第18話

 ビリーのパワードスーツへ狙いをつけるため、慣性駆動システムに轟音をあげさせて追尾していた3機のミリタリーモジュールは、ふいに安定を失い揺らめきはじめる。

 しばらく、無軌道な飛行を行った後、コントロールを失いまっすぐ落下した。

 ビリー自身のパワードスーツも機能を停止していたが、ビリーは落下する直前に手動操作レバーを操りエアークッションを放出する。

 半球形のエアークッションに守られたパワードスーツは、プラットホームに叩きつけられながらもかろうじて衝撃に耐えた。

 外骨格マニュピレータは分解して四散したが、ビリーはなんとかプラットホームへ降り立つ。

 一方落下した3機のミリタリーモジュールは爆発し、プラットホームを火焔で蹂躙する。そして、大地を犯す炎の無効で漆黒の巨人が獣のように身をよじらせた。

 夜が凝縮した闇色の肌を持つ巨人は、ユグドラシルから逃れようとするかのように、身をふるわせている。

 漆黒の巨人は、狂気の咆吼を上げた。

 その叫びは、世界を黒い闇で塗りつぶそうとするかのようだ。

 闇が波動となり、ユグドラシルを揺さぶっているようにすら見える。

 銀色の大樹は、一瞬輝きを失い、やがて乱舞する光の渦に包み込まれた。


世界は、傷つき、一瞬色彩を失う。


■■■■■■・■■■■■■■■■■・■■■■■■・■■■■■■・■・・■・・■・・・・■・・・■・・・・・・・■・・・・・■・・・・・・・・・・・・・■・・・・・・・・■・・・・・・・・・・・・・・!!・・・!・・・!・!・・!・・・・・・

!・!!!!・!!!)

 メイを襲った衝撃は、物理的なまでに激しい思念であった。それは、怒りとも哀しみともつかぬものである。メイはヘッドセットをもぎ取ると、ブースから飛び起きた。とっくにユグドラシル及び、インターフェーサとしての銀色の巨人とのリンクは、外れている。

 メイは、眩暈を感じつつも、立ち上がった。霞む視界の中に、一人の男の姿を認める。次第に視界が、はっきりしてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る