【27】ヘイトブレイカー
ロンフォードの高笑いに乗って、アスタが吠える!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
突き上げた巨大な黒い刃をブルンと振るって斜め後ろに構え直すと、噴水広場を巻くように駆け出した。
舞い上がったブラックマントが、クルリと身を翻す。
そしてまるでその身体を誇示するかの如く、バッと大きく翼を広げた。
「ルアァ~アアアア~~~~~~~~~~~!!!!」
撒き散らされる無数の黒い獣毛が、噴水広場上空を真っ黒に染め上げる。
今までとは比べ物にならないほどの数だ……!
「ふわーっはっはっはっ!! 逃げるべきだったね、ブラックマント!」
ロンフォードの言う通り!
「この一撃で、仕留めてみせるっ!!!」
「ルアフオォォォォォォォォゥッ!」
降り注ぐ黒い矢の雨に向かって、アスタが跳んだ!
迫り来る抂刃!
アスタは血走る目を見開いて、ギンとばかりに奥歯を噛み締めた!
「ぐあああああああああああああああっ!
────ダーク・ザン・ダークネスゥ、スラアァァァァァァァッシュッ!!!!」
全身全霊!!
グルンと身を捻りざまに、ブゥンとばかりに巨大な黒い刃を一閃!!!
瞬間、巨大な黒い稲光が、ブラックマントに轟いた!!!
ズガシャッ、ズドブシャアアアッッッッ!!!!!!
「ギャヒイィッ……!!!」
禍々しい姿となったヘイトブレイカーが、すべての矢を巻き込んで、ブラックマントもろとも切り裂いたのだ!!!
「ズドォォン!」と爆風が弾け、黒い靄が爆発的に舞い広がる。
爆煙の中からスタンと地面に降り立つアスタ。
全身から汗を滴らせ、肩を上下に揺らし、荒い息を吐き出している。
その横に、ズドシャッと音を立てて、真っ黒なコウモリのようなモノが落ちてきた。
顔と身体はコウモリそのものだが、翼は破れ千切れ、その胸元にはギチギチと蠢く8本の節足。
ブラックマントに取り憑いていた、”
やがて力を失って、ピクリとも動かなくなった。
「ギヒィィッ……」
弱々しげな声を上げ、モウモウと拡散していく黒い靄の中から姿を現したのは、全身から紫色の血を吹き出すブラックマント……いや、大きなフォレストハーピーだ。
モンスターを狂化モンスターへと昇華させるのが、
その呪蠱を奪われた今、ブラックマントはただの大きなフォレストハーピーへと戻ったのだ。
群れのボス格、フォレストハーピークイーンとでも言おうか。
ハラハラと抜け落ちる黒い羽と、力の無い羽ばたき。
だが、その目は未だ憎悪の炎が揺れ、喉の奥から苦々しげな声を漏らしている。
消耗していない状態ならば、ただのフォレストハーピーよりも危険な相手に違いない。
「ギゲィッ!!」
雄叫びとともに、やにわにフォレストハーピークイーンが身を翻す。
飛び散る羽毛が黒い矢となって、地表に降り注ぐ!
「────
聖騎士たちが声を上げると、噴水広場を包み込むようにして、光の柱が昇り立った。
闇の力をすべて防ぐ、ナイトの聖属性フィールド防御スキルだ。
フォレストハーピークイーンの放った黒い矢は、光の柱に突き刺さると同時に、フワッと掻き消える。
この中にいれば、あの攻撃は怖くない。
さすが、マルカグラード聖騎士団だ。
「あれももう、最後の力を振り絞るばかりでしょう」
「何をのんびりしているのだね、ハインツくん! トドメを刺したまえよ! 今ここであれを取り逃すようなことでもあれば、キミの輝かしい実績の中にくだらない汚点を残すことになるだろうよ!」
皮肉めいたロンフォードの言葉に、ハインツは「フフッ」と小さく笑ってみせた。
「ええ、一撃で葬り去ってみせましょう」
左手を差し伸べて、ショートスピアをスッと後ろに引く。
フォレストハーピークイーンは再び身を翻し、無数の黒い矢を作り出している。
もはや抗うのも虚しいというのに。
「はああっ!────ジャスティスブレイド、フルバレットブースト!」
ハインツが構えるショートスピアの刀身が光を放ち、シュウゥゥンとその刀身が伸びていく。
ハインツが得意とする攻撃力アップエンチャントだ。
「────ジャスティススカイハイ!!」
ヒュンと風を切り、瞬時にその身が天高く舞い上がる!
驚愕に眼を見開くフォレストハーピークイーンのすぐ頭上、険しい表情をしたハインツが光の槍先を向けていた。
「────ファイナルストライク、フルバレットブースト!!!!」
ザシュウッッ!!
「ギヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
一筋の閃光が、フォレストハーピークイーンの頭頂から尻尾の先までその身を真っ直ぐに貫いた!
絶叫を上げて全身を痙攣させるフォレストハーピークイーン。
巨大な尾羽根がヒラヒラと舞い落ちて、やがてその巨体がモワモワとした黒い靄と化していく。
そして静かに、ゆっくりと宙に霧散した……。
「『ブラックマントを討伐しました』」
地表に舞い降りたハインツのマルカデミーガントレットから、小気味のいいジングルが鳴り響き、アナウンスの声が響き渡る。
「終わった……」
滴る汗を拭いながら立ち上がるアスタ。
倒れ伏していたアメジスト衛兵隊も、「おおお」と感嘆の声を上げている。
聖騎士たちが剣を薙ぐと、噴水広場を覆っていた光の柱が掻き消えた。
「まだ終わっていないよ、アスタくん。油断はしないように」
「えっ……?」
驚くとともに、アスタはロンフォードが指差した先に視線を走らせる。
それは────アスタが手にするヘイトブレイカーだ。
……両手剣ほどの大きさまで小さくなっているが、それでもまだ、黒く禍々しい刃が残っている……!?
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