決めろ、ガッポイ!
@onaka4545
第1話
桜舞う道の中で、俺は胸を躍らせながら、静かに歩いていた。今日は高校の入学式だった。俺が今日から通う立花高校はサッカーの名門校であり、立花高校のサッカー部のレギュラー入りをして全国大会に出場する・・・。それが小さな頃からの夢であった。
俺は小中学生の頃はサッカー一筋だった。中2の時にエースストライカーになり、中3の時にはキャプテンを任された。しかし俺の中学はそれ程目覚ましい成績を収めていなかったからか、立花高校のスポーツ推薦には引っかからなかった。
一般入試で入学することになったが、サッカーの練習と試験勉強の両立は容易ではなかった。当然、名門校ともなると入部希望者が毎年多いので、入部試験が実施される。だから、サッカーの練習も欠かすことは出来なかった。
入学式を終えた後、俺は早速サッカー部の見学に行く。全国レベルの練習を見て、俺はワクワクを抑えるのに必死だった。入部試験は明日であるみたいだ。我が校では仮入部期間が一か月ほどあるのだが、サッカー部は試験をパスしなければ仮入部すら出来ない。俺は見学を途中で終え、家に帰ってからすぐにドリブルしながらの走り込みに向かうのだった。
後日、放課後に入部試験が行われた。この日はオリエンテーションのみで、授業は午前中に終わった。俺はクラスメートの誰とも挨拶を交わすことなく、足早に試験会場に向かった。
試験は三次試験まであり、一次は体力テスト、二次に実戦形式のテストで最終試験はなんと監督と面接をし、それをパスして晴れて入部することができる。
俺は一次試験は難なく突破した。この時点で100人程いた入部希望者は半分以下にまで絞られる。二次試験は6対6で10分ハーフのゲーム形式の試験だった。エースストライカーだった俺はボールを貰った途端にディフェンダーを嘲笑うかの様なドリブルを披露し、果敢にシュートを打った。20分で10本以上のシュートを放ち、2ゴールを決めた。まずまずの出来だ。俺の気持ちはすでに三次試験に向いていたが、俺は二次試験で落選した。信じられなかった。誰よりも目立っていたと思っていたのに。
納得がいかないので監督に訳を聞きに行く。「サッカーは個人種目ではない。君のように、味方を信用せず一人でサッカーをしているような奴は、うちには要らない。」とのことだった。俺はエースだ。エースは味方にボールを託され、ゴールを、試合を決めなくてはならないのではないか。と言うと、「君の実力は別に突出して高くはない。勘違いも甚だしい。ますます君は必要ないね。」と一蹴された。
因みに、入部できたのは僅か2人だった。欲しい選手は推薦で獲得できているので、別に新入部員は望んでいないというのが本音で、試験を突破できた者はいない年も珍しくはないみたいだ。つまり、監督は入部試験でいい選手を発掘できればラッキー程度にしか思っていない。
俺の青春は僅か2日にして終わった。まさかエースストライカーの俺が入部試験で転けるとは考えてもいなかった。サッカーの出来ない学校など、俺にとって牢獄みたいなものだ。転校も考えたが、俺の住んでいる周りの学校は弱小校しかない。かといって、遠くの強豪校に通うことは両親が許すはずもない。下宿させてもらえる余裕もないし・・・。ここで全国を目指す夢も儚く砕け散った。
翌日、教室で俺は一人絶望に陥り、机に伏せて泣きそうになっていた。苦労して入学したのに・・・。苦手な勉強も頑張って難関と言われているここの入試も突破したのに!俺の努力はなんだったんだ!延々とそんなことを思っていた。すると、ある男子生徒が俺の肩を軽く叩き、声をかけてきた。
「木塚、お前もタッ校(立花高校のこと)だったのか。」
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