宵町森事件 ②

振り向くと、そこには桐生先生が居た。


あちゃーーー!

やっぱりバレてたか。


私が盗み聞きした事がバレた瞬間だったと思った。


「何やってんだ?有森、今日はあの空飛ぶ部活無いのか?」


と、問いかけて来るので、私はおや?と首をかしげたかもしれない。


でも、もしかしたら桐生先生は本当に、私が盗み聞きをしていた事に気付いていなかったとしたら・・・・。


しらばっくれるイイチャンスだった。


「実はさっきちょっとコケて、大事な羽根ブラシ(羽根の手入れをするブラシ)を落としてしまって~探していたんです。」


と、とっさに嘘を付いた。


こんな単純な嘘に引っかかってくれないだろうと思いながら付いた嘘だったが、桐生先生は何の疑いも持たない様なそぶりで、


「そうなのか!だったら俺も探そうか?」


と言って来たので、


「いや、もう見つかりまして、これから部室に向かう所です」


と、ポケットからブラシを取り出して見せた。


「ならイイんだ、今度からは落とさない様に気を付けるんだぞ?」


「はい、ご心配かけて申し訳ありません。」


私はペコリと一礼をすると、そのまま部室の方に向かってスタスタと歩みを速めた。


その歩みを速めた直後、背後から桐生先生が呟いた事がを、私は聞き逃さなかった。


「宵町森には行くなよ。」


盗み聞きしていた事はバレバレだった。





部室に着くと、サエちゃん・リンちゃん先輩、それとユッキー先生が居て、弓木海斗だけが居ない状態だった。


「あれ?弓木は?」


私が訊くと、


「何か今日、家の法事が合って早退したみたいなんだよね~。」


と、リンちゃん先輩が言う。


私とサエちゃんは同じクラスだからお互いの動向は手に取るようにわかるけど、弓木は同学年だけどクラスが結構離れている~私達が1年6組なのに対して、弓木は1年1組なので、お互いのクラスを行き来するのにはそれなりに時間を要するのであった。


でも、どうしてその1年1組の弓木海斗の動向を知っているのかと言うと、実は弓木海斗とリンちゃん先輩の家が近くらしくて、今朝登校途中で弓木に待ち伏せされて、それで早退の旨を伝えられた~様なのだった。


「ま、待ち伏せ・・・・アイツも結構行動派だったんだな~。」


私が驚きを隠せないでいると、


「だよね~僕も始めて弓木君にアプローチされた気分で満載だよ・・・☆彡」


いや、先輩!

そこ、星出す所違う!!


「キャー~~~☆彡」


「先輩、そこの腐女子が本気になるんで~変な言い方止めて下さい。」


「てへぺろ!」


本当、こんな部活を選んで大丈夫だったのか?と、脱力するしか無かった。




「っと、忘れる所だった!」


ふと、私は、さっきの職員室での謎の会話の事を思い出した。


ただ、話が話だけに、みんなに話すべきか思いとどまるべきかを悩んだ。


けど、私の貧相な脳みそに抱えておくにはちょっと厳しい~内容なので、やっぱり話そうと・・・・・・決意して、話す事を決めた。


「おいおい~有森~、これから地球が滅亡しそうなほど真剣な顔して、一体どうしたんだ?」


ユッキー先生がいつものおちゃらけで話すので、私は、


「先生、これから重大発表をするんで、真剣になって貰えますか?」


と、言った。


先生は、私の切羽詰った感を感じ取ったのか、


「分かった、話してみろ。」


と言いながら、その場に座った。


他のみんなも私も、部室の床に座って、これから私が話そうとする内容に期待を込めた。




「宵町森で、この学校の生徒が死んだそうです。」


私は、職員室の前で聞いた全てを話し始めた。

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