第6話 最後の4行


 数日が経った。

 冬子たちは、ユウレイ絵画の噂を解決して得た、美術準備室改め都市伝説研究部部室にいた。

 「あぁ、いつものトーコだな。それで、アイスクリンのことなんだけど、素性がわかったんだよな」

 「えぇ、アイスクリンさんのパーソナルデータはこんなところよ」

 冬子は、玲子にタブレットの画面を向けた。

 「夜一に頼らずとも、このくらいであれば調べがつくものなのね」

 「それを聞いたら夜一は泣くだろうな」

 「えぇ、既に、何で頼ってくれなかったのかと怒られたわ」

 冬子は苦笑しながら言った。

 「でも、よくアイスクリンのブログを見つけられたよな」

 「手掛かりは、12章の予約投稿日よ」

 「2月4日だったか」

 「そう。毎日、様々な記念日があるけれど、あの日は、でもあるの。そのことと、アイスクリンさんが小説の投稿を停止したことを結びつける最もシンプルな答えは……」

 「アイスクリンはがんかかっていた……」

 「えぇ、あの投稿日に特別な意味があるとすれば、それは可能性の一つになる。そこで、高知、ホラー小説、アイスクリン、病院といったワードで検索を続けていたところ、例のブログが見つかったというところよ」

 「後は、最後の4行か……」

 冬子は、タブレットの画面に映した例の小説の文面を目で追っていた。

 「呪われた本はもう返却したのか?」

 「いえ、一応借りたままにしてあるわ」

 冬子は椅子から立ち上がると、本棚からそれを取り出し、玲子に手渡した。

 「サンキュ」

 「か、る、ま、た……。やっぱりこの仮説は間違っているのかしら」

 冬子は席に戻ると、両手で頬杖をついてつぶやいた。

 「かるまた?」

 「えぇ。最後の4行の頭文字を読んでみたの。所謂いわゆる、縦読みと呼ばれるものね」

 「縦? あぁ、だから縦読みになるわけか」

 玲子もまた、右手で頬杖をついて、呪われた本の最後の4行を眺めていた。

 「……レイレイ、お手柄だわ。この4行に何かメッセージが込められているとすれば、それはメッセージの受け手に伝わるものでなくてはならない。そして、アイスクリンさんが、キサラギさんに向けてそのメッセージを送ったのだとすれば……」

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