第19話

 その男は、金髪の二枚目俳優のような優男である。大きなハンドガンを、構えていた。その銃の照準が、自分の背後に向けられていると気付いた瞬間、メイは腕を取られる。

 ガイ・ブラックソルであった。メイの腕をとったガイは、メイの頭に銃をつきつける。ブラックソルが叫ぶ。

「動くな、この女を殺すぞ」

 ビリーは、午睡から目ざめたばかりのように、気怠げな笑みを見せて言った。

「馬鹿か、おまえ。メイ・ローランがいないと、困るのはおまえだろ」

 ブラックソルは、凶暴な笑みを見せる。

「もう、ユグドラシルの操作は理解した。次は、一人でダイブできるよ」

 ビリーは甘える恋人に応えるような笑みを見せ、肩を竦める。

「とんでもない糞ったれだよ、てめぇは」

「おまえに言われたくないね、キャプテン・ドラゴン。こんな所でDDCを使用しやがって、メイを殺すところだったぞ」

 ビリーは、平然といった。

「やってみなきゃ、判らんだろ」

「言ってろ、馬鹿。何にしても、メイを死なせたくないのなら、言うとおりにしろ。まず、銃を足下に落とせ」

 ビリーは、言われた通りに、銃を落とす。ブラックソルは、次の指示を出した。

「よし、そいつをこっちに、蹴れ」

 ビリーは嘲るような笑みを浮かべ、銃を蹴る。足下にきた銃を見て、ブラックソルは、顔色を変えた。

「てめぇ、これは」

 その瞬間、銃、いや、銃のダミーが炸裂し、激しい光と轟音がメイとブラックソルを襲う。それと共に、魔法のようにビリーの手元に出現した銃が、火を吹いた。排出された空のメタルカートリッジがプラットホームに落ち、乾いた音を立てる。

 ブラックソルが跳ね飛ばされたように、後ろへ倒れた。

「メイ、こっちだ!」

 ビリーの叫びに促され、メイはビリーの元へ駆け寄る。

「何て器用なの」

 メイの感嘆した言葉に、ビリーは夢見るように微笑む。

「特技なんだ」

 その時、哄笑が響いた。ブラックソルが、笑いながら半身を起こす。

「へたくそ、何で頭をぶちぬかねぇ」

「無理するな、コンバットスーツは貫通しなかったが、15ミリ口径のリボルビングサブマシンガンの弾を受けたんだ。肋骨は折れてるよ」

 ブラックソルは青ざめた顔で、ふらりと立ち上がる。腰から宇宙刀を抜いた。

 肉眼では光の筋としかみえないワイアーソウが、出現する。

 剣のグリップについたスイッチを操作し、青白い光を放つ力場を出現させた。

 宇宙刀は、青く輝く光の剣となる。

「次は、頭を打ち抜け。でなきゃ、死ぬのはてめぇだ、キャプテン・ドラゴン」

 ビリーは答えるように、銃身をあげる。撃とうとしたその瞬間に、ブラックソルの体が、閃光につつまれた。

「ちっ」

 まともに光を見てしまったビリーは、視界を失う。油断である。ブラックソルは、自分の体に閃光弾を密着させて、炸裂させたようだ。

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