烏天狗の庭 ④
「さて、本題に入るが・・・」
そう言って、弓木はその場に座り込んだ。
まぁ、あのままずっと立ち話って言うのもナンだな?と私も思っていたので座ってくれるのは非常にありがたかった。
と言うか、本音はもう眠くて仕方が無いので寝そべって聞きたいところだが、それはちょっと失礼かな?と思っていたのだが。
「そんなに眠たかったら寝ていいぞ。」
というツッコミもあったので、眠くなったら寝ると言って置いた。
テレパシー的な技は本当は私も出来る筈らしいのだが、今の所は一方的に心を読まれたり頭に話しかけられたりしているので、何かコツがいるのかもしれない。
烏天狗体質に慣れれば簡単に出来る様になるだろう?と弓木は言っているけど。
で、その本題と言うのが、
「鼠色の羽根の子供は突然変異で生まれた子供と言われて育ってきたが、実際には違う。実際はある一定年齢になると白羽根の家庭の中でも烏天狗信仰をしている家に預けられると言うのが正解だ。」
と、衝撃の真実を聞いた。
あの、お母さんが言っていた~私は有森家の突然変異と言う言葉は噓だったのだ。
あの、暖かい家族と全く血が繋がっていないと言う事実に、私は絶望を感じずにはいられなかった。
あんなに、普通に普通の子以上に普通に育ててくれた家族が、全く知らない他人だったなんて信じられなかった。
「また、烏天狗の子孫の子は、烏天狗の庭で出現すると決まっている。」
烏天狗の庭?
あの、宵町森の近くにあると言われている場所に?
「何故、烏天狗の庭に烏天狗の子が出現するのかは、まだ俺も実際には教えてもらっていない現状があるので、その先の詳細はまた色々情報を仕入れてからだ。」
と言って、弓木は羽根をバサバサさせていた。
私は、
「こんな、真実は知りたくなかった。」
と、しか言えなかった。
悲しかった。
私が、そこいらの原っぱの様な所で見つかった子供なだんて、知りたくなかった。
涙が、本殿手前の部屋の畳の上に容赦なく落ちた。
「悪い・・・・」
弓木が、頭を下げて謝っていた。
「俺は、出現してすぐ烏天狗の社の関係者に拾われたからさ、烏天狗とは~とか色々烏天狗でも普通に暮らす術とか色々習ってこれたんだよ。だから、普通の学校に通って普通に高校まで行った。そしたら、鼠色の羽根のままでも普通に生活しているお前を見つけてさ!もう、仲間が見つかった喜びでいっぱいだったさ!」
そう言って、とても嬉しそうな笑顔を見せた。
「烏天狗の子孫は本当の子孫じゃない。子孫と言うより過去に生きていた先祖が転生した姿だと言われている。その証拠に、成長するとともに前世の記憶がよみがえるとも言われているからなんだ。」
天井を仰ぎながら弓木は続ける。
「この、人の心を読む能力は高校生になってから発現した。そう、実はつい最近身に着け力なんだ。だから、ちょっと色んな人の心の中を覗き見しまくっていたのはまぁ、良くなかったな。」
そう言って、また頭を下げた。
「でも、俺は俺だから前世とかそういうの信じてないんだ。俺は俺の人生を生きて行くけど、でもこの世界は烏天狗に厳しい。だから羽根は真っ白にしてもらって更に飛べない様にもしておいたんだよ。」
言いながら、羽根の先をつまんで見せた。
「飛べ・・・るの?」
私の羽根は弓木よりも大きい印象なので、これでただの飾りだったら嫌だな~と思っていたのだ。
「飛べるさ!何ならこれから飛んでみる?」
と言って、何故か本殿へ続くふすまを開けた。
ふすまの先にあると思っていた部屋は無く、外に~空に続くように見える石段が数段あるだけだった。
「この神社の本殿は、空にあるんだぜ!」
弓木は空を指さしながら私の顔を覗き込んだ。
「空!?」
私の中の真実が、どんどん加速して行くのをもう、私は止める事が出来なかった。
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