第9日目:Ⅱ【驚きと弱点】
【2時間目】
元部長の巧先輩の家に行く。家は斉藤先生が知っていた。
新入部員の紀子さんは関わりが無いのでもちろん来ない。というか、最初の日以来部活に来たことが無い。
そういえば、巧先輩について少し気になることがある。
斉藤先生に、巧先輩の家を聞く際に理由を話したのだが、その時に斉藤先生が少し笑った気がしたのだ。
ホッとした時の笑みではなく、ニヤっとした笑みだった。
浩介先輩も、もちろんその場にいたが、その事には気付いていない様子だった。
もやもやとした想いのまま、巧先輩の家に着く。
その家は、蝉が鳴く場となっている西条公園の隣にあった。
ちなみに、猫多摩中は南条にあるからそこまで遠くなかった。
インターホンに手を伸ばし、人差し指の第二関節で押す。ボタンを押すときに人差し指の第二関節で押してしまうのは小さい頃からの癖だった。
ピンと鳴りポーンと指を跳ね返すように鳴る。
ガチャッという音はしなくて、スーという感じでドアが開く。
中から出てきたのは巧先輩だった。
「皆、紅茶でいい?」
僕らを笑顔で迎えた巧先輩は、何やら楽しそうだった。
「はい。それで…これ」
百円ショップで手に入れた、クマの柄の包み紙に包まれた、燃えるはずだった巧先輩の絵を手渡す。
先輩は、机の上で丁寧に包み紙を取りながら話し始めた。
「何も言わないで退部してごめんね。実は、顧問には退部のことは言ってあって、皆には言わないでって言ってあったんだ。私は今幸せだからって」
先輩は自分の絵を見て驚く。
「これ、燃えたんじゃ」
浩介先輩が答える。
「色々あって…。人数足りなくて、美術部も廃部になっちゃいましたし」
「え!私の妹が入らなかった?」
「少し遅かったです。部活にも来てませんし」ちか先輩が残念そうに言う。そしてそこで、僕らは衝撃の事実に驚く。
「え!紀子さんって部長の妹だったんですか!」
僕らはその後、紀子さんの弱点が、小さい頃の話をされることだという事を聞いたり、紀子さんの小さい頃の話を聞いたり、さらに先輩自身の話を聞いた。
七時になり、先輩がバイトだというまでずっと話していた。
僕らは先輩とまた会う事を約束し、それぞれの家に帰った。
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