第1章 出会い(2)
いわゆる……コスプレとかいうやつなのだろうか。
目の前の女の子には獣のような耳がついている。
少女は耳をピコピコと動かしながらしゃべった。
「هل أنت بخير؟」
なんて言ってるのか分からない。
「え?ごめん良く聞こえなかった、もう一回言って?」
今度は少女が不思議そうな顔をした。
「هل أنت بخ ي ر ؟」
さっきより大きな声でゆっくりとしゃべってくれたがやっぱり分からない。
日本語ではない。おそらく英語でもないだろう。
俺は立ち上がり、ふと辺りを見回すと草原が広がっていた。
光の壁なんて見当たらず、夜だったのが昼へと変わっていた。
さっきまでいた東京とは明らかに場所が違う。
ここは一体どこなのか?
そもそも日本にこんな広い草原なんてあるのか?
言葉が通じないことから外国の可能性もある。
寝ている間に一体何があったのか……そうだ光る壁に飲み込まれたんだった。
「هل أنت بخ ي ر ؟」
思考を巡らせているともう一度少女が話しかけてきた。
勿論なんて言ってるか分からない。
こういう時はとりあえず英語を使ってみよう。
「Hello.」
少女はまたもや不思議そうな顔をした。
英語も通じないとなると困ったことになる。
俺は日本語以外には英語しか分からない。
しかも英語は義務教育で習っただけだ。
この際、意思の疎通は諦めて、現在位置の特定に力を注ごう。
知っている限りの国の言葉をぶつけて反応を伺おう。
少女の反応を見れば、どの国、どの文化圏にいるか大体想像がつくだろう。
まずは中国語からだ。
「ニーハオ!」
少女は不思議な顔をする。
「アニョハセヨ!」
反応は変わらない。
「ボンジュール」
・
・
・
「だーー、くそっ!」
中国語、韓国語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語……すべて空振りだった。
途方に暮れていると少女が袖を引っ張って歩き出した。
「يرجى تأتي」
何といってるのか分からないがついてこいと言っているのだろうか?
「待って。」
俺は少女の手を振りほどいてから後をついていった。
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