第二章 烏天狗の一族

烏天狗の庭 ①

昨日あんな夢を見たからだろうか?

今朝はなんだか足腰がちょっと痛かった。


お前は!60歳以上の高齢者か?とか言われそうな気がしたけど、そんな事も言っていられない程に身体に来ていた。


もしかしたらフワフワ浮くのって本当はこんなに体力を使うモノなのかも知れない!?

ヤッタ!?そうだとしたら、かなり新発見?


とか、まぁ~こんな感じで前向きな思考が生きていれば大丈夫だろう?と思いながら、学校へ向かった。



途中、本を読みながら歩いている弓木海斗ゆみきかいとを見かけた。


私は自転車なのでスーーっと横を通り過ぎたんだけど、弓木は全く私に気付いていない様で、そして昨日の夜?に見た事について何も考えていない様だったので、私ももう考えるのを止めることにした。


弓木の方から何か言って来たら、その時に対応する方が色々面倒な事にならなくて良いかも知れない・・・・。

と、思った。




下駄箱で上履きに履き替えて~職員室の横を通って教室に向かう途中で、サエちゃんに呼び止められた。


「良かった!昨日は森には行かなかったんだね?」


と言って来たので、


「そりゃまぁ~、あんなに言われちゃ、行ってもしょーが無いと言うか~」


と、言ってヘラヘラ笑ってみた。


その横をススっと弓木が通り過ぎて行ったんだけど、特に何も反応していなかったのが意外だった。


いや、お前、昨日森に行っていただろう?

とか言われそうな気がしたからだ。


でも特に何も言われなかったので、私はホっと安心したんだ・・・・・。




で、結局。


一日特に何も抑揚も無い、変化も無い、しいて言えば~亡くなったと言う男子生徒の名前が「真弓利朗まゆみとしろう」と言う事位しか分からなかった。


真弓君が、何故殺された?死んだ??のかは分からないけれども、結局警察は事件の線からは引く事にしたんだ~と言う話を、放課後部室に行く道すがらで出会った桐生先生から聞いた。


「ヤツ(この間の警部)はかなり悔しがっていたけどねー!」


と、笑いながら話していたので、多分先日の警部とはかなり以前から友達関係にあるのだろうと思った。


警察も手を引く⇒警察に圧力をかけられるほどの凄い人物~或いは組織によって、この事件はもみ消されようとしている?とも考えられた。


けれども、私はともかく事件として捜査していた警察まであざむく必要がある組織なんて、一体どんな組織なんだろう?と、私は考えをやっと巡らせる気になった。


そんな有力な組織がこの北烏山市にあっただろうか~と。





部室に着くと、サエちゃんもユッキー先生もリンちゃん先輩も居なくて、ただ一人、弓木だけが窓際の座席で本を読んでいた。


「あれ?他の3人は?」


と、私が訊くと、


「あーー、何か、いつも飛行訓練させてもらってる山の持ち主が、しばらく山を貸せなくなるから~別の練習場所を探してくれって言われて、探しに行った様だ・・・・。」


とか、何か本を読みながら答えているので返答が変だったのがオカシかったが、今まで特に何も無く貸して貰えていた山での訓練がしばらく出来なくなるのかと思うと、ちょっとサミシい気持ちになった。


何か事情があるのかも知れないけれど、山を借りられない理由って何なんだろう?脳裏に色々思い浮かべたら、


「まぁ、俺的には多分、烏天狗からすてんぐの庭に近いからなんじゃないかな~と・・・」


と、ボソっと弓木が呟いた。



烏天狗からすてんぐの庭?


昨日の夢でも思ったんだが、どうも弓木は烏天狗信仰者からすてんぐしんこうしゃの様な気がしてならなかった。


でないと、こんなにポロっと烏天狗からすてんぐと言う単語を口にしないからだ。



実は、この羽根の生えた人類が暮らすこの世界では、烏天狗は悪の人種で、羽根を持つ人種の中では禁忌とさえ忌み嫌われていた時代が長かったのだ。


200年位前に、この海鹿島市近隣で起きた天変地異の際に、この土地に住む人たちを助けた事から~この辺りでは、烏天狗信仰が進んで行った様なのだが、全世界的な視野で見るとまだまだ烏天狗は悪の組織・・・・仮面天使ライダーで言う所のショッカーみたいな位置づけなのだ。



「弓木、それって何か関係があるの?」


この時は、そう聞くのが当たり前の様な、そんな気持ちだった。


弓木は、この私の問いに、


「烏天狗信仰発祥の地が、この海鹿島って事は知っているだろう?」


と聞くので、


「そりゃ、歴史で散々勉強させられてきたしね~」


と答えた。


すると、


「時々現れるんだ、お前みたいな灰色の羽根を持った、烏天狗の始祖の生まれ変わりとされる者が・・・・・・」


と言って、私の羽根を掴んだ。


「お前は、選ばれし者なんだ」


そう言いながら、弓木は私の羽根を愛おしそうに眺めた。

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