【14】ハンナの部屋
「ここが、ハンナのお部屋なの!」
結局、大した抵抗もしないまま、ハンナの部屋まで引っ張りこまれてしまった。
12畳ほどはあるだろうか?
窓辺に天蓋付きの大きなダブルベッドが置かれ、フカフカの布団が敷かれている。
内装は淡い緑を基調として、あちらこちらにピンクの花の彫刻が施された女の子らしい雰囲気だ。
洋服ダンスに鏡台、白いマットの上には長ソファとローテーブル。
暖炉にはチロチロとした火が灯り、その脇では、ばあやがロッキングチェアに腰掛けて裁縫をしている。
「こっちこっち~!」
入り口からすぐ左手の半開きのドアに、アスタをグイグイと引き込んでいく。
と……。
「ハンナちゃ~ん? ちゃんと身体を拭かないとダメよ?」
……シャーリス巡査の声だ。
ハッとした瞬間、パッとシャワーカーテンが開け放たれて、白い裸体が姿を現した。
「ダメじゃなーい、あちこちビショビショで……」
そのたわわな胸と引き締まった裸体を惜しげも無く見せつけるかのように、髪の毛を拭き拭きしていたシャーリス巡査が、一瞬にして凍りつく。
大きくて張りのある乳房がたゆんと揺れて、淡く色づく乳首がフルリと揺れる。
細く引き締まったくびれから、安産型に広がる腰つき。
そして下半身の大事な部分は、その……日頃からちゃんと手入れが行き届いているらしく、思いの外、薄く綺麗にまとまっている。
幅の細い肩だが、二の腕には力強そうな筋肉がついている。
脇の下はつるつるだ。
「あはは、シャーリスってばビックリしすぎなの~」
いや、そりゃそうだろう。
まさかアスタを連れ込んでくるなんて、思いもしなかったはずだ。
アスタもアスタで、シャーリス巡査が一緒に入っているだろうことに気づくべきだった、なんて後悔の念が頭の中を駆け巡っている。
「え~い!」
ドンッ!!
「うわわっ!!!」
顔を真っ赤に染めてシャーリス巡査の裸体に目を奪われていたアスタを、後ろから思いっきりハンナが突き飛ばしたのだ!
不意を突かれたアスタは大きくバランスを崩し、両腕で宙を掻くしかない!
そのままシャーリス巡査の胸目掛けて、顔から突っ込んでいった!
「(やばい、ぶつかる……!!)」
もはや衝突は不可避!
いやこのままだと、シャーリス巡査を突き飛ばしてしまう!
なんとかしてシャーリス巡査を守ろうと、アスタは咄嗟にその白い身体を抱き締めた────!
ドンッ、むにゅにゅ! ズダァンッ!!!
「きゃああっ」
「んむっ……!!!」
したたかに床に叩きつけられて、左肩に激痛が走る!
痛みに身を固くして、思わず息を飲んだ、が────!?
うむにゅ、ぷぽっ。
「(んんんんんんんんっ!!!?)」
「はぁ、ンッ……!」
口いっぱいに、柔らかいモノを吸い上げた!?
だが、その柔らかなモノに視界が遮られ、何も見えない。
顔中を覆い尽くす暖かな感触に、腕の中にあるしなやかな肢体と手のひらに伝わるスベスベの肌。
鼻腔の奥にフロ~ラルな石鹸のいい香りが漂ってくると同時、ムンムンとした色香がアスタの心をやんわりと包み込み、身体の奥底からカッと熱いものが込み上げてくる。
そして何より……口一杯に満たされた柔らかな感触と、舌に押し付けられたツンとした突起の感触!!!
「(こ、このフニュフニュして温かくて……しかも、ツンとした感触は……!!?)」
思わず、それが何かを確かめるように、レロレロと舌を大きく動かしてしまう。
アスタの舌の動きに抗って、シャーリス巡査の張りのいい肌の上で、突起がぷるっと小さく揺れた。
「ぁ、んあ、あ……!!」
「(や、やばい、これって絶対────!!!!)」
シャーリス巡査の乳房に……いや、乳首に吸い付いている!?
アスタの腕の中でシャーリス巡査がモゾリと身体をくねらせる。
思わず抱きしめる腕に力がこもり、フンッと荒い鼻息を吹き出すと、シャーリス巡査がビククッと小さく身体を震わせた。
「ぁぁんっ!!」
背中をしならせて、グイとアスタの肩を手で押し返す。
その瞬間、ちゅぱぷっと音を立てて、吸い上げるようにして唇を放すアスタ。
綺麗な桜色の乳首の先からアスタの唇へと、唾液が糸をひく。
そして目の前には、頬を真っ赤に染めて目を潤ませるシャーリス巡査の顔が!
「お……おおおおおおおお!?」
それに、今しがたむしゃぶりついていたその乳輪の回りが、ほのかに充血している。
待てっ、これはトラブルだ!!
決して決して決して、シャーリス巡査のおっぱいに吸い付こうとして襲いかかったわけじゃない!!
「い、いやあああああああああああああああああ!!!!!」
大きな悲鳴とともに、シャーリス巡査がサッと右足を振り上げて、アスタ目掛けて突き蹴りを繰り出した!
ドゴォッ!!
「ぐゴべふっ!!!」
シャーリス巡査のかかとが、アスタの下顎を見事に捉えていた!
激痛に目の玉まで飛び出しそうになるアスタ。
思わず、大きく身体を反り返らせて悶絶するしかない!
突き蹴りを放ちざまに、疾風の如き速さで立ち上がるシャーリス巡査!
なんという流れるような体術!
そして、サッとばかりにシャワーカーテンをその身に巻きつけると、思いっきり息を吸い込んだ。
「ぅぅぅぅぅっっ!……バカああああああああああっ! 変態ドスケベ破廉恥セクハラバカバカバカあああああああっ!」
森中に響き渡るかのような、あらん限りの大声だ!
「す、すみまっせーーーーーん!!!」
バタバタと手足を掻いて、キャインキャインとばかりに戸口を飛び出すアスタ。
「な、ななななな、なんで! アスタくんがいるのよぉっ!!!」
「アスタお兄ちゃんも一緒に、お風呂に入るの!」
「ダメ! ぜええええええええったいにダメぇーーーーーーーっ!!!!」
シャーリス巡査の甲高い怒声に背中を押されるようにして、そのまま廊下まで飛び出した。
壁にもたれかかって一息つくアスタを、廊下掃除をしていた木の人形がクイッと見やる。
蹴り上げられた顎のズキズキと、高鳴る胸のドキドキが収まらない。
いやあ、なんてトラブルだ……。
トラブルだらけのアスタだが、こんなトラブルはめったに……いや、ちょくちょくある、かも……。
「だってシャーリスってば、ものすごぉ~~~く長いんだも~ん。ずーっとずーっとお風呂で飽きちゃった。だから、ね?」
「ダメなものはダメ!! もう、ハンナちゃんってば! ……あぁ~~~ん、もうお嫁にいけなぁ~~い……アスタくんの、ばかぁ……」
きっと、ヘナヘナと泣き崩れているのだろう。
らしくない情けない声に、ちょっと可愛いさも感じてしまう。
それにしても、ハンナ……。
男と女の恥じらいってことが、まだわからない様子だ……。
ただ、ハンナが生身の人間だったことに、なぜだか妙にホッとしていたりもする。
「……ヤダ、湯冷めしちゃう……もう一度、お風呂に入り直しだわ……」
「じゃあ、アスタお兄ちゃん呼んでくるね」
「ダメッ、絶対にダメッ!」
「え~~、ケチぃ~~~……」
「いいからこっち来なさいってば! 入り直しなんだから!」
プンスカとばかりに怒っているシャーリス巡査。
ザバリザバリ、と2人で湯おけに浸かる音が聞こえてくる。
「シャーリスが長いからいけないんだよぉ?」
「お風呂は美容と健康にいいんだからね。文句を言わずに肩までつかりなさい」
「そしたら、シャーリスみたいに大きなおっぱいになるの?」
「……それはどうかしら」
「ハンナもオトナになったら大きなおっぱいになりたいの~」
「悪い子は、きっとダメよ」
「ええっ、そうなのぉ?」
そんな微笑ましい会話も聞こえてくる。
どうやらシャーリス巡査も、少しずつ気を取り直している様子だ。
アスタはなおもヒリヒリする顎をさすりながら、そっとその場を後にした……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます