【23】狙い撃つ!
「────スターライトアタァァァック!!」
サーベルが輝きを放つと同時、シャーリス巡査の身体ごと一筋の閃光となる!
突進系の攻撃スキルで、ブラックマントを貫くつもりだ!!
「ルアァァァァッ!!」
樹の枝に逆さまにぶら下がっていたブラックマントが、その巨体を軽やかにくねらせて宙に舞い立つ!
あっさりと、シャーリス巡査を交わし去ったのだ!
その顔には、わかっていたとでも言わんばかりの余裕じみた笑みさえ浮かんでいる!
不発に終わったシャーリス巡査の突進攻撃。
だがシャーリス巡査もただでは終わらない!
水中でターンするが如く早業で素早くクルリと宙返りをすると、ブラックマントの止まっていた太い枝にグンと両足を踏ん張った!
すでにサーベルの切っ先は、ブラックマントに向いている!
ほんの一瞬で、凄い身のこなしだ!
「────スターライトアタック、フルバレットブーストォッ!!!」
ハナから最初のスターライトアタックは、捨て攻撃だったのだ。
枝の反動を利用して、返す刀の如く猛然とブラックマントに迫るシャーリス巡査!
しかも今度は、スキル残り回数全弾を一気に放出する、フルバレットブーストだ!!
光を纏い、極太の流星がブラックマントに襲いかかる!
バッシュファァァァァァッッ!!
虚を突かれたブラックマントを流星が飲み込むか……に思えた!!
「クルルル、フュイィィィ!!」
高らかな雄叫びとともに素早く翼を畳んで、クルクルクルッと回転しながらこれも交わしたブラックマント!
後ろにも目がついているのかと思うほどの、反応速度だ!
「避けられた!?」
「ルヒャアアアァァァァァァ~~~!」
交わしざまにバッと大きく翼を開くブラックマント!
コウモリの翼の中から解き放たれた、無数の黒い毛……!
それは一瞬にして黒い矢と化し、降下していくシャーリス巡査目掛けて飛んで行く!
全身全霊の攻撃スキルを繰り出した直後だ、避けようがない!!
「シャーリスさん!!」
ザザザ、ザシュッ!!!
「あぐっ!!」
無数の矢が、シャーリス巡査に背中に突き刺さる!
宙で大きくバランスを崩したシャーリス巡査は、受け身すらままならず、きりもみ状態となって死体の山へと突っ込んだ!
ズゴドォォンッ!
さらに────!!!
「クルルルァァオオオォォォォォォッッ!!」
どデカい鉤爪を突き出して、シャーリス巡査めがけてブラックマントが急降下!!!
ズバホォォォォンッ!!!
「くっ……!」
飛び散る死体、舞い上がる土埃!
アスタの眼前に舞い降りた巨大な黒い影。
「ルアアアアァァァ~~フ~ルルルル~~~~~」
徐々に晴れていく土埃の向こうから、勝ち誇った歌声を上げるブラックマントの姿が……。
そして、その足元には────!?
「ぅグっ!!……ああ゛あ゛っ……!!」
大きな鉤爪に抑えこまれたシャーリス巡査!
ゴツい爪はしっかりと大地を掴み、シャーリス巡査の首根から両腕を締め上げている!
なんてことだ……さすがは狂化モンスター、一筋縄ではいかない相手だ……。
……いや、それよりも!
このままではシャーリス巡査が……!!!
ここはもう、身を呈してでもシャーリス巡査を助けねばっ!
シャーリス巡査を解放するには、ヘイトルアーでブラックマントの意識を惹きつけるしか無い!
全身にアドレナリンが吹き出して、手にしていたショートソードを振り上げる!
「────ヘイトルアーーーッ!!!」
キラーンとターコイズブルーに輝くアスタの瞳。
瞬間、ブラックマントの深淵のような瞳が真っ赤な光を放ち、キッとばかりにアスタを睨めつける!
よしっ、かかった!!
あとはここから逃げ出せば、少なくともシャーリス巡査は助かるはずだ……!
と、アスタがクルリと背を向けようとしたその時!
ザザザっと音がしたかと思うと、周囲の木々の間や茂みの中から、無数の人影が姿を現した!!
それは、木の人形……
皆一様に、黒い靄を全身から立ち昇らせ、のっぺらぼうの顔に赤い目がランランと輝いてる!
「えええっ!? ちょ、ちょっと!?」
周囲の茂みに潜んでいたその傀儡たちまで、ヘイトルアーで巻き込んでしまった!?
ヘイトルアーは範囲スキル。
細かな調整はなかなか難しい。
相手が人間や動物ならまだしも、モンスターや魔物となれば、周辺で潜んでいるものですらこうして巻き込んでしまうことしばしばなのだ。
そして、傀儡たちの中には……あの紺ローブの大男に、ばあやの姿まで!
巨木の下の、ハンナと思しき少女の傀儡も同じく、アスタのヘイトルアーに憎悪を滾らせている。
できれば傀儡たちとは……ハンナと思しき傀儡の少女とは交戦したくないが……!
「クルルルル、フオオオオオッ!!!」
その時、瞳を真っ赤に光らせ全身から黒い靄が昇り立たせたブラックマントが、バサリと大きく羽ばたいた!
それが合図となって、傀儡たちがアスタ目掛けて石つぶてを投げつけてくる!
さっきの石つぶても、傀儡たちの仕業だったか!
チラッと視線を走らせると、シャーリス巡査は……解放されている!
「う、うわあああああああああっ!!!」
ピンチに混乱する心を振り払い、アスタはすぐさま身を翻して駆け出した。
低い茂みを掻き分け、がむしゃらに村の広場を目指して猛ダッシュだ!
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