20分、光の壁に飲み込まれたのはその10分後といったところだ。

 少女としゃべっていたのが10分くらいだと考えるとおよそ1時間の間にここにきたことになる。

 日付もあの時から変わっていない。

 次に携帯が圏外だということ。

 まぁこれは予想通りだった。

 そして荷物は何一つ盗られていなかったこと。

 つまりこの少女は物盗りなどの輩ではない……と思う。

 まぁ物盗りだったらわざわざ俺を起こしたりしないだろうが。

 とりあえずは悪人ではないと思っていいだろう。

 まぁいつ何かされてもいいように気を付けてはいるが。

 最後に、この少女がなかなかの上玉だということ。

 最初は気が動転してて気づかなかったが、顔は整っていて、髪は綺麗に手入れされていて艶々としている。年齢は俺と同じくらいだろう。体型は平坦な胸を除けば理想的だ。恰好こそ質素な布服だが、ちゃんとした物を着れば、モデルやアイドルにスカウトされてもおかしくないだろう。

 いやらしい視線をしていたのか彼女は不満そうな顔をして振り返った。


 更に30分後

 集落に着いた。

 住民たちは少女と俺に矢継ぎ早に語り掛けてくる。

 勿論何ていってるのか分からない。

 とりあえず、微笑みながら会釈をしておいた。

 続けて少女の後をついていくと、一軒の家にたどり着いた。

 少女は一旦振り返り、家の中に入って行った。

 多分「待ってて」と言おうとしたのだろう。

 俺は待ってることにした。

 少女が家の中に入ってすぐ怒鳴り声が聞こえてきた。

 老婆の声だ。

 そして一悶着あったであろう後に、少女と老婆が出てきた。

 老婆は俺を見るや否や

 「الآن احصل على وتا هنا」

 勿論なんて言ってるのか分からない、がどうやら歓迎はされてないみたいだ。

 少女が老婆を宥めて家に引っ込めた。

 少女は申し訳なさそうな顔をして馬小屋らしき建物を指さした。

 あそこで寝ろということだろう。


 

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