烏天狗の庭 ②

「ちょっと!何見てんのよ!?」

私は、弓木の行動に目を白黒させながら、手をバタバタとさせた。


すると、今までのあの悪態だったり突っかかったような態度を一転させ、まるで私がどこかの偉い人の様な、そんな人物を見る様な雰囲気になっていた。


もしかして、本当にこのねずみ色の羽根が烏天狗の子孫とか生まれ変わりだって言うの?


もしそうだとしたら、何故普通の白い羽の家に生まれてきたのだろう?


色々と頭の中に仮定や想像がグルグルと巡り始めたけれども、どれも真実に到達できそうに無かった。


結局、そこに居る弓木から真実を聞き出すしか無いのだと、私のあんまり良くない頭もようやく導き出したようだった。


「でも、それが本当で私が烏天狗の子孫とか生まれ変わりとかナントカだったりしたとしても、結局全然飛べていないよ?烏天狗だけは空飛べるんだよね?」


この問いに弓木は、


「今のお前の羽根では駄目なんだ。その鼠色の羽根は封印された状態で、他の白い羽根と同じ様に飛べない仕様になっているんだ。」


と、答える。


そして、


「とうとう真実に片足突っ込んでしまったんだ、そのうちこのままでは居られなくなるだろう。」


と言って立ち上がり、部室から出ようとする。


私は、何もわからないままその場に残されるのは嫌だと思った。

何か、もっと決定的な真実を突き付けられたい?


そんな感情が動いたような気がした。


「弓木!・・・・あの・・・・」


「知りたいんだろう?」


弓木は、もう私の考えている事なんかお見通しの様だった。


私はコクリと頷くと、部室を後にする弓木に付いて行った。


と言うか、付いて行くしか無かった。




弓木に付いて行くと、学校の校門の前に黒塗りのリムジンの様な豪華な車が停まっていた。


まさか~?弓木がどこぞのお坊ちゃま・・・な~んて、あの夢の通りだったら有りうるな?と一瞬脳裏を過ったのは言うまでもない。


ああ、これは、弓木家の乗り物なのか?と思っていたら、当の弓木は車に率先して乗らずドアを開けて私に乗るように促してきた。


「さぁ、乗って。真実を知るために。」


その言葉に誘われるまま、私は車に乗り込んだ。


私が乗ると、その隣に弓木も乗り、ドアを閉めた。


車は、どんどん学校から離れて北烏山市内の一番高い山の方に向かっていく。


山には、烏天狗をまつる神社があって、色々な神事や祭りをする場になっている。


この世界では、子供が生まれたらこの世に生を受けたことを感謝するために、各地の一番大きな烏天狗を祭った神社で、子供が生まれたことを報告する報の義と言う神事をする事になっているのだ。


この世に生を受けたすべての人間が、必ずこの報の義をしなければならない~と何百年か前までは言われ続けていたけれども、最近はこのご時世~そんなにかしこまらなくてもイイんじゃないか?と言って、報の義をやらない人が増えているのは良くない~と、学校でもよく先生が言っていたのを思い出した。


なので、私は報の義以降はこの一番大きな神社に入っていないと言う事になるので、気分的にはほぼ初めて行く場所だと思って挑むことにした。


北烏山市内で一番高い山の標高は、頑張っても1000m位?だと思うのに、なんだかとても高い山の上に連れてこられたような、そんな空気が山には漂っていた。


多分、神社に祭っている烏天狗がそうさせているのかも知れない。


山頂近くで車は停まり、私たちはそこからは徒歩で神社を目指した。


神社の屋根には、たくさんのカラスがとまっているのが見えた。

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