第3話 寡黙な監督、涙ながらに一言
「第5球ピッチャー投げた……ストライク、バッターアウト!!試合終了!!ついにハマスターズ20年ぶりに日本シリーズ制覇ー!!」
実況アナウンサーが顔を真っ赤にしながら叫ぶ。それもそのはずだ。なにせあのハマスターズが、数年前までずっと最下位だったハマスターズが日本一になったのだ。20年前こそガトリング打線と言われるほど打ちまくっていたが、徐々に打線は冷えていき水鉄砲打線と揶揄されるまでになっていた。
しかし、3年前に氷山(こおりやま)監督が率いるようになってからというものチームは劇的に変わった。常に冷静で寡黙な監督とは対照的に打線は熱く激しくなっていき、活気を取り戻したファンからは
「監督が静かなのは、打線から冷気をとっているからだ」
と言われ親しまれていた。
そしてついに、宿敵広島カーツを破り悲願の日本一に輝いたのだ。
「放送席ー、放送席。そしてファンの皆様。見事20年ぶりに優勝した氷山監督です。」
ファンからの惜しみない拍手を浴びながらベンチから出てきた監督がアナウンサーからインタビューを受ける。いつもは表情すらほとんどないような監督が顔をくしゃくしゃにして滝のような涙を流し、ファンに向けて大きく手を振りそれに応える。
「監督、様々な苦労を乗り越え本拠地のベイスタジアムでついに掴んだ日本一。今のお気持ちはどうですか」
「……ファンの皆様を始め、コーチや様々な方たちに支えられてここまで来れた……。今回の勝利。そして今回の優勝はハマスターズを応援してくれた全ての方のおかげだ……。ただ、最も大きな優勝の要因となったのは……」
監督の言葉に球場のすべての観客が耳を傾け、そして監督は言った。
「
バッターが、良く頑バッターー!!
」
初めての監督からの熱い一言は球場全体を大きく冷やし、翌日のスポーツ新聞の一面に乗ることになったのであった……。
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