第2話
聞き覚えがある声だった。因みに俺の名は木塚 一男という。
俺は涙を拭ってから顔を上げ、声の主に赤くなっている目を向ける。
彼の名は尾木 道長。小中学生の頃の同級生だ。小学生の頃はよくつるんでいたが、中学生になってからは一度もクラスが被らなかったこともあり、次第に関わらなくなっていった。別に仲が悪くなった訳ではなく、自然に尾木との距離は離れていったのだ。なんか訳の分からないことに熱中していたみたいだし。
「フッ、まさか勉強が苦手なお前がタッ校でしかも同じクラスだったとはな。サッカーの推薦で入ったのか?」
うわぁぁぁーん!
『サッカー』この単語を耳にした瞬間、俺は情けない声を出してしまったとともに、涙と鼻水が同時に溢れ出てきた。
俺は、サッカーを失った。必死に声を振り絞って、旧友にこれまでの経緯を話した。
「丁度いい、お前はサッカーを辞めるべきだったんだよ。俺の知り合いのサッカー部だった奴らのお前の評判はすこぶる悪かったぜ。キャプテンの癖にチームの和を乱すとか自己中プレイヤーだとか言われてたな。お前は俺らの中学の中では上手い方だったみたいだが、他の中学のサッカー部の連中にとっちゃお前なんて眼中になかったみたいだぜ。あれだけ必死に練習してこの程度だ、お前にはサッカーの才能なんてないんだよ。」
平気な顔をして、本気で落ち込んでいる俺にこんなことをいうので俺は彼の胸ぐらを掴んだ。すごい形相をして。しかし、尾木は表情一つ変えずに続ける。「となると、お前まだ部活決めていないのだな?」
当然だ。立花高校はサッカーだけではなく、バレー、バスケ、ハンドボール、カバディでも全国大会の常連であり、ついでに野球でも何度か甲子園に出場している。柔道や水泳、陸上といった個人種目でも(もちろん団体戦でも)全国大会出場選手を多く輩出している。体育の授業を除いて、俺はサッカー以外のスポーツに触れたことはない。運動部にそんな俺の居場所はなかった。かといって、文化部には全く興味がない。
俺は尾木の胸ぐらから手を荒く離すと、二度と俺に話しかけるな。と彼を拒絶した。
「悪かったよ。別にお前に嫌みを言いに来たんじゃないんだ。お前を連れて行きたい場所があるんだよ。」
俺は再び机に伏せて彼を無視した。すると、尾木は両手を俺の机に強く叩き置き、「お前、こんなことでいいのか?このまま卒業までそうしているつもりか?いや、中退するのかな?このままでは一生に一度きりの青春時代を棒に振るうことになるぞ!今日だけでもいい、俺に付き合え!」
旧友の熱い言葉によって、俺はもう一度顔をあげる。どこへ連れてくつもりだ?と問う。
彼は俺に紹介したい面白い部活があるのだという。どうせ暇だし付き合ってやるか。つまらなければすぐに帰ればいい。少し興味もある。
彼について行くと、屋上に到着した。
そこには、奇妙な光景が映っていた・・・。
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